第188話「外伝・クラン炎②」
クラン炎のリーダー、チャーリー・アトキンズが持って来た話は、やはり勧誘であった。
ソロで活躍するダンの評判を聞き、依頼遂行の補助を願い出たのである。
チャーリーによると……
依頼内容は人に害を為すゴブリンの討伐。
出発は明日。
午前9時には現地へ入りたいという。
場所は、王都から徒歩で約1時間のとある村。
肝心の報酬は1日拘束で金貨3枚だという。
魔法使いの雇用料として、けして多いとはいえないが、ダンは満足であった。
ダンがOKすると、チャーリーはひどく喜んだ。
身体全体で感情を表す。
このオーバーアクションも彼が好かれる原因のひとつかもしれない。
チャーリーは早速メンバーに紹介したいとダンを誘った。
指さした方向にあったテーブルには3人の男達が座っていた。
やはり『あの時』の男達だ。
皆、チャーリーと同じく若い。
全員20歳前で、少年に近いだろう。
ダンが席に着くと、チャーリーがにっこり笑う。
「おう、ダンがOKしてくれたぞ。全員自己紹介してくれ。じゃあ改めて! 俺、チャーリー・アトキンズ。冒険者ランクCの戦士。クラン炎のリーダーをやってる」
続いて、小柄ですばしこそうな少年がVサインを出す。
「おいらはアーロン・エイベル。チャーリーと同じで冒険者ランクC。クラン炎所属のシーフさ」
続いては、法衣を来た少年が柔らかな笑みを浮かべる。
「僕はコンラッド・ウォール。同じくクラン炎所属。冒険者ランクCで僧侶なんだ」
そして最後は魔法使い用の法衣を着た少年である。
「俺はニック・メラーズ。同じくクラン炎所属。冒険者ランクC、魔法使いだよ」
4人の自己紹介が終わると、ダンも頭を下げる。
「ダン・シリウスだ。ええっと、チャーリーに、アーロンに、コンラッドに、ニックだな……宜しく頼む」
互いの挨拶は終わった。
と、なれば一緒に飯でも食えば、仲がぐっと深まる。
ダンがそう考えていたら……
どうやらチャーリーも同じ事を思っていたようだ。
「よっし! じゃあダン、昼飯食いに行こうぜ。中央広場近くに可愛い子が居る店があるんだよ」
「可愛い子?」
「おう、そうさ。可愛くて、胸も大きくて、お尻もきゅっと上がってる。見るだけでもうドキドキだよ。さあ行こうぜ!」
チャーリーが行く店には、可愛い女子が居るらしい。
高校生の時以来だろうか……
久々にそんな会話をするのがダンも楽しい。
「おう、じゃあ行こう」
「おお、ダンは話が分かるなぁ」
とチャーリーが嬉しそうに返すと、
すかさずクランメンバー達が突っ込む。
「じゃあ、ダンはチャーリー同様、女好きかよ」
「ははは、どスケベって奴か?」
「男子らしくて良いよ、それ」
以前から、ずっと仲間のような温かさに包まれて……
ダンは幸せな気分でギルドを出たのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌朝7時……
時間にだいぶ余裕を見て、ダンとクラン炎は王都の正門前に集合し、出発した。
本当は馬があれば良いが、1日のレンタル料が結構高い。
万が一死なせでもしたら、1頭あたり金貨50枚は支払わねばならない。
そんなアクシデントがあれば、完全に赤字となってしまう。
だから現地までは徒歩で行く。
ひたすら1時間歩くのだ。
若くて元気だし、全員身体を鍛えている。
だから少々歩いても苦にはならない。
ダンは秘めたる力を持つランクBだが、チャーリー達もランクC。
最低ランクがFだから、年齢にしては相当の実力を持つ冒険者達だといって良い。
やがて目的の村へ着く。
依頼主の村長に挨拶し、休む間もなく、ゴブリンが居るらしき『巣』を目指す。
暫し歩き、巣に着いた。
岩が混在した草原に穴がたくさん開いている。
ゴブリンは穴を掘って地下に住んでいるのだ。
気配を察したのか、ゴブリンが続々と現れる。
しかしギルドからの依頼書と大きな相違があった。
ゴブリンの数が全く違っていた。
数十頭のはずが、実際には全く違う。
その倍以上、100頭を楽に超えていたのである。
……原因は村の予算不足にあった。
相応の謝礼金を用意出来なかった為、村長は冒険者ギルドへ虚偽の申請をしたのだ。
「畜生!」
「くそ村長の奴!」
「嘘付き野郎めっ!」
憤り、口汚く罵る、アーロン、コンラッド、ニック。
チャーリーだけが腕を組み、苦笑してゴブリン共を見つめていた。
と、ここでダンが「ずいっ」と前に出た。
「俺に任せろ、チャーリー達は後方から援護してくれ」
「おいおい、俺は盾役だ。ダン、一緒に行くぜ」
チャーリーはそう言うと、メンバー達へ冷静に指示を出す。
「アーロン、全体を見て戦局を見極めろ。気が付いたところがあったら大声で報せろ。コンラッドはスタンバって回復魔法の準備だ。俺とダンが負傷したらすぐ対応出来るようにしてくれ。ニックは後方から攻撃魔法で援護だ。ドジって俺とダンに当てないようにな」
なんやかんやいじられながら、さすがリーダーである。
チャーリーは本番に強いタイプなのだ。
「よし、ダン行こう! 君は剣だけではなく至近距離で攻撃魔法も使えると聞いたぞ」
「おう、その通り、火の魔法が使えるぞ」
「よっし! 知っているだろうが、奴らの弱点は火だ。近くで使えば奴らは怯む。そこに付け込むぞ」
「了解!」
「おらおらおら~~!!! 行っくぞ~~!!!」
ゴブリンが満ちた草原に、チャーリーの凄まじい雄叫びが響いた。
ダンも気合を入れ直し、襲いかって来るゴブリン共を見据えたのであった。
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