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第190話「外伝・遠く離れた妹へ想いを馳せて……」

 こうして……

 無法な冒険者の一団に襲われた、居酒屋ビストロ勇者亭の給仕担当リアーヌは、ダンにより窮地きゅうちを救われた。

 

 野次馬からの通報により、駆け付けたアイディール王国衛兵隊が事情聴取を行ったが……

 加害者らしき冒険者達は、ダンの反撃により全員気絶していた。

 なので、証言は集まったが、取り調べはその場では完結しなかった。


 中でも首領ボスと呼ばれていた主犯の冒険者リーダーは……

 命こそとりとめたものの、相当な重傷であった。

 顔面を含む複数の複雑骨折、全身打撲だと衛兵隊所属の医師には診断された。


 先に手を出したのが首領の方ではあったのだが、あまりにも酷い怪我である。

 首領を殴ったダンは過剰防衛かじょうぼうえいの罪に問われそうになった。


 しかし被害者当人であるリアーヌ、事件の一部始終を目撃していた同僚の給仕女子達の証言により事態は一気に好転した……

 冒険者達のリアーヌ誘拐未遂の犯罪行為が明白となり……

 結局ダンは正当防衛が適用され、おかまいなしとなったのだ。


 クランフレイムも危機に陥ったリアーヌを助けようとし、冒険者達から暴行を受けた被害者であったから、当然ながらおかまいなしである。


 意識を取り戻した冒険者達の余罪も発覚し……

 彼等には1か月の禁固刑が言い渡され、入獄の処置が取られた。

 最終的には王都所払いの刑も加算され、中央広場でむち打ちの上、追放となったのである。


 その数日後、ダンは王都に不在となった。

 追放された冒険者達の足取りも同時に消えた。

 

 最終的に……

 冒険者達の所在は一切不明になったという。

 ダンが、「彼等に何をした」のかは定かではない。


 さてさて……

 この事件を機に、リアーヌはダンと良く話すようになった。

 「あの時は酔っていた」とダンは苦笑し、ナンパした事を謝罪した。

 

 しかし、リアーヌは笑顔で首を横に振った。

 「貴方は命の恩人だ」と。

 

 さすがに言えなかったが……

 ダンが改めて誘ってくれたら、お礼も兼ねてデートしたいとリアーヌは本気で考えていた。


 双子の兄ルネが行方不明となった今……

 ダンとの親しいやりとりで、リアーヌは平常心を保つ事が出来ていた。

 危機を助けてくれたダンに、敬愛する兄を重ね、好意を寄せているのは明らかであった。


 片やダンは素っ気なかった。

 まるでリアーヌなど眼中にないという趣きであった。

 触れなば落ちんという風情のリアーヌに対し、全くアプローチをしなかったのだ。


 結果、リアーヌは想い悩んだ。

 生まれて初めての恋であったから。

 ダンへの感謝が、ひたむきな愛に変わって行く気持ちをはっきりと自覚していた。

 

 片思い?

 それとも……


 ダンは、自分の事をどう思っているのか知りたかった。

 そこでリアーヌは何度か、ダンを誘ってもみた。

 

 しかし……

 さりげなく断られてしまう。


 話しかけるのは勿論、

 諦めず何度も、何度も誘った……

 

 だけど、状況は変わらなかった。


 そんなある日の事……

 恋心が伝わらないリアーヌに同情し、同僚の給仕女子が教えてくれた。


 ダンがリアーヌを助ける際に発した謎めいた言葉を。

 あの時、確かにダンは……

 ネネという名を呟いたのだと……


 ちなみに……

 ネネというのはこの世界でも付けられる女性の名前である。

 

 もしかしたら……

 ネネとは、ダンの恋人の名かもしれない。

 そう、同僚女子は教えてくれた。


 しかし、リアーヌの気持ちは全くといって良いくらい変わらなかった。

 ダンと愛し愛される関係になる事を諦めはしなかった。

 それには……

 ある理由があったから。


 リアーヌは店主のアルバンから意外な事実を聞いたのだ。

 

 素っ気ない態度をとるダンではあったが……

 何かにつけ、リアーヌを気にかけ、心配してくれているという。

 万が一、先日のような事があれば、すぐ報せ、相談してくれと告げたらしいのだ。


 リアーヌは安堵し、素直に喜んだ。

 自分の好意は、想いは……

 確実にダンへ届いていたのだと。


 愛するとまでは行かないかもしれないが、少なくとも好かれてはいる。

 嫌われてはいないのだ。

 けしてくじけず、あきらめず。

 そう自分を納得させ、生きる励みとし、仕事にも精を出した。


 ダンが自分を気にかけている。

 その事実は、基本男性には奥手のリアーヌを徐々に大胆にもした。


 またリアーヌは開き直りもした。

 もしもダンに恋人が居ても構わないと。

 

 アイディール王国は一夫多妻制を認めている。

 いざとなれば『妻のひとり』となっても構わないと決意したのだ。

 そして、ダンに対しては、まるで恋人のように振る舞おうと決めた。


 以来、リアーヌはダンが勇者亭に来る度に恋人のような物言いをするようになった。

 

 対してダンは、否定や拒絶はしなかった。

 だが相変わらず肯定もリアーヌを受け入れる事もしなかった。


 リアーヌは思い切ってダンへ聞いた事がある。


 ネネとは一体誰なのか?

 ダンにとって、どのような存在なのかと。


 果たして、リアーヌは答えを待ったが……

 結局ダンは答えなかった。

 返事さえも戻さなかった。


 更に追及しようとして、リアーヌは思いとどまった。


 リアーヌの知らない何か、遠くの存在へ深い想いを込めているのか……

 ダンの瞳が哀しみの為か、僅かに潤み……

 虚空を見つめていたからである。

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