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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
新品の2年生
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新品の2年生 49

テーブルに置かれたCDの山。

毎週自分の元には、多くのCDや音源データが届く。

ジャンルも様々で、仕事の案件から個人的に聞いて欲しいと送られて来るものまで色々とある。

だから、常に音楽と接していると言っても過言ではない。


だが、今日はそれらに耳を傾ける前に目の前に置かれたこの封筒を開けなくてはならない。

封筒を開けると、便箋と音源データの入ったCD。

とりあえず、目の前にあるパソコンにCDを入れる。

そして、ヘッドホンを耳に当て外界の音を遮断する。

再生ボタンを押し楽器の音が聴こえて来るまでの間の数秒が好きだ。

どんな音が聴こえて来るかその数秒だけは観客に戻れるから。


ギターの音が聴こえて来る。

掴みは悪くない。

変に背伸びしていないし、聴き手に変な印象を与えていない。


“おっと、いけない”

つい癖で曲を評価しようとしてしまう。

この曲は仕事で聴いているわけではないに、職業病とは無意識に出てしまうから恐ろしい病だ。


とはいえ、この曲は聴きやすい。

歌詞と音が同じ質量を持っている。

どちらかに偏って、どちらかが耳に入ってこないという事がない。

そこまで難しい音を使っているわけではないのは、恐らくこのバランスをとる為だろう。

このバランスをとるのが難しい。

同じ作り手として素直に拍手を送りたい。


コーラスの声の主は恐らく彼女だろう。

相変わらず主役を引き立てるのがうまい。

環境が変わっても脇役に徹するのは変わらないらしい。


“身の丈を超えないか”

この曲を聴いていて感じる事だ。

私の所にCDを送って来るバンドは、よく見せたい、あわよくば評価されたいという欲がある。

“カッコつけ”たがるといえばいいのだろうか。

ある意味それは若者にとっての原動力であり、理想を追う姿としては正解であろう。

だが、それを前面に出し過ぎてしまえばナルシズムであり、聴き手を置いていってしまう。


このバンドにはその欲がない。

ただ、等身大の自分達の気持ちを伝えているだけ。

そんな思いが伝わっていた。

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