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第181話「都市国家シリウス」

 それから更に……

 長い時が流れた……

 人間の人生の約3倍以上にもあたる膨大な時間が過ぎたのだ……


 隠れ勇者ダン……

 否、救世の勇者となったダン・シリウスの名前をたたえ……

 名付けられたシリウスの町が生まれ、もう3百年余りが経っていた。

 

 造られた当初、住民500名のこじんまりしていた町は大幅に拡張され……

 この世界では、もう立派な大都市といえる規模となり……

 住人は軽く3万人を超えていた。

 

 全世界の人々は『都市国家シリウス』と呼んでいる。

 

 また深き地の底に暮らしていたデックアールヴ達、そして彼等と血を合わせ、生まれた者達も全員が地上への移住を完了していた。

 

 そう!

 ダンが新たな国造りを決意してから、約3百年の時を要し……

 遂にデックアールヴ達の悲願、地上への帰還は完全に叶ったのだ……

 このかん、エリンの父や一族を始め、大勢の犠牲者を出しながら……

 

 同時に遥かいにしえに生きた、

 アイディール王国開祖・兄ゼブラン、弟・ローレンスのアイディール兄弟の大きな夢も叶った。

 

 またリョースアールヴ代々のソウェル達が葛藤した、長きに亘る『贖罪』も遂に成し得たといえるだろう。

 

 そして……

 約3百年の長き時間は……

 シリウスに住まう者達も大幅に様変さまがわりさせた。


 数千年もの時を生きる、長命な種族アールヴやその血が合わさった者達は、殆どが健在だが……

 当然ながら、町が誕生した時点で移住した人間族は既にこの世を去っていた。

 勇者ダンやその仲間達も含めて…… 


 あの日、エリン達へ告げた『遺言』通りに……

 ダンは絶大な力を持つ救世の勇者となったが……

 自身へ魔法を使っての不老不死化は勿論、延命の処置さえもしなかったのだ。


 結局、シリウスが誕生して、50年と少しで……

 全世界に尽くした救世の勇者ダンは死んだ。

 

 ダンの妻となり、多くの家族を得た孤児のリアーヌと、完全に健康体となった王女ベアトリスも……

 まるで『想い人』の後をすぐ追うが如く……

 ダンの死後数年の間に、この世を去ってしまった……


 そしてダンが亡くなるまでに……

 

 超人気店『新・勇者亭』のあるじとなったアルバンは念願叶い、ダンとリアーヌの子を抱き、心身とも幸せに満ち溢れ……世を去った。

 

 ベアトリスに自分の人生を奉げたパトリシアも、満ち足りた人生を送り、天へ召された……


 離れ離れとなった亡き妻と息子の魂に、遠く想いを馳せたベルナールも……

 難儀する人々を大勢救って、息子ディーンの遺志を見事に果たし……

 この世を旅立っていた……

 今頃は愛する妻子と天にて再会、転生して、どこかで幸せに暮らしているかもしれない。

 

 師と仰いだベルナールに同行、シリウスへ移住した忠実な部下イレーヌも、彼女にとって最も幸せな人生を送り、笑顔で逝ってしまった……

  

 リアーヌの兄ルネも一流の職人として世界中にその名を響かせ……

 クランフレイムのチャーリー達も腕利きの冒険者として……

 それぞれ、人生を充分全うし……亡くなった。

 

 仲睦なかむつまじかったアルバートとフィービー夫妻の姿も……

 とうにシリウスの城館からは消えている……

 

 ダンが召喚した魔獣ケルベロス&オルトロス、妖精猫のトムなど忠実な従士達も遥かなる異界へと還って行った……


 しかし……

 ダンや仲間達は亡くなっても……表舞台から退いても……

 彼等の熱い血筋と崇高な遺志はしっかりと受け継がれていた。

 

 リアーヌを始めとして、ダンの妻達4人全員には、それぞれ健康な子供が生まれたのだ。

 

 ダンの子供達はすくすくと成長し……

 救世の勇者の血は紡がれ、孫へ、さらにその子供達へと受け継がれた……

 

 結果、ダンの子孫は仲間達の子孫らと共に……

 今や独立して都市国家となったシリウスを動かしていた。

 

 現在、宰相となったデックアールヴの指導者リストマッティは、ダンの子孫達と共にシリウスをしっかりまとめ、治めている。

 

 英雄ゼブランの弟ローレンスの子孫であるリストマッティは、遠き先祖同様、人心掌握に長けていた。

 それ故、多種族国家となったシリウスでも内部の争いは全くない。


 一方……

 リョースアールヴの象徴ともいえるヴィリヤの祖父ヴェルネリも、長きに亘って務めたソウェルを引退した。

 

 だが、ヴェルネリはイエーラに在住しまだまだ健在だ。

 今は亡きダンとの『約束』を守り、随時的確なアドバイスをしてくれる。

 

 またアイディール王国も、既に10回以上代替わりしていたが……

 ベアトリスとの血の繋がりから、イエーラと共に兄弟国として常に友好的である。


 そんな中……

 エリンとヴィリヤは、そろそろ頃合いだと感じ、決断した。

 無論、リストマッティ、ヴェルネリとじっくり相談し、出した結論である。


 つまり……

 「救世の勇者ダンが創った都市国家シリウスはデックアールヴの血を引く国だ」

 と、いう重大発表をしたのだ。

 

 発表後、エリンを始め、デックアールヴ達は本来の姿に戻った。

 もう素性を隠さずに、堂々と振る舞った。

 

 ダンが、我が子達や素質ある者達へ変身魔法を受け継がせ、エリン達は彼の死後もずっと姿を変えていたのである。


 だが……

 大きなリスクを覚悟し、万全のタイミングとして、3百年の長い時間を待ち、秘密を明かした割には……

 全然、呆気なかった。

 関係者は全員、拍子抜けしたと言って良い。

 

 世界の誰もがシリウスを、呪われているとののしったり、忌み嫌ったりなどしなかったのだ。

 

 何故ならば……

 今やシリウスは、世界中の人々から慕われ、希望と活力にあふれる素敵な国だから。

 

 仮に誰かが……

 救世の勇者ダン、クラン『ディーン』、そしてシリウスの住民達が、呪われているとイメージしようとしても……

 

 創世神の名の下に、建国以来築き上げて来た、世界中の人々に尽力したという厳然たる実績……

 その事実の前では、呪いなど単なる妄想に過ぎない……

 と、誰もに一蹴されたからだ。


 現に、魔物の害に留まらず……

 国を滅ぼしかねない怖ろしい天災があっても……

 シリウスからは勇者の血を引く頼もしき者達が赴き……

 家族を失い、悲嘆にくれる人々を励まし、復興に尽力していた。


 そんな『救世の勇者達』を世界の人々は深く信頼し、圧倒的な支持をしたのだ。


 こうして……

 勇者ダンの創った都市国家シリウスは、重大な事実を発表する前と全く変わらず、大いに繁栄して行ったのである。

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