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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
新品の2年生
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新品の2年生 46

パーカーを包み込むコーヒーの香り。

掃除を終えた私は店長とコーヒーを飲んでいる。


「ちょっと苦味を足してみたがどうだ?」

店長の新しいオリジナルブレンド。

疲労感をコーヒーの苦味が和らげてくれている。

これはこれで美味しい。


「ちょっと苦いですけど、結構疲れてたのでちょうどいいかもしれません」

こんな時は素直な気持ちがでる。

昨日の夜からコーヒーを飲む事を楽しみにしていた。

このコーヒーがそうさせるのか、はたまた自分の気持ちが軽くなったのか。

どっちにしろ、少し身体が軽くなったのは確かだ。


「そうか?その割にはスッキリとした顔してるぞ」

店長に言われ窓ガラスに映る自分の姿を見るがいつもと変わらない様に見える。

自分では分からない部分の変化なのだろうか?

掃除をしたから気分が清らかなのかもしれない。


「そういえば、店長に頼みたいことがあったんです!」

私はコーヒーカップを置き、立ち上がる。


「頼み?なんだ?」

自分のコーヒーカップにもコーヒーを注ぎながら店長は私を目で追う。


「弦を交換しようと思うんです」

私ベースを店長の前に差し出す。


「少し早いかもしれません。でも、ちょうどいい区切りなので」

ベースの弦の張り替え時期に正解はない。

人それぞれと言ってしまえばその通りで、個人の感覚や好みにもよる。

切れるまで張り替えない人もいるくらいだ。


「確かにまだ1ヶ月位しか使ってないもんな。まあ、嬢ちゃんが言うなら変えるけどな」

店長そういうのも無理はない。

前に店長に弦を張ってもらってから1ヶ月しか経っていない。

ベースのキャリアの少ない私にとって、一体いつがベストなタイミングなのか分かっていないのが正直な所だ。

本来なら、色々なパターンを試しながら自分の好みの音を維持できる期間を探すのが普通だろう。


私は区切りと言った。

今日弾いたこの曲と同時に張り替えた弦。

だから、レコーディングが終わったタイミングで変えようと思った。

コーヒーカップに注がれた新しいブレンドのコーヒーの様に、新しい気持ちで次のスタートを切りたかったから。

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