ありがちを叫びたい 22
数日後俺達は楽器屋RACKのスタジオにいる。
戦楽フェスの選考に向けて練習するためだ。
おじさんに相談に行った日、俺は横井と豊田に電話をかけた。
すると2人の反応は、
「そうか。なら頑張らないとな」
と、とても淡白なものだった。
俺の気苦労はなんだったのだろう。
正直文句の一つもいいたい。
ただ、よく考えたら自分で勝手に悩んでいたのだから、あいつらに愚痴を言うのは八つ当たりだろう。
とりあえず、悩みは一つなくなってホッとした。
あと、気になることがある。
何故か柄本の機嫌が良くない。
顔にこそ出さない様にしているが、明らかに荒れている。
ダンスが上手くいっていないのだろうか。
それとも、親と喧嘩したのか。
理由はわからないがそっとして置こう。
こう言う時変に気を使うとより機嫌が悪くなる。
それは妹の扱いから学んだ事だ。
「さて、2週間後には二次選考があるけど…どうよ?」
俺は自分の椅子に座り3人に問いかける。
「どうよじゃないから!俺たちに言うのが急過ぎるんだよ!」
これを言ったのは豊田だが、横井もそうだと言わんばかりに首を縦に振る。
ただその言葉からは怒りは感じない。
「いやー…本当に申し訳ない!」
2人ともそれ以上俺を、深く責めることはなかった。
音合わせをしているとその理由が分かった。
2人ともちゃんと準備をしている。
何があってもいい様に練習を怠らなかったのだろう。
そう言うことを、言葉にしないところが憎めない。
俺は緩みそうな口を必死に締める。
そして、驚くべきは柄本だ。
最後に彼女の演奏を聴いたのはレコーディングの時。
そこから格段に上手くなっている。
しかも、さっきまでの不機嫌さは嘘の様に表情は真剣だ。
ダンスを見た時もそうだったが、集中している時、彼女は顔が変わる。
その発見をした俺は元アイドルの凄さに少し触れた気がした。
何はともあれ、レコーディングした時よりもいい出来になりそうでよかった。
3人の志を確認した俺も、彼らに負けない様に腕を磨がなくてはと思う。
また一つ悩みが消えていった。




