在り来たりな恋
陛下視点です。
俺が彼女、リズベル=マグリールに出会ったのは俺の26の誕生パーティーだった。
当時18だった彼女は侯爵家の娘ということもあり、自分の瞳と同じ色のアクアマリンの色をしたドレス着てパーティーに参加していた。
俺は周りの女に言い寄られて飽き飽きしていたが彼女の凛とした佇まいと雰囲気に不思議と惹かれた。
ドクンドクン
「?」
顔に熱が集まる。胸に手を当てるといつもより鼓動が速い。
* * *
翌日、従姉弟で幼馴染でもあるエレアノール=アランデルに相談をしてみた。
「なぁエリー。栗色の髪とアクアマリン色をした瞳を持っている女性を知っているか?」
「栗色の髪とアクアマリン色の瞳?あぁ、マグリール侯爵家のリズベル嬢ね。貴族の中では栗色の髪というのは珍しいからすぐ分かるわ。それがどうかしたの?」
「それが…彼女を見ると心臓の鼓動が速くなるし、顔が熱くなる…俺は病気か何かになってしまったんだろうか…」
「あっはっはははははははは‼︎‼︎‼︎」
周りに人がいないとはいえ、仮にも公爵令嬢がこんなに豪快に笑うのはどうかと思うぞ。
「…貴様なぜそんなに笑う。俺は真面目な話をしているのだぞ」
「しっ失礼しましたわ…しかし、あなたにも春がくるとは思いませんでしたわね」
笑いを堪えながらはなすエレアノールはなんと腹立たしいことか。だが今気になるところはそこではない。
「春?」
「えぇ、春です。女は煩わしいと言って妃を娶ろうともしないあなたにもついに春が来たんですね」
「今は春などどうでも良い。この症状はなんだと聞いている」
「ですから、陛下は彼女に恋をしたんですわ」
恋…?俺が?
改めてその気持ちを認識すると、腑に落ちる。それと同時に他の男には取られたくないという気持ちもこみ上げてくる。
「エリー、リズベル嬢に結婚を申し込むことにする」
「決断速いですわねー。まあこれで、妃を娶れと煩いジジイどもも黙らせることができますわね」
* * *
そして、マグリール家には手を回し無事リズベル嬢…リズを妃として迎え入れることができた。
だが、結婚した夜は緊張して気分を紛らわそうと酒を飲んだのがいけなかった。
いくら飲んでも緊張は和らげず、いつの間にか寝てしまった。
* * *
しまった、飲みすぎた。頭がガンガンする。
初夜だというのに彼女の元にも行けなかった。
俺は何をやっているんだ…
彼女には後で謝らなければ…でも彼女と話をすると心臓を握り潰される感覚に陥る。
* * *
結婚したのはいいが、ずるずるずるずると彼女との関係を曖昧にしていたら二年の月日が流れていた。
その日は視察で、彼女と王都の郊外へと赴いていた。
のどかな風景を見て、王位を譲ったらリズとここに別荘を建てて暮らすのも悪くはないなと未来に思いを馳せる。
長時間の馬車での移動に疲れたので、一度馬車を降りて休憩をとることにした。
その時、黒いローブを纏った者達に襲われた。
だが、付きの騎士達が相手になりなんなく片付けた…かのように思えた。
襲撃者達を倒し終わり、生き残りを捕縛していた時に事は起こった。
死んだと思っていた者が最後の力を振り絞り俺を刺そうとした。
その事に気づかなかった俺は、隣にいたリズに突き飛ばされた。
俺が視線を向けた先には胸から剣を生やしながら紅い紅い血を流している彼女。
頭が現実を受け入れることを拒否している。
だってこんな結末望んではいない。
俺はリズと幸せに歩みたかっただけなのに。
そんなことを考えるのは一瞬で。
俺は倒れる彼女のもとへと走り、抱きとめた。
俺は叫ぶ。
「リズ!リズ‼︎お願いだ!死なないでくれ‼︎
まだ君に愛してると言っていないのに‼︎愛してるんだ‼︎…俺を置いていかないでくれ…!」
彼女の口や胸から紅い血がたくさん流れている。
こんな状況なのに、彼女の血はとても鮮やかで美しいと思うのはなぜだろうか。
必死に止血をする。頭のどこかではもう手遅れだと分かっているのに。
彼女の宝石のように美しい瞳から徐々に光が失われていく。アクアマリン色が見えなくなる。
「嫌だ‼︎目を開けてくれ‼︎リズ‼︎リズ‼︎‼︎
…あああああああぁぁぁぁああああああああああああああああ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
最期に、彼女が笑った気がした。
やっちまった感満載です(´・ω・`)
高速で書いたものなので、誤字脱字ありましたら教えて頂けると嬉しいです。