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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
ありがちを叫びたい
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ありがちを叫びたい 15

「で、俺になんの用だ?」

正座した私の反対側に座る先輩。

リビングと言うより居間と言った方が良いだろうか。

座布団の感覚なんて久しぶりだ。


「とりあえず、これを見て欲しいんです」

今岡先輩に持って来た封筒を渡す。

これを一刻も早く見てもらいたくて走ってきた筈なのに結局結構な遠回りをしてしまった。


「これテレビ局って書いてないか?」

先輩は私と同じ様に差出人を見て驚く。

そして私の顔を見る。

明らかに困惑している様子だ。

私がゆっくり頷くと、意を決した様に中身を出す。


中に入っていた紙を読む今岡先輩の表情がみるみる変わっていくのが分かる。

戸惑い、混乱、高揚。

まるで中国の伝統芸能「変面」の様に紙を読んでは表情が変化する。

その気持ちはよく分かる。

その紙に書いてある内容は読み進めていく毎に心をかき乱す。


“一次選考通過のお知らせ”

私もこの一行目を見た時、驚きを隠せなかった。

選考に応募した記憶がないから。

読めば読むほど疑問は深まっていく。


一次選考はデモテープによる審査だったのだが、先ほども言った様にそんなものは送っていない。

そもそも、なんの選考なのかもわからない。

詐欺かもしれないと思ったが、バンド名も曲名も私達のもので間違いない。

しかも、某有名テレビ局の名を模した封筒。

ネットで調べたら、確かに選考が始まっていることは確かだった。


「戦楽フェスUー18に出るのか俺たち…」

紙を持つ手が震えている。

どうやら、先輩はこれがどんなイベントなのか知っているらしい。

私はネットで調べた限りの情報しか知らない。

予選を勝ち抜けば、東京の大きな会場で演奏できる事くらいだ。


「このフェスってどんなイベントなんですか?」

先輩が知っていて良かった。

ただ自分達の事を見てくれる機会があるという嬉しさで家を飛び出してしまった私。

それがどんなものなのか下調べせずに出てきてしまったから。


今岡先輩はおもむろに立ち上がると、何かを取りに自分の部屋に戻る。

1人残された私は先輩のお母さんが出してくれたお茶をすするのだった。

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