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7話 仲間


彼は叫び声を上げることなく、いや、上げられずに

地面に崩れ落ちる。


闇を縫い合わせたかのような黒きマントを翻し

その背丈は大柄なデスマーチの二回りはあろう

人間離れした巨体に黒を基調とした西洋の甲冑をまとった騎士が姿を現す。

その手には赤い液体がしたたり落ちる

巨大で無骨な剣を片手で持ち上げている。


確かに俺は奴の後ろが見えていたはずだ。

しかし、気配察知にも誰かが来る気配もなかった上

あの鎧の巨体が動けば足跡の比にならないほどの音が経つはずだ。


「・・・は?」


黒き鎧は機械的な動作でそのまま大剣を薙ぎ払う。

その進行方向は技を使う直前の間の抜けた声を出したシン=ボォルの体を捉えそのまま勢いでふり抜き壁に叩きつける。洞窟内に嫌な音が木霊した。


重力に従いズルズルと落ちていくシン=ボォルに

視線を向けることもなく、頭部を完全に覆った

円筒形になっている兜の隙間からまっすぐにこちらを見据える。


『おい、生きてるのか』


『えっ、あっ、ハイ・・・』


『そうか』


男らしい声だ。同じ魔物側のプレイヤーが近くにいたのか。

レベルと名前の確認のため、黒騎士に対して鑑定を使う。


★織田信長 lv4 デュラハン 通常状態


・・・名前が見た目に合っていないような・・・

まあ、人のましてや恩人の名前にとやかく言うもんじゃないよな


丁度、スタンの解除を知らせるアナウンスが頭の中で響き、

体の拘束が解けたことを確認し、立ち上がる。

未だにシャーの返事も意識もない。

損傷とアナウンスは言っていたが自己回復で治るだろうか?


「クソッ、もう一匹いたのか!」


「・・・逃げよう」


「あーあっ、もう少しで経験値ウマウマだったのによぉ、クソッタレ!」


彼らは一緒に来た二人を置いて、唯一塞がれていない通路から

逃げ出し、暗闇の奥へ姿をくらましてしまった。


『逃がすわけないだろ、やれぃ、豊臣!」


『ブッッ!二ッハハハh!、わ、分かりました!』


鎧の人とは別の笑い声が聞こえ、恐らく豊臣と呼ばれた人物の方へ

目を向ける、その方向は――


――――彼らの逃げ道の方からようだ。


鋭い鉄の音、それに次いで聞こえてくる悲鳴がこだましていたが

徐々に鳴りやんでいく。


『よーしよーし、ククッ、仕留めましたよ!』


あの二人が逃げた方向から縦に割れ目がある釣鐘の様なものが姿を現す。

それは先端に男の顔をかたどった

鉄の人形にこの体を支えていることが不可解なほど細い2対の足が鉄の巨体を支えている。


何より気になるのは正面に朱色で描かれた子供が描いた

様な笑顔が存在感を醸し出している。


★豊臣秀吉 lv6 鉄の悪魔 通常状態


やはりこの人がさっき言っていた豊臣という人だ。

この人も見た目と名前が合っていないが言わないようにしよう。


その時である。

なんとのシン=ボォルとイキリッとの体が光の粒子となって消えていく。なるほどこの世界で死ぬとこうなるのか...

向こうの二人も同じようになっているのだろう

よく見ると豊臣さんの割れ目からも光の粒子が溢れ出てきている...まさかあの中に...


『おっ、経験値、結構上がりましたね!フフ、私は六まで上がりましたよ!』


『ああ、俺もだ。』


『あれぇ、なんかいつもより静かですねぇ!、アハハハハ!』


『・・・お前なあ、せ、せっかく格好つけてたのにその態度はないだろ?

僕は今な?ピンチって時にかっこよくな、現れて二人を瞬殺したっていう

かっこつけれる絶好のチャンスだったのにな~にが「静かですねぇ」

だぁ?長年相方務めてきたんだからそろそろこんぐらい

以心伝心もかくやみたいな感じでやってくれ、マジで』


『あー!そうだったんですか!や~、すいませんすいません!』


『ったく、頼むぜ~ホント』


『あ、あの~』


二人の顔がこちらを向く。

何とか会話に割り込めた。

織田さんが格好をつけていたのは意外だったが

感情を抑えるよりも出してくれてた方が

接しやすいので俺的にはありがたかった

レベルから見てこの二人は俺たちよりも早くに

このゲームをやっているに違いない。


色々聞きたいことはあるがまずはお礼をしておこう。


『えっと、俺といもう・・・』


『その!わたくしクリアとアルガの二人の

危ないところを助けていただいてありがとうございました!』


・・・妹によって大声で、なぜか遮られた。

なぜか俺を名前で呼んでいるし。

まあ、いいや。


『俺の名は、織田信長という者だ。よろしく』


『んで私はその家来の豊臣です。どーも!

アルガさん、クリアさん!』


俺たちも挨拶を済ませた後、織田さんが咳払いをするような仕草をし、

呼吸を整える


『それでだな、本当に迷惑じゃなかったんだな?』


『本当に助かりました。あのままだったら・・・』


『本当に、本当に大丈夫なのか?迷惑だったんなら正直に言ってくれよ?』


なぜそんなに助けたことを気にしているのか

と尋ねてみたところ、どうやら

経験値は倒した人のパーティにしか入らないらしく

しかも、プレイヤーは経験値がヴォルフなどの

普通の敵よりも多く手に入るらしい。


『アハハ、にしても拠点レーダーで敵の反応があったんで来てみたら

まさか、仲間がいるとは思いませんでしたよ!』


『拠点?拠点なんてあるんですか?』


『ん?キャラ設定が終わった後、別のとこについたろ、

ここからだと・・・平原の拠点から来たのか?』


『・・・私たちはずっと洞窟にいましたよ』


『あーっと、ワープの場所を選びましたよね?あれはどこを選びましたか?』


『洞窟です』


二人は無機物の顔を向き合わせるとまるで肩をすくめるような仕草をし、

小声で相談を始めてしまった。

...俺達なにかおかしい事言ったのか?


『なんか、間違ったことやったのかな』


『その・・お兄ちゃん、今の内に話しておくけどゲームの中では、

ゲームの名前で呼び合わない?』


『えっ、なんでだよ』


『その妹って呼ばれるのってほかの人が聞いてる所だと・・・

そのぉ・・・は、恥ずかしい・・・かなって』


『そう、か、そういう事ならそうしとくよ、えーと、

お前の名前は・・・』


そういえば、妹には鑑定をやっていなかったから、

名前を知らなかったな・・・


名前 クリア

種族 レイス 女 種族Lv2

加護 不死王の加護 (再生能力UP↑)


ノーマルスキル

瞑想Lv1 MP回復増加Lv2 魔法抵抗Lv1 夜目Lv1 自己回復Lv1

生命感知Lv2 複数詠唱Lv1 鑑定Lv2 識別Lv2 念話Lv1

精神強化Lv2 高速詠唱Lv1 闇魔法Lv2


SP80


器用値 33 敏捷値 03 知力値 36 筋力値 01 生命力 04 精神力 33


種族スキル

霊体( 物理 睡眠、麻痺、暗闇、気絶、毒、即死無効 光魔法弱点 )


名前や種族だけではなく、スキルやステータスも出てきたが

これはimportant personシステムの恩恵の一つだ。


というか妹のステータスは・・・いわゆる特化型という奴だろうか

あと妹が最初に言っていた、俺のステータスにはないSPというものがある。

何故、俺にはSPが無いのかについても二人に聞いておこう。


『クリアだな、じゃあ改めてよろしくな、クリア』


『うん、よろしくね、ガルム!』


『そのぉー・・・そろそろいいか?』


改めて、妹・・・もといクリアと挨拶を交わしたところで

織田さんから声が掛かる。あちらの話し合いはすでに終わっていたようだ。


『ネットで君らみたいな現象はまだ出てないから、何とも言えないけど

とりあえず、君らを俺たちの拠点まで案内する。もしかしたら、拠点の仲間が

何か知っているかもしれない』


『あ、じゃあお願いします』


「確認されていない現象」というのはよく分からないが

彼らの拠点まで連れて行ってくれるそうだ。

そしてほかにも仲間がいるらしい、どんな人たちがいるのだろうか?


俺は期待に胸を膨らませ、クリアの速度に合わせて

ゆっくりと彼らについていった。



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