ありがちを叫びたい 16
今岡先輩が自分の部屋から戻ってくる。
戻ってきたその手には、音楽雑誌とノートパソコン。
雑誌を私の前に置き、正面に座り直す。
雑誌の表紙には「戦楽フェスU-18」と大々的に特集されている。
しかも、優勝バンドが表紙を飾る。
この音楽雑誌、数ある雑誌の中でもかなり歴史がある有名なものだ。
その表紙を飾れるのは、今勢いのある音楽グループだけ。
そんな雑誌が特集を組む程のイベント。
私は吸い込まれるように雑誌のページをめくる。
載せられている写真が私の感性を刺激する。
心臓の鼓動が早くなる。
完成されていないその姿が私を刺激する。
ページをめくる手が止まる。
ステージから見た観客席の写真。
満員の観客。
歓声が聞こえる。
呼吸が浅くなるのが分かる。
なぜだろう。
ただの写真でしかない筈なのに。
写真に見入る私に今岡先輩はパソコンで動画を見せる。
去年のフェスのダイジェスト動画。
その中で一際目を引いたのは、去年の優勝バンドの演奏。
聴けばわかる。
そのレベルはもはやプロレベル。
観客の熱気もここにいたどのバンドよりも熱い。
「戦楽フェスU-18」
規模も、レベルも物凄く高いフェス。
参加資格があるのは18歳以下。
音楽のジャンルは問われず、ロック、ジャズ、ヒップホップなど様々。
全国5箇所で予選を行い、決勝大会に行けるのは12組。
決勝大会を審査するのは、観客と審査員。
審査員はプロのミュージシャンや、音楽プロデューサーといった各ジャンルのプロフェッショナル達。
会場は5000人以上を収容できる野外ステージ。
「去年俺たちもエントリーしたけど、1次予選も通らなかった。お陰でしばらく自信無くしてたんだよな」
今岡先輩の言葉には熱がある。
このステージに立つの先輩も含め、高校生達の憧れなのだろう。
去年決勝大会に残ったグループは殆どが色々な大会で結果を残してきた実力のあるグループばかりらしい。
それ程レベルの高いフェスなのだ。
だけど、先輩の言葉が頭に入ってこない。
ずっと頭の中でステージから見た観客席の映像が流れ続けていた。




