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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
新品の2年生
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新品の2年生 51

ヘッドホンを外す。

とりあえず、仕事もひと段落し気分を変えようと思う。

流石に青臭い風に当たりすぎると帰り道湯冷めしてしまいそうだ。

自分の様なおじさんには少し体温が高過ぎる。


「オールナイタージャパン、そろそろお別れのお時間です…」

少しだけだが耳を傾けていたラジオ番組も終わろうとしている。


“もうそんな時間か”

そろそろ帰らなくては。

気付けばコーヒーも飲み干しカップはすでに下げられている。

代わりに水の入ったグラスが置かれている。

いつも通りの事なので特に驚きもない。


マフィンの最後の一口を頬張る。

レモンの風味がほんのり口の中に広がる。

自己主張し過ぎない酸味が今の気分の合っている気がする。


“忘れない内にCDをパソコンから出しておかなくては”

パソコンを操作しCDを取り出す。

「あきっぽい彼女」

マジックペンで雑に書かれたタイトル。

恐らく彼女の字ではないだろう。

便箋の文字とはあまりにも違い過ぎる。


次は散らかったテーブルを片付けなくてはならない。

資料が散漫したテーブルを見て少し気持ちが落ちてしまうが、グラスの水を飲み干して気合いを入れ直す。


片付けもひと段落ついたところで、忘れない内にパソコンでメールを打つ。

今抱えているプロジェクトのスタッフへだ。


「次回も何卒!」

パーソナリティの終わり文句と共に、メールを打ち終わる。

パソコンをカバンに戻しお会計をする。


「よかったらお一つどうですか?」

マスターが瓶に入ったキャンディーを差し出す。

中身は全てラムネ味。

たまに探してきてはこの様にお裾分けしてくれる。

ちゃんとした飴屋で買っているらしい。


店を出てキャンディーの包みを開ける。

透明な球体を指でつまみ夜空にかざす。

月の光に照らされ輝いたキャンディーは綺麗だと思う。


次回も何卒

呟いてみたが、誰に言おうとしてるのだろうか。

口の中に放り込んだラムネのキャンディーがなんだか懐かしい。

舌で転がるキャンディーは炭酸と共に弾けていた。

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