表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

幸せ

作者: 茶根

許されないことから、許されるべく生きることは、なんともまあ、難しい。


彼は28歳の青年だ。見た目は今の若者といった風で、髪の毛は茶色く痩せていて、話し方の下品な人間だ。


僕は猫だ。

ただの猫だ。僕は彼のことが好きだ。

だけど、彼の愛情に答えられない。

僕にはうつしてしまう、病気を持っているからだ。

彼は自身の仕事の帰り道、毎回僕に出くわす。

出くわす、と言うが、僕がわざとそこにいるんだ。

彼はよく会う僕に対して、毎回優しい顔をして声をかける。

だが僕は。

近くに寄ることができないんだ、うつしてしまうから。


そうして今日もまた彼をがっかりさせ、僕は彼の後姿を見送る。


飼い猫のように、足に擦り寄り、頭を強引に撫でられ、そうして抱きしめてもらいたいのに。

それが出来ない。

それでもいいのだ。

彼が飽きないかぎり、僕を無視していかないかぎり、そのことにバレることはなくて、僕はただ帰路の猫でいられる。


そういう出会いはこれまでにもあったが、僕が懐かないことで、ひどく怒り、ゴミを投げつけられたこともあった。


そっと愛することも難しい僕は、一体なんのために生きるのか。



ある日彼が素敵な女性を連れて歩いてきた。きっと恋人なのだろう。

だが、僕が姿を現しても、彼はいつものような笑顔ではなかったんだ。

隣にいる女性は僕を見て悲鳴をあげた。猫は嫌いなんだ。

そうすると彼は、恐ろしい顔をして僕を追い払った。大きな声を出して。

僕はその日野良犬にかまれた足を引きずって、逃げた。

逃げた。

どこまでも逃げた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  猫を人間にたとえると、悲しさがより伝わりそうです。
2017/05/13 12:32 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ