ありがちを叫びたい 3
ラジオが流れるヘッドホン。
ついこの間までは自分達の音源をずっと聴いていたが、レコーディングも終わり気分を変えるには面白い話を聴くのが最適だと思う。
少し落ち着いて考えごとをしたい気分なのだ。
「先輩達はこのバンドでどうなりたいですか?」
CDとして「あきっぽい彼女」という曲が完成した時、先輩達の前で聞いた。
ラジオを聴きながらその時のことを思い出す。
それは鳩崎先輩にCDを渡す前の話。
先輩達は顔を見合わせ拍子抜けした表情をしていた。
結構な決意を持って先輩達にぶつかりにいった筈の私は肩透かしを食らってしまう。
先輩達とは気持ちの波長がいつも合わない。
まあ、今回に限っては私が一方的に聞いているのだから仕方ないが。
「あれ?柄本に言ってないのか?」
豊田先輩は今岡先輩の方へ投げ掛ける。
「あ、言ってなかったかも」
今岡先輩は何かを思い出したような表情を浮べる。
どうやら、話の内容的に私だけが知らない何かがあるらしい。
「この感じだと多分そうだよな」
豊田先輩は深々と溜息をつく。
「え?なんの話ですか?」
そのやりとりの間に割ってはいる私。
一度気になったらもう止まらない。
うやむやになる前にその話を聞かなくては納得出来ないのだ。
「実はな…」
今岡先輩はカバンからある一枚の紙を取り出す。
「若手アーティスト募集」
と書かれた今売り出し中の若手バンドが載ったポスターの様だ。
それを私に渡し今岡先輩は話を続ける。
「この音楽事務所に曲を送ろうと思ってる」
このポスターを作ったのは私も知っている大手音楽事務所。
どうやら新人アーティストの募集オーディションを行うようだ。
「つまり、メジャーデビューを目指す訳ですよね?」
このオーディションは合格すると事務所との契約をすることができる。
事務所に所属するという事は必然的にそういう事になる。
分かってはいるが、やはり言葉で、先輩達の気持ちを確認したい。
その思いが強かった。




