ありがちを叫びたい 14
「知美!あんまり柄本を困らせるなよ」
今岡先輩の声が扉越しに聞こえてくる。
一通り話が終わった頃に声をかけるのが、先輩の優しさだ。
きっと妹思いなのだろう。
「私で申し訳ないけど…」
私はそう言って手を差し伸べる。
知美ちゃんは万遍の笑みでその手を包み込んでくる。
「じゃあまたね!」
彼女の手を包み返す様にギュッと握り返し、最高の笑顔で部屋を後にした。
部屋を出ると今岡先輩が壁に真顔でもたれかかっている。
それに引き換え万遍の笑みを浮かべている私。
その温度差に急に恥ずかしさがこみ上げてくる。
「知美が悪かったな。あいつお前のいたグループのファンなんだ」
先輩はバツの悪そうな顔で私に謝る。
「いえいえ!私もファンの子に会えて嬉しかったです」
やっぱり先輩は妹思いのいいお兄さんだった。
その事は私の胸に刻んでおこうと思う。
さっきの恥ずかしさはどこかに消えていた。
私達はリビングに移動する。
リビングには今岡先輩のお母さんが夕食を作っている最中だった。
「あら?もしかして萌ちゃん?」
今岡先輩のお母さんは吹奏楽クラブに私がいた時から知っている。
よくお世話になった。
「お久しぶりです!萌です!」
私は頭を下げる。
「あら〜随分可愛くなっちゃって!やっぱりアイドルやって立派になったね!」
まるで親戚の家に遊びにきたみたいだ。
今岡先輩のお母さんはとにかく私を褒めちぎる。
私が小学生の頃からその習性は変わらない。
「いえいえ!お母さんもお変わりなく、相変わらず綺麗ですね」
変わらないといえばその容姿だ。
女優の様にキリッとした顔立ち、スラッとした立ち姿。
先輩のお母さんは口調こそおばさんだが、年齢を感じさせない程若々しい。
むしろ、年々若くなっていく様な気さえする。
これで40歳を越えているというのだから世の中って不公平だ。
「そんなこと言ってくれるのは萌ちゃんくらいよ。有り難く頂戴しておく」
お母さんは料理の手を止めお茶を出してくれる。
まだ半分も生きていない私は同じ様に歳をとった時の事を考えるが、こんな風に年齢を重ねる事はきっと出来ないだろ。
意地悪そうに笑うその顔を見ながら思った。




