ありがちを叫びたい 5
楽曲は全員でダメ出し、編曲
やりたい事をやる
この2つは初めから決まっていた。
全員で曲のイメージを共有する。
バンドである以上しっかりと意思の疎通が出来なくてはならない。
その手段としての編曲やダメ出しという作業だ。
メンバーがどんな事を考えているのかを知り、良い意見があれば取り入れることが出来る。
まさに一石二鳥である。
やりたい事をやる
これもどうやら、バンドを結成した時から変わらないらしい。
やりたい事を見つけたらやってみる。
私のダンスであり、横井先輩のDJプレイがこれにあたるのかも知れない。
バンドという形態に囚われず、自分の興味を無駄にしないという意味があるみたいだ。
意外だったのは、
「柄本萌が昔アイドルであった事を隠さない」
というところである。
これを初めに言ったのは私だ。
正直、どんな意見が出るのか少し緊張した。
「元16区ナゴヤ」という肩書き。
この肩書きは一生ついてまわる。
そしてそれは、表舞台に出れば出る程露わになって行く。
このバンドは私が作った訳ではない。
ましてや曲を作る訳でもなく、ボーカルでもない。
これをアイドル的にいうなら、私はセンターではないだろう。
あくまで、メンバーの一人にしか過ぎない。
だから、その肩書きが一人歩きして曲を聴く前にイメージを決めつけられるのが嫌だ。
だけど、私はそれでもいいと思っている。
アイドルだった事に誇りを持っているから。
批判も覚悟の上だ。
だが、バンドをやっていると話は別だ。
先輩達がこの肩書きを邪魔に思っているなら、隠して行かなければいけない。
偽名を使うか、全く別の人間を演じるか、はたまた被り物をするか。
方法はそれなりにある。
「いいんじゃないか?隠してもいつかバレるし」
始めにそう言ったのは今岡先輩だ。
他の先輩もその言葉に頷いている。
被り物だったら何がいいだろう。
そんな事を考えていた自分を恥ずかしく思う。
相変わらず私と先輩達は気持ちの波長が噛み合わない。
だが、それは良い誤算だ。
私は目頭が少し熱くなっているのを感じた。




