プロローグ
「お兄ちゃん!!」
突然、勢いよく開かれたドアの音と共に入ってくる大声に俺は、またかと思い
やっていたゲームを止め、後ろを振り返る。
そこには、毎回俺の部屋なのにノックもせずに入ってくる怒った顔をした妹がいた。
そしてその手には俺の待ち望んでいたものがあった。
「おい、いつも言ってるだろノックしてから入れって。」
「いいでしょ別に、お兄ちゃんだってノックせず
私の部屋に入ることだってあるし・・・それより人と話すときは目を見て
話すんじゃないの?さっきから袋の方見てる。」
「ああ、悪い悪い。そんなに見てたか?」
「うん、今にも私に飛びついてくるぐらいに。
まあそれより、はい約束の物。」
俺は妹から袋を左手で受け取り
俺は今にも踊りだせるぐらい楽しみにしていた物を袋から出す。
それは、チラシで観たそのまんまの黒と白のVRオンラインゲーム「Holly or evil」だった。
俺はあまりに感動して、「おぉぉ!」と声が出てしまった
それを聞いた妹は、はぁ、とため息をつかれた。
「なんだよ、お前だって、楽しみにしてただろ。」
「そんなわけないでしょ。お兄ちゃんじゃないんだし、それよりこれを一人で夜に
買いに行かせるとかひどいでしょ!」
「いやいや、最近落ち着きが無かったろ、それにじゃんけんで俺が勝ったんだし」
「もう!そんなことないよ!・・・はぁ、まぁいいや、はやくやろ!」
少し怒りながら言っていたのに、足取りは軽やかだったので
俺が笑いながら「ほらやっぱり楽しみなんじゃないか」と言ったら
怖い顔をして睨まれたので口を慎むことした。
「えーと、白が私で、黒がお兄ちゃんね。」
「ありがとな。で、えーと説明書の通りにヘッドセットを
べットに取り付けるからお前は部屋に行く前に・・お前のと俺のをくっつけるんだ。」
「え、こう?」
妹と俺のやつをくっつけるとピロンという音がなり
『important personシステムを確認しました』という機械的な声が聞こえた。
妹は少しびっくりした様子で、「今のは?」と聞いてきた。
「このimportant personシステムはゲームの中でできる友達「フレンド」よりも
強い恩恵を受けられるんだ。インベントリを共有できたりとかキャラクターエディット
を一緒にできたりとか。」
「へえぇー・・って何で知ってるのよ」
「楽しみで仕方なくて調べたんだよ。」
「買っても、絶対に調べないとか言ってなかった?」
「ゲームの内容じゃないから大丈夫だし、発売当日だから情報も少ないから大丈夫だよ。」
「そのせいでかなり私は並ばせられたけどね」
俺はまだ根に持っている妹に「悪い悪い」と言いながら説明書を手にとる。
「さて、早速取り付けるぞ。お前は自分でできるか?」
「説明書があればできるよ。」
「じゃあ、どっちが早くできるか勝負するか?」
すると妹はにまりと邪悪な笑みを浮かべて、自信満々に
「いいよ。じゃあ勝った方が何か言うことを聞くんだよ!」
「いいぞ。じゃあ、あっちについて準備が出来たらよーいどんって言ってくれ」
妹は、分かった。と言い走って自分の部屋に向かった。
そして、少し経つと、大声で「いくよー、よーい・・ドン!」
と言った。よし負けねぇぞ、戦いに情けなど無用だ。
相手が妹だからといって容赦はしないのだ!
・・・・しなかったのだが
「今は特にないから、保留にしとくねー」
「・・・分かった。」
結果は妹だった。しかも作り間違いはなかった。
俺はと言えば、妹より1分ほど遅い上に間違いも多くあった。
つまり、完敗だった。
「お前ってそんな器用だったんだな」
「これくらい普通だよ。お兄ちゃんが下手なだけ」
「そうか・・もういいや、早くやろうか。」
「そうだね。じゃあすぐに行くね。」
そう言って、妹は自分の部屋に行った。
勝ったことがうれしかったのか鼻歌交じりに歩いていた。
俺は負けたことが悔しいよりも、何故だか
妹が勝ったこと嬉しいと思っていたので俺も少しそうゆう所があるのだろう。
「さて、じゃあやるか!」
俺はヘッドセットをつけ、起動すると意識が途切れた。