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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
ありがちを叫びたい
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ありがちを叫びたい 12

地元の中学の体操服を着るなんて何年ぶりだろう。

中学1年生の約1年間だけお世話になった学校。

その体操服に袖を通す。


「サイズどうですか?」

今岡と小さく書かれた体操服のジャージ。

それはあの女の子に借りた物だ。


「ちょうどいいよ。ありがとう!」

びしょ濡れの私の部屋着はハンガーに掛けられ扇風機を当てられている。


「なら良かったです!」

私が着替え終わったのを確認し彼女は部屋に入ってくる。

今私がいるのは彼女の部屋。

女の子らしい可愛い小物で統一されている。


「まさか女の人が兄に会いにくるなんて思っていませんでした。さっきは失礼な言い方してすみません」

彼女は頭を下げる。


「いやいや!突然来た私が悪いんだから顔上げて!」

思えば彼女は一切悪くない。

突然ずぶ濡れの息も絶え絶えの女がインターホンを押したら誰だって警戒する。

私も同じ立場ならそうするだろ。


顔を上げた彼女の顔をじっと見つめる。

似ている。

さすが妹、目の辺りは今岡先輩にそっくりだ。


今岡知美(いまおかともみ)

今岡先輩の妹。

現在中学3年生で私も通っていた地元の公立中学校に通っている。

身長は私と同じ位で、髪はショート。

むしろウルフヘアーに近いかもしれない。

陸上部に所属し、短距離を専門にしている。

そのせいか肌はこんがり小麦色に焼けている。

陸上の成績は好調らしく全国大会に出場する程の実力がある。

部屋の一角に飾ってあるトロフィーは全て彼女の物だそうだ。


そんな彼女が顔を背ける。

少しジロジロと見過ぎだかも知れない。

とはいえ、彼女はその後も私の顔を横目で確認している。


「あの…すいません」

彼女は俯きがちに私の方を向く。


「もしかして、柄本萌さんって16区ナゴヤの萌さんですか?」

久しぶりにその言葉を聞いた気がする。

むしろ、久しぶり過ぎて驚いている。


「そ、そうだよ!知ってるの私の事?」

嬉しさで言葉より感情が先に出る。

感動で少し泣きそうだ。


彼女の顔がパァッと明るくなる。

こんな反応が嬉しい。

私の心が暖まっていくのを感じた。

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