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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
ありがちを叫びたい
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ありがちを叫びたい 24

「あの、先輩達お腹空いてますか?」

柄本は笑いを堪えながら俺達に問いかける。

空腹が奏でる音を聞いたのだ。

そりゃ笑いたくもなる気持ちもわかる。


言葉にするのも億劫な状態だ。

俺は首を縦に振りその意思を伝える。

すると、柄本は自分の手提げ袋を漁りタッパーを取り出す。


「形は悪いんですけど、良かったらどうですか?」

そう言ってタッパーを机の上に置く。

彼女が蓋を開けると、そこにはカステラが並んでいた。


「カステラじゃん!柄本が作ったのか?」

さっきまで顔も上げなかった豊田は一目散にカステラに手を伸ばす。


「はい!差し入れによく作るんです!」

爪楊枝を俺達に差し出す。

よく差し入れるだけあって用意がいい。

だが、それを貰うよりも早くカステラに群がる。

その一つ一つの動作には無駄がない。

一切の迷いを捨て、純粋に動けば人はこんなにも繊細に動けるのだ。


「美味い。純粋に美味い」

そこにはお世辞も、皮肉も存在しない。

心から出た言葉だ。

自分でも驚く程、シンプルだったと思う。


「美味い!甘さが身体に染みる」

豊田の言葉も大袈裟に感じない。

実際に染み渡っている様に感じる。

横井に至っては何も言わず黙々と食べている。


「本当ですか⁉︎良かったです!」

柄本は嬉しそうだ。

その後も、カステラに向かう手は止まる事なく、あっという間にタッパーは空になった。


「柄本ありがとな!美味しかったよ!」

食べ終わって落ち着いたのか、横井がやっと声を発する。


「今更かよ!さっきまで黙々と食べてた癖に」

俺のツッコミで笑いが起きる。

食べる事でみんなが元気になっていた。


「お気に召した様で光栄です!」

タッパーをしまう柄本の後ろ姿はホッとしている様に見える。

彼女が俺達に差し入れをしたのは初めてだ。

恐らくどんな反応が来るのか緊張していたのだろう。


こんな状態でも、俺達に気を使える後輩。

後輩の前にあまりにも人として出来過ぎだ。

そう思うと、余りにも気を使えない自分が恥ずかしくなった。

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