第184話「外伝・大星ダンの決意」
皆様、ご愛読頂きありがとうございます!
私はこの物語が始まる前、最初に皆様とお会いした名もない『語り部』でございます。
魔法のない異世界から連れて来られ……
数奇な運命 に翻弄され、
一旦、いいようのない孤独と絶望に陥おちいりながらも……
最後には愛する家族と大切な仲間に巡り会い、
不可思議な人生をまっとうした、ダン・シリウス――大星ダンの生涯は……
いかがだったでございましょうか?
異世界転移、否、まったく違う容姿に変わったから……
『異世界転生』でありましょうか。
ダンは死して、元の世界に還り、愛しい妹ネネと再会したのか。
それとも数千年後の違う異世界で、エルフ――妻のアールヴ達も死に絶えた異世界で、愛する妻エリン、リアーヌ、ヴィリヤ、ベアトリスの4人と再会出来たのか?
心の絆を結んだ仲間達は一緒なのか、興味は尽きないかもしれません。
これから私が語る数編の物語はいわゆる『外伝』でございます。
本編でいえば、『時間軸』はヴィリヤがダンを召喚した後……
『運命の想い人』エリンに出会うまでのエピソードといえましょう。
外伝の最後に、私はこの物語を補足し、総括させて頂けたらと思います。
後、しばしの間お付き合いくださいませ。
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大星ダンは勇者として召喚され……
王宮魔法使いヴィリヤ・アスピヴァーラの護衛を兼ねた屈強なエルフの兵により、監視されながら入浴と食事の世話を受けた。
最初は……絶望のあまり、自死を考えた。
しかし……
散々、考えた末にやめた。
ダンが読んでいた『ライトノベル』の主人公が
「異世界から元の現実世界へ帰還する」というストーリーも、
「ジャンルの中にあったはずだ」と、記憶が甦ったからだ。
いかに召喚魔法とはいえ……
何か、『運命の大きな力』が「この異世界へ自分を引き寄せた」としたら……
少しでもこの世界の者の役に立ち、『何か』を為してから死ねば……
大きな力は再び自分を妹ネネの下へ帰すと考えたからだ。
否!
そう信じる事で、押し寄せ迫る『絶望』から逃れたかったのだ。
郷に入っては郷に従え……
そんな『ことわざ』が浮かんだダンは、反抗的な態度を取る事をやめた。
この世界で生きて行く事を受け入れるという態度に徹するようになった。
ダンは転生の際、備わった資質を伸ばす為、課された『修行』に没頭しようと決めたのである。
ダンは言葉遣いを改めた。
ヴィリヤに自然な敬語を使い、へりくだってみせた。
……いろいろと、この世界について学ばせて欲しい。
そして、備わった資質を開花させ、伸ばしたいと頼んだ。
ダンの変貌を見て、ヴィリヤは喜んだ。
予想外に早く、『創世神の勇者』として召喚した彼が「現実を受け入れた」と思ったからである。
ヴィリヤは屋敷に魔法、武技、スキル、そして学問といろいろなスペシャリストを呼び寄せ、ダンの本格的な修行を実施する事を決めた。
そして副官のゲルダ・ボークスへ一切の仕切りを命じたのである。




