ありがちを叫びたい 17
なぜだろう。
一度も立ったことのないステージの筈なのに。
懐かしい感じがする。
私はそのステージに魅入られていた。
写真に写るその景色に。
「私このステージに立ちたいです」
自然と口から言葉が出ていた。
レベルがどうだとか、無謀だとか、そんなものはどうでもいい。
私はこの写真の景色に会いたいのだ。
「俺もだ。1次選考を通過出来たんだ。せっかくなら挑戦したいよな」
今岡先輩と同じ熱量を感じる。
目の前に現れた目標に私達は進む原動力を得た。
だけど、ここで疑問が浮かんでくる。
誰がこのイベントに私達のバンドの曲を応募したのかという事だ。
先ほども言ったが私は送っていない。
そもそも、このイベント自体を知らなかったくらいだ。
ならば今岡先輩かと思ったが、この反応を見る限り違うだろう。
となると、誰なのか。
しばらく考えてみたが、今のところその疑問は解けそうにない。
だが、せっかくチャンスをくれたのだ。
送ってくれた人の期待に応えなくては。
今岡先輩から、傘と音楽雑誌を借り家を出る。
服は濡れたままなので、知美ちゃんの体操ジャージを着て歩く帰り道。
彼女の匂いを纏っているとなんだか、自分も中学生に戻った気分だ。
信号待ちをしていると、隣に複数の人達が並ぶ。
この人達から私は中学生だと思われているのだろうか。
体操服ジャージを着ているのだからおそらく間違いないだろう。
そう考えると、服装でその人が何者なのかを無意識に決めてしまっているんだなと思う。
“いや、違うな”
何も言わなくても、服装が自分が何者なのかを周りに教えてくれているのだ。
そう考えると、私がいつも着ている制服も私が高校生であるという証明なのかもしれない。
ならば、今日は中学生の気持ちのままいよう。
私は元気よくスキップしながら、横断歩道の白い部分だけを踏んで渡る。
建前さえ取ってしまえば、いつまでたっても子供のまま。
やっぱりスニーカーが好きだ。
手に持つ雑誌の熱量に動かされるように、地面を蹴るのだった。




