ありがちを叫びたい 7
夜遅く帰った事を両親に叱られる事はなかった。
流石に少し注意はされた。
夜遅くとは言っても補導されないギリギリの時間。
うちの門限はどうやらその間の様だ。
だが、先輩達の気持ちをちゃんと確認できた喜びにいつまでも浸っている訳にはいかない。
ヘッドホンをつけ、学校から帰っている私。
メジャーデビューなんてまだ夢の話で、下積み時代に何をやればいいのかもイマイチわかっていない。
一人でラジオを聴きながら帰るこの時間が一気に現実に引き戻す。
事務所と契約する。
その事の意味を私は知っている。
実際、アイドルとして事務所と契約し活動していた訳だし。
卒業発表をした後も、複数の事務所から声をかけてもらった。
その事は嬉しかった。
アイドルを辞める私に可能性を見出してくれたという事だから。
だけど、その全てを断った。
契約するという事はその道のプロとなるという事だと私は思っている。
オファーくれた事務所の殆どは、タレントや女優、モデルとして私を使いたいと言っていた。
どれも、眩しく見えた。
その職業を目指している同世代の女の子は沢山いる。
華やかで夢のある職業だ。
もしそんなオファーを全部断ったという事が知れたら誰かに刺されてもおかしくないかも知れない。
もしくは、馬鹿じゃないかと罵られるかも知れない。
でも、私には眩し過ぎた。
その道で活躍する人達は誰もがプロフェッショナルだ。
生半可な経験でそこに立っているわけではない。
悩み、苦しみ、傷つきながら自分を磨いていく。
それでも、続けられるのはそれが好きだからだろうか。
はたまた、周りに負けたくないという闘争心なのかも知れない。
なんにしろ、生半可な覚悟でその世界に首を突っ込んではいけないと私は思った。
そもそも、アイドルの中でもトップになる事を諦めた自分。
身の丈は弁えている。
そんな気持ちではプロフェッショナルになれない事が分かっているからこそ全てを断ったのだ。




