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チャーシュー

作者: 可零 蹴

 今日会社の近くにオープンしたラーメン屋に突撃した。突撃と言っても本当に突撃したわけではない。当たり前か……


 会社帰り会社にいつもインキを納品に来る、インキ会社の鳴門というメタボと印刷機械を一緒に回している森本と梅田という同僚と一緒に新装の豚骨ラーメン屋の前に立っていた。

「さぁ行くか、当たりハズレは店の外でな」

「おう!」

 なんでこんな気合いが入っているのかわからんが、戸を開けて店内に入ると左手に厨房とその厨房をぐるっと囲むように八つののカウンター席が設けられている。至ってシンプルかつどこにでもありそうな少し狭めのラーメン店だ。

 カウンター一番奥の席はもうすでに三人のOLさんがいたので、手前から順番に四人座った。一席空けてOLさんのグループがいる、聞きたくなくても俺たちの話もOLさんの話も聞こえてくる。

 四人でアホな話をしながらラーメンすする。ひょいと隣に座った鳴門のラーメンを見ると、チャーシューを残しながら器用にラーメンをすすっている。何しとんじゃこいつはと思いそのチャーシューに箸をのばす。

「チャーシューもらうぞ」

 慌ててラーメン鉢を隠す鳴門、そしてなぜチャーシューが残しているか叫んだ。

「やめてください。僕の最後のお楽しみなんですよ」

 そんなつまらん理由を叫ばんでも。そんな叫び声にも負けず、笑いの為に心を鬼にして俺は箸をのばした。

「この子やろ、お前がハムにされそうになった時助けてくれのは」

 ラーメン鉢をかばいながら鳴門は本気で嫌がりながら叫んだ。

「それ誰なんですか、僕は人間です」

 その瞬間一席あけたOLさんが、せきこんだのが聞こえた。俺のボケに反応したのかそれとも鳴門のツッコミなのかわからないが、だとしたらこのOLさんの笑いのスイッチは鳴門のメタボネタか。

「大丈夫どうしたん」

 お友達が心配しているが、こっちはそれどころではない。鳴門をこれ以上の体重増加をふせがなきゃならないのだ。

「お前は命の恩人を食えるのか」

 箸をラーメン鉢にのばすが鳴門のメタボの体が邪魔だ。不健康の代名詞、自分にやさしい奴がなる病気メタボの体をこんな活用方があるとは・・・まぁこんな使い方しかないが。

「そうやん鳴門さん命の恩人を食べるなんてそりゃあんまりやで」

 と言いつつ反対側から森本が箸をのばすが体でブロックする鳴門。

「ちょっと待ってください。なんでそんな本気なんですか」

 本気なんかじゃない。ただおもしろいからチャーシューに箸をのばしているだけだ。なぜか頭に黒のバンダナを巻いたラーメン屋の大将も笑っている。

「しゃーないな、メタボ阻止はやめといたるわ」

 一応にみんな食べ終わり、カウンターの上のメニューを見ると笑いをとる流れ的にいい物があった。横目でちょっと吹き出したOLさんを見るとスープをどんぶりを持ち上げチビチビ飲んでいた。これはチャンスか、OLさんにはアンラッキーだが、

「へぇ良いものあるね、持ち帰るか大将」

「へいなんでしょう」

 心地よい返事だ。客商売はこうでなければといういい見本だ。

「大将持ち帰りの鳴門の詰め合わせ一つお願いします」

「なんで僕なんですか」

 鳴門のツッコミに隣のOLさんの動きがどんぶりを持ち上げたままビタっと動きが止まった。これはもう一押しかと思ったら大将の冴えたアドリブが入った。

「へいチャーシューの詰め合わせ一丁」

 ナイス大将、隣のOLさんはどんぶりを持ち上げたままプルプル震えている。まだ耐えるのかこのOLさんと思ったら鳴門の嘆きにも似たツッコミがOLさんを奈落に落とした。

「なんでわかるんですか」

 その瞬間ブッと吹き出す音が聞こえた。

 鳴門の突っ込みで逝ったか……

「どうしたん大丈夫」

 友達の心配する声をよそにトイレに駆け込む。しばらくするとトイレから出てきた、さすがだ化粧もしっかり直してくるとは。でも明らかに殺気をはらんだ視線は俺にむいている。明日鼻をかんだら、ネギとモヤシが出てくることだろう。

 結構美人のOLさん・・・


 悪気はなかったんだよ。


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