ありがちを叫びたい 19
「で、お前は何を悩んでるんだ?」
おじさんは金管楽器の話が終わったのを感じたのだろう。
唐突に俺の核心を突く。
「さすがおじさん。お見通しだな」
こういうところがさすが大人だ。
お見事過ぎて理由を聞く気もなくなってしまう。
使い込んだテーブルに移動するとおじさんはコーヒーミルで豆を挽き始める。
話が長くなりそうな時、おじさんはコーヒーを淹れてくれる。
「横井と豊田にさ、フェスの事話そうか迷ってるんだよね」
豆を挽くその姿に呟く。
戦楽フェスの事はすでに伝えていたが、おじさんは不思議そうな顔をしていた。
「そんなもったいぶる必要あるか?せっかく選考通ったんだろ?喜ばしいことだろう。一次選考落ちしてお前ら去年あんなに落ち込んでたじゃないか」
おじさんの言う通り、柄本にも言ったように去年俺たちは一次選考落ちした。
それは憧れの場所は程遠いのだと突きつけられた気がしてしばらく音楽に打ち込めなかった。
それは、俺だけじゃない。
横井も豊田も同じだった。
各々が立ち直るにはそれなりの時間がかかった。
今でこそ立ち直り新曲も作ろうと思えているが、あの時は楽器すら持ちたくなかった程だ。
だから、今回も戦楽フェスの開催が決定された時は悩んだ。
なんとなくその話をするのは避けていたし、他の2人もその話題を出す事はなかった。
そんな状態で時間が過ぎ、気づけば申し込み期限が終わっていた。
「正直一次審査通過の通知が来た時は嬉しかったよ。なんか認められたみたいな気がしてさ。だけど、その後事務所オーディションに落ちて少し自信がないんだよな。」
申し込み期限が過ぎて、後悔している自分がいた事に気付いている。
柄本から渡された通知を見た時、自分を縛りつけていた何かが割れる音がした。
急に身体が軽くなり無性に走り出したくなって、五線譜にその思いをぶつけた。
家にいても学校にいても過ぎる時間を勿体無く感じる程の思い。
だけどその思いは、その3日後オーディションの不合格通知を見て鍵をかけられてしまう。
これから進む道がイバラだらけのように
見えてしまった。




