表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
卒業のあと
10/417

卒業のあと 9

"まずい!遅くなっちゃった”

結局レッスン場に寄り自主練をしていたら遅くなってしまった。

いつもの時間の列車に乗る為、急いで駅を目指す。

名古屋は人通りが多い為、人の間を縫って歩がなくてはならない。

だが、こんなに人がいても誰1人記憶に残らない。

誰もすれ違う人を気にする人はいないし、私もそれに慣れてしまっている。

それが当たり前のように。


そんな事に意識を向けることはなく、ヘッドホンから流れる音楽に耳を傾け、通学路にしか過ぎない道を歩いていると気づけば駅に着いていた。

ラストスパート。

定期をかざし改札を抜け、一気に階段を登る。

ローファーが擦れる音と揺れる長い髪。

耳につけたヘッドホンは階段と同じリズムで上下に動く。

ダンパーが鍵盤に合わせ弦を叩く様に身体が跳ねる。


なんとか電車の発車時刻に間に合わせ車両に滑り込む。

車内は比較的空いていたが、座席には座られなかった。

仕方なく電車の扉の近くに立つ。

なんとなく、窓の外を見ているが毎日同じ様な景色だ。


なんでこんな事を考えているんだろう。

それはヘッドホンから流れる音楽のせいかもしれない。

考えても答えはみつからなさそうなので、そういう事にしておく事にした。


窓ガラスに映る自分の顔を見つめる。

まだまだ幼い自分の顔。

周りには会社帰りのサラリーマン、私服の大学生、そして制服を着た高校生…


"あれ?”

見覚えある顔を見つける。

いや、むしろさっき見た様な気がする。


「今岡先輩⁉︎」

夕方にCDショップであったばかりの先輩に声をかける。

先輩も驚いている様だ。


「なんでいるんだよ!」

こっちが聞きたいくらいだ。

だが、よく考えたら帰る街は一緒なのだからありえないことはない。

ただ、1日に2回、しかも同じ時間、同じ車両、偶然にしては出来過ぎている。


「誰だこの子?どういう関係?」

先輩の周りには三人同じ学生服を着た人物がいた。


「ああ、小学校の吹奏楽クラブの後輩だよ。」

先輩は、私を三人に紹介する。

会話こそなかったが、今思えばこの時に豊田、横井の二人の先輩と会っていたんだと気付く。

全く横井先輩は、目を合わせてくれなかったのを鮮明に覚えている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ