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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
ありがちを叫びたい
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ありがちを叫びたい 2

教室に戻りクラスの中に溶け込む。

1ヶ月も経てば私が昼休みにいなくなっていても誰も気にしていない。

イライラした気持ちも教室に戻る頃には落ち着いていた。


次の授業は因縁の古典。

いつもこの授業は私を睡魔に誘う。

今日こそはその睡魔に打ち勝ちたい。

固く決心して授業の準備をしていた。


カーテンが風に舞う。

窓の外は快晴。

もうすぐ梅雨に入るという事をニュースで聞いた。

だから、こんな気持ちのいい風とも別れが近づいている。

今のうちに満喫しておかなくては。


再びカーテンが風に舞う。

カーテンが舞うのと一緒に金木犀の香りが私の元に届く。

外を見ても金木犀の花は咲いていないし、そもそもまだ6月。

金木犀の花の咲く季節ではない。


“気のせいかな?”

少し気になったが、先生が教室に現れたので授業の事ですっかり忘れていた。


正確には授業の事すら記憶がない。

気づいたら古典の授業が終わっていた。

気持ちの良い風を満喫していたら、すっかり睡魔に足元を掬われた。

完全に自分の油断だ。

授業を受ける前にした覚悟は脆くも崩れ去ってしまった。


「春眠暁を覚えずとはいうけど、もうお昼過ぎたよ」

古典の先生に優しく諭される。

初老の先生は怒ることなく、教室から出て行く。

寝惚けた私は眼をこすりながらその姿を見送った。

このままでは古典の単位を落としてしまうのではないかとふと思う。

だが、そんな不安もカーテンの揺れと共に私はまた眠りの世界に消えて行くのだった。


その日の授業が終わり、私は欠伸を噛み殺しながら下駄箱に向かう。

すれ違う新品の制服の匂い達。

各々があらゆる方向へ消えて行く。


"あれ?まただ"

金木犀の匂いが香る。

周りを見回しても人が多いせいかどこから発された匂いなのか分からない。

金木犀の匂いは好きだ。

だから、なんとなくその香りを追ってしまう。


オレンジの花を思い浮かべながら、私は家への旅路へ向かうのだった。

ヘッドホンから流れるラジオを聴きながら。

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