第179話「輝かしい未来へ①」
いよいよ終盤!
宜しくお願い致します。
元・創世神の巫女……
アイディール王国王女ベアトリスが、救世の勇者となったダンと結ばれるよう神託を受けてから……約1年が経った……
王都トライアンフから、やや離れた山間に……
アイディール王国とリョースアールヴの国イエーラの惜しみない援助により大規模な開発が行われ、ひとつの小さな町が完成した。
そう……
ダンが静かに隠れ住んでいた場所に、新たな町が造られたのだ。
元々、この土地はアイディール王国宰相フィリップの直轄地であった。
妹のベアトリスが、ダンと結婚すると共に、兄フィリップから『お祝い』として贈られたのである。
そしてこの土地の北方は、リョースアールヴの国イエーラとも国境を接しており……
その付近の土地も、イエーラからダンへ譲られた。
こちらはソウェルの血筋を継ぐアスピヴァーラ家令嬢ヴィリヤがダンに嫁いだのを機に、持参金代わりとして譲られたものである。
結果、小国規模の領地を得たダンは誉れ高い『救世の勇者』として、アイディール王国、イエーラ両国から伯爵位も得た。
特別な地位を持つ貴族として、愛する家族及び大切な仲間と共に新生活を始める事となったのだ。
魔物など外敵を防ぐ為……
高い魔法石壁に囲まれたこの町は、ダンの姓から『シリウス』と名付けられた。
また、ダンと家族が住まう為の城館も築かれた。
そして……
ダンから更に請われた者達、慕った者達も大勢、移住したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
シリウスの町が完成して、数か月後の事……
ここは救世の勇者ダン・シリウスと家族達の住まう城館の中庭。
腕の良い庭師達によって、丁寧に念入りに造られた美しい庭園がある。
2匹の逞しい犬が見守る中……
一面に植えられた緑濃く深い芝生の上で、ひとりの美しい少女がゆっくり、ゆっくりと慎重に歩いていた。
茶色の髪を、後ろで束ねた年配の女性に、優しく手を引かれながら……
少女は……ダンの妻となった王女ベアトリス。
そして、手を引く女性はベアトリス付き侍女頭だったパトリシアである。
パトリシアは、ベアトリスがダンへ嫁ぐと聞き……
「自分も絶対について行きます!」と熱望。
王宮勤めをあっさり辞し、シリウスへと移住したのである。
ちなみにふたりを見守る2匹の犬は、城館の守り手でもある。
実は……
魔獣ケルベロスと同オルトロスの擬態した姿であった。
そして、離れた物置小屋の屋根には……
我関せずという趣きで、一匹の黒猫が昼寝をしていた。
自由気ままに生きる、妖精猫のトムである。
しばし歩いてから、ベアトリスは立ち止まり、空を見上げた。
今日は快晴。
雲ひとつない澄んだ青い大空が、一面に広がっていた。
「ねぇ、パトリシア」
「はい、ベアトリス様、いかが致しました?」
「ええっとね、旦那様と皆は、今頃どうしているのかしら? 私と同じ青い空を見ているのかしら?」
「はい、ダン様はきっとご覧になっておられます。ベアトリス様と同じこの空を」
「ふふ、絶対にそうよね」
そして……
ベアトリスは切ない眼差しをパトリシアへ向ける。
「私ったら、とても寂しがりやなの。ほんの少し旦那様と一緒に居ないだけで……すぐに会いたくなってしまうのよ。早くシリウスへ帰って来て欲しいわ」
「ご安心を! ダン様達は、難儀する者達を助けたら、すぐにお戻りになりますよ」
「分かったわ。旦那様が不在の時、お帰りになるまで、リストマッティ殿と一緒に、シリウスはこの私がしっかり守ります!」
「はい! ベアトリス様の仰る通りです」
ベアトリスの言う通り、リストマッティと配下達はこの城館に通い、ダン達と共同でシリウスの町を管理していた。
ベアトリスとリストマッティが初めて会った時……
ふたりは言葉に言い表せない、不思議な気持ちとなった。
妙に親近感を覚えるのだ……
お互い、アイディール王家の血を引いている為かもしれない。
閑話休題。
ここで……
誰もが不思議に思うだろう。
創世神の巫女になるのと引き換えに……
視力と身体の自由を失ったベアトリスが……
何故動けて、歩く練習までしているのか?
どうして?
閉ざされたはずの美しい瞳で、青い空を見る事が出来るのかと。
実は……
『奇跡』が起こったのである。
今迄は何度発動しても、全く効果がなかったのに……
再び試みたダンの『治癒魔法』により、ベアトリスの身体機能が奇跡的に回復したのだ。
これもダンが持つ、救世の勇者の力なのだろうか……
さすがに手品のような急激な回復こそしなかったが……
ダンが愛情をこめた地道な治療が功を奏し……
まずベアトリスの『視力』が完全に回復した。
その時、シリウスの城館中には轟くような歓喜の声が満ちたのである。
ベアトリスの兄ふたり、王リュシアンと宰相フィリップも朗報を聞いて大いに喜び、祝いの品を大量に送りつけたほどであった。
それからも……
ダンの治癒魔法の効果は表れ、まだ誰かの補助が必要ではあるが……
今やベアトリスは、中庭を元気に歩けるほど回復した。
ちなみに……
パトリシアの持病である腰痛も、ダンの治癒魔法により常に万全以上の状態。
却って、以前よりパワーアップしており……
主ベアトリスを支えたり、抱きかかえても、何の支障もない。
当初、パトリシアはベアトリスの結婚を危惧した。
その原因とは、ダンの人柄ではない。
パトリシアの腰痛治療の件で、彼女はダンの誠実さを認識していたから。
問題は、ダンには他に3人もの妻が居る事だった。
つまり、ベアトリスへの扱いがぞんざいになると、パトリシアはたいそう心配したのだ。
しかしそんな懸念は杞憂に過ぎなかった。
救世の任務を果たす為、ダンは不在がちなのだが……
城館に居る時は必ずベアトリスを慈しみ、リハビリも共に行ってくれる。
そして他の妻達もベアトリスに対し、実の姉妹のように優しく接してくれた。
ダン同様リハビリにも、こまめに付き合ってくれるのだ。
こうして……
薄幸だった最愛の主は大きな幸せをつかんだ。
日々、著しく回復する主……
そんな主を助ける自分……
パトリシアもこれ以上ない生き甲斐を持って、張りのある人生を送る事が出来る。
こんなに……
幸せな事はない。
「ベアトリス様、改めて申し上げます。本当におめでとうございます。実に素晴らしい方と巡り会いましたね」
パトリシアが尋ねると、ベアトリスは満足そうな嬉々とした表情で頷く。
「ええ! ダンは素敵よ! とても優しいし、可愛がってくれるし、頼もしいし……私には最高の旦那様よ」
と、その時。
「ベアトリス様ぁ! パトリシア様ぁ!」
ふたりを呼ぶ声が中庭に響いた。
改めてダンの従士となったアルバートとフィービーの夫妻である。
元騎士の夫妻は、同じくダンの領地となった隣接するラーク村から、移住。
主に城館と町内の警備等を務めている。
多分、ベアトリスのリハビリを手伝いに来たのであろう。
ベアトリスとパトリシアは、顔を見合わせ、にっこりと笑ったのである。
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