ありがちを叫びたい 18
何から話せばいいだろうか。
一次選考を通過した戦楽フェスU-18の事だろうか、はたまた事務所オーディションに落ちた事だろうか。
今岡は迷っていた。
横井と豊田、毎日学校で顔を合わせるがこの事をまだ話していない。
話したい気持ちはあるが、なぜか途中で自制をかけてしまう。
そんな悩みを解決する為、楽器屋RACKの扉を開ける。
“金木犀の匂い?”
扉を開けるとほのかにだが、金木犀の匂いがする。
匂いの先を辿ると制服姿の女の子がトランペットの飾ってあるショーケースを見ていた。
「トランペットのオーバーホールだったな」
おじさんがトランペットのケースを奥から出してくる。
珍しくギター以外のお客さんらしい。
一応楽器屋と名乗っているのだから当たり前なのだが、ギター以外の品揃えはあまりよくない。
自分自身、おじさんの店には昔からよく通っていたが、金管楽器のお客さんは初めて見る。
だから、正直驚いている。
制服の女の子はトランペットを受け取ると、おじさんにお礼をいい俺の横を通り過ぎる。
金木犀の香りが彼女の後ろをついて行く。
ポニーテールに結ばれた髪。
その尻尾が左右に揺れる後ろ姿。
品の良さそうな女の子は扉が閉まり見えなくなった。
「おじさん金管楽器のオーバーホールなんて出来るんだね」
先ほども言ったがこの楽器屋で、店長であるおじさんがギター以外の楽器を触っているところを見た事がない。
意外と言うか、少し尊敬する。
「出来るわけないだろ。俺はギター専門だ」
おじさんは腕を組みながら言う。
「え?じゃあ、あのトランペットどうしたんだよ?」
前言撤回する準備を整える。
「俺の知り合いにな、金管楽器専門の奴がいてな。そいつに頼んでるんだ」
さっきまでの尊敬の気持ちを返して欲しい。
だが、ちゃんとした整備をしているのなら結果的には問題ないのかもしれない。
まだ、聞きたい事はあるがこれ以上掘り下げるのも野暮だ。
俺は頭の中の疑問を消す様に髪の毛をぐしゃぐしゃにした。




