ありがちを叫びたい 6
「使えるものは使っていこうぜ。その方が知ってもらえる機会増えるし、どんな形であれ曲を知ってもらえるってのはプラスだろ?」
豊田先輩は大人な姿勢を崩さない。
いつも軽い態度をとるから人より立派に見えるのかも知れない。
更に、発言が的を得ているから尚更ズルい。
「最初から賞賛なんて貰えるわけじゃないだろうから、初めのうちは柄本に頑張って貰うしかないな」
今岡先輩はおどけて見せる。
この反応を見る限り、先輩達は私がこの事について追求する事を予想していたのだろう。
“表舞台に立とうと思えば、当然直面する問題だもんな”
いつ話し合ったのかは分からないが、どうやら将来のビジョンを考えてはいる様だ。
それからも話し合いは続いたが、結局ルールとして認定されたものはなかった。
それぞれの譲れない部分との折り合いがつかなかったのだ。
「せっかくルールも決めた事だし、みんなで飯行こうぜ」
さっきまでの大人な先輩は何処へ行ってしまったのか。
話し合いが終わると、豊田先輩はいつもの姿に戻っていた。
「切り替え早いな。早過ぎて恐ろしいわ」
横井先輩の言葉にみんなで笑う。
無口に見えるが、横井先輩は冗談をいう程面白い人なのだ。
その後、先輩達と晩御飯を食べた。
ファミレスで色々な事を話した。
沢山笑ったし、沢山食べた。
店長とコーヒーを飲むのも楽しいけど、こうやって先輩達と過ごす時間も楽しい。
先輩達とご飯を食べに行くのは初めてではない。
けれど、こんなに楽しいと思ったのは初めてだ。
少しは心をを許せる様になった。
そういう事なのだろう。
帰り道、先輩達の後ろを歩く。
私が大人になり今日話し合った事を思い出すとする。
その時、多分だが青臭いと思うだろう。
だけど必要な事だった言える。
目の前の背中を見てそうなりたいと心の中で願う。
「柄本大食い過ぎだろ」
先輩達がそう呟いたのを聞かないふりをして。




