2話 状況確認
・・・また意識が途切れたみたいだな。しかし、ありえないが、何故か意識がある。
と、またピロンと言う音が「頭の中」で聴こえた。
《名前を設定してください。また他のプレイヤーが使っている名前と同じ名前は付けることはできません。》
と、同じく声も「頭の中」で聞こえた。
な、なんだったんだ、まるで頭の中に直接入ってくるみたいな
感じたことのない感覚だった。本当にどうやっているんだ?
また、疑問が一つ増えたが、やはり分からないのでまた別の時に考えよう。
さて、またまた黒い画面があり、名前を入力をするらしいが、
困ったな、全く考えてきていなかった。何にしようか・・・
10分ほど考えた後、考えがまとまったので名前を入力しようとするが
先程から身体が動かないのでどうしようと思いながら黒い画面に
意識を向けると、頭の中に入力画面が浮かび上がり、まさかと思い
入力すると、黒い画面にも文字が反映された。
・・・もう考えるのは無駄だと思い、「アルガ」と入力する。
混合するという意味のアマルガメイトから取った。
《名前の設定が決定しました。初期スキルとして、「鑑定」、「識別」、「念話」を習得します。
ようこそ、「Holly or evil」の世界へ。》
また頭の中で聞こえた。やはりまだ慣れないがこの分だとあと2回ほどでなれるだろう。
そして、唐突に意識が戻る。すると、俺は、薄暗い岩でできた洞窟の中にいた。
壁にある岩はきちんと凹凸があり、ひんやりとした空気が肌で感じられる。
目の前は、少ししか見えず、奥へと続く通路があるが暗闇で先は見えない。
まるで、ゲームの中に来たとは思えないほど現実のように感じていた。
だが、まずは妹を見付けようとと思い、右を向くと大きな黒目がこちらを見ていた。
もちろんそれは、最初に選択した鮫であるのと理解していたが、
かなり近かったので、かなりビックリした。
顔の先が尖っているので恐らくネズミザメの一種だと思う。
ところで、先程から鋭利な歯をがちがちと鳴らしているのは何故なんだ?
まさか俺のことを敵か食べ物だと思ってるんじゃないだろうな。
しかし、鮫が目の前にいるということは、俺が獅子の頭なのだろう。
たてがみがあったから、この頭はオスなのだろう。
ちなみに、今俺は4足歩行で立っているがあまり違和感がない。
試しに歩くと普通に歩いているような感覚で歩ける。
次は声を出そうとし、「おーい!」と叫んだが出てくる声は
「ガアァァァァ!」と言う馬鹿でかい唸り声が鳴り響いた。
いてて、洞窟のせいかよく響いて耳が痛い。
ふと、隣の鮫を見ると歯を鳴らすのをやめ、こちらを見ていたが
なんとなく、「何やってんだこいつ」と言いたげな迷惑そうな表情をしていた。
いや、まあ分かってたけどさ、念の為確認しないといけないんだよ。
まあ、動きが終わったから一番気になる「スキル」の確認をする所で
またあの感覚が襲った。
『おーい!お兄ちゃーん!こっちこっち!』
と、あの時の同じ様に頭の中へ声が送られてくる。
しかもこの声は…周りを見ると先程はなかったボロボロのローブが浮かんでいた。
全身に茶色のローブを纏っており、下を向きフードで顔が見えないが、人間のように見える。
しかし、少し浮いており、ローブの穴から、ユラユラと動く深紅の炎のようなものが見え、
それが人間ではない事が伺える。
『かっこいいでしょ。お兄ちゃんも中々凄いものになったねえ。
・・・ちょっと、聞いてるの、お兄ちゃん。』
また声がなんとなくだがこいつから送られて来るような感じがする。
つまりこれキャラクターが妹である可能性が高い。じゃあ「お前は妹か」と
訪ねたいがどうやって声はさっきやった通り、出せないので
どうやって出すか考えているとさっきの声を思い出した。
そういえば、さっき初期スキルで「念話」を習得したと言っていたな。
あの名前を付けた時と同じように意識を向けると
カチリ、と何かと自分が繋がったような感じがし、
それに頭の中の言葉を伝わるようにする。
『・・・あー、聞こえるか?』
『・・・あっ、やっと反応してくれた。なにかあったの?』
『いや、俺は念話は初めてなんだが・・それよりお前は俺の妹だよな。』
『うん、まあこの見た目じゃ、全く分からないだろうけどね。
うーん、お兄ちゃんの隠し事を言えばいいのかな。お兄ちゃんは昔
自分の部屋で‥』
『分かった。お前は俺の妹だな。だからその話をやめろ。』
俺が慌てて返事をすると妹がクスクスと笑う声が聴こえ、
顔を上げる。だが、顔がある場所には顔は無く、代わりに深紅の火の玉がある。
確かこいつは「レイス」って種族だったな。ええと、説明文は・・
レイス____ウィザードなど魔法に長けている者の霊であると言われている。
剣などの物理的な攻撃は効かず、魔法でしか攻撃が効かない。
『お前のなりたい種族ってレイスだったんだな。
中々、かっこいいじゃないか。』
『でしょ!お兄ちゃんは見た感じキメラだよね?お兄ちゃんって
そういうのが好きだったんだね。・・・でも、ライオンとサメって中々、珍しい組み合わせだね。』
『・・まあ、これは、色々訳があってだな・・・』
・・・そういえば、この鮫、自分では動かせることはできないんだよな。
誰が動かしているんだ?と思い、意識を向けた時、違う景色が頭に入り込んできた。
その景色には、ライオンと妹のキャラが見え、もしかしてと思い、自分の首を振ると
そのライオンも俺と同じ動きをした。どうやら、合っていたようだ。
つまり、意識を向けるとこの鮫の頭が観ている景色が見えるようだ。
更に右に向いてほしいと念話と同じように伝えると右を向く。
つまり、俺の命令を出せば可能な限りその通りにやってくれるようだ。
他にも何かできないかと試していると念話が聞こえてきた。
『おーい。どうしたのお兄ちゃん?急に黙って』
『ん?ああ、悪いな。・・そうだな、まずはお互いに見つけたことを
報告しあうのはどうだ?』
『そうだね。情報交換は大事だからね。』
そういうことで妹と最初に種族の事を話し合った。
すると妹はやはりこっちとは全く違うようだ。
まず、移動はフワフワと少しずつしか移動させることしかできないらしい。
それにまだ試していないが日の光に弱いらしい。
だが、説明文に書かれていた通り物理攻撃は効かないらしく
触ろうとしても、すり抜けて触れない。
あと、洞窟の中は昼間のように良く見えるらしい。アンデッドだからだろうか?
次にスキルのことについて聞くと俺の知らないことがかなり多く出てきた。
まず初めにスキルを選択するらしい。
スキルは種族スキルとノーマルスキルがあり、
種族スキルはその種族だけが持つ特別なスキルで、特別な時にしか覚えられず、
ノーマルスキルは主に武器系、防御系、魔法系、生産系、補助に分かれていて
スキルポイント、略してSPを使えば、いつでもスキルを覚えられるのだそうだ。
更にレベルがあり、数字が高いほど効果が高くなる。
俺の時はそんなものはなかった、とを話すと妹はかなり驚いたような顔をした。
『え?でも、お兄ちゃんのステータスにはスキルがあったよ。』
『何?ステータスってどうやってみるんだ?』
『えーと、今の念話みたいに自分に意識を向けてみて』
そう言われ、自分に意識を向けると目の前に黒い画面が現れ、
白い文字で
名前 ガルム
種族 キメラ 男 種族Lv1
加護 融合王の加護 (連携UP↑)
ノーマルスキル
噛み付きLv1 爪撃Lv1 体当たりLv1 夜目Lv1 疾駆Lv1
自己回復LV1 身体強化Lv1 気配感知Lv1 連携Lv1
念話Lv1 水棲Lv1 鑑定Lv1 識別Lv1
器用値 20 敏捷値 24 知力値 20 筋力値 24 生命力 24 精神力 20
種族スキル
捕食吸収 複数意思 威圧 共有 盾鱗 丸呑み 頭(獅子 鮫 )※あと1頭まで追加可能
と表示されている。
スキルに意識を向けるとそのスキルの説明が出てくる。
念話はさっきやった通りだな。相手にいわゆるテレパシーの様な事が出来る。
各スキルの説明をすると噛み付き、爪撃、体当たりはその攻撃の強さを上げる。
夜目は暗い所が良く見え、疾駆は早く行動できる。
自己回復は再生力を上げ、身体強化は身体が強くなる。
気配感知は他の生物の気配を感じ取れ、連携は同時行動がしやすくなる。
水棲は水の中での行動がしやすくなり、鑑定、識別は物を見分け、価値を見抜ける。
はあ、かなり多いな。説明を見るのも大変だ。しかし、これでもまだ種族スキルがあるのだ。
少し嫌になりながらも、説明を見ようとしたところで
妹から大声の念話が届いた。
『お兄ちゃん!通路から何か来るよ!』