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ルナ ~銀の月明かりの下で~  作者: あかつき翔
3章 内なる闇、秘められた過去
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変わらない一同

「……ふう」


 何か、いろんな意味で慌ただしかったね、今日は。まあ、もう慣れてきたけど。


「大丈夫か、瑠奈」


「平気だよ。確かにちょっと忙しかったけど、このぐらいへっちゃらだって」


「そうか。それなら良いが、疲れた時は無理をするなよ。俺に言ってくれれば、できる限りサポートする」


「あはは、ありがと。……でもね。ガル。心配してくれるのは嬉しいんだけど、あまり過保護にならなくても大丈夫だよ。私だってそこまで子供じゃないし」


「……む」


 小さく唸る。どうやら、自覚はあるみたいだ。


「今朝のアトラのこともそうだけど、そこまで気を回さなくてもいいんだよ? ある程度は、自分でどうにかするからさ」


「……済まない。騒いでしまって、迷惑だったか?」


「あ、いや、別に怒ってる訳じゃないんだよ? ガルにはすごく感謝してるしね」


 目を伏せ、しゅんとしてしまったガルに、私は慌ててフォローに入る。相変わらず、こういうとこは子犬みたいだ。


「ただ、私のことで二人が喧嘩とかしてるのは、ちょっと申し訳ないなってね」


「それは……済まない」


 いや、私に謝る必要は無いけどさ。


「別にアトラが嫌いなわけじゃないんだ。あいつが信頼出来る奴なのは知っているつもりだからな。ただ、その……」


「…………?」


 語尾を濁したガルに、私は首を傾げる。ガルは私の反応を見守ってから、ちょっと寂しげに笑った。


「とりあえず、部屋に戻るか」


「……うん、そうだね?」


 何だか微妙な話題な気がしたので、私はそれ以上突っ込まないことにした。

 コウと一緒に3人で居間に戻ると、カイとレンがのんびりくつろいでた。


「お疲れ、みんな」


「今日はけっこう賑わってたな?」


「ああ。夜は任せたぞ、二人とも」


 ちなみに、カイはキッチンの方が多くて、レンはどっちも同じくらいだ。

 カイはああ見えて家事の手伝いとか昔からしてたし、レンは何でもそつなくこなすからね。


「さ! 仕事も終わったし、オレは遊びに行くとすっか! ルナとガルも、ヒマなら一緒に出ねえか?」


「……ちょっと待って、コウ。先生から出された課題、終わったの?」


「課題?」


「うん。宿題の提出、今日だったでしょ?」


「あ、やべ」


 自由時間に浮かれていたコウが一瞬で真顔になる。どうやら、完全に忘れていたみたいだ。


 私たちのギルド入りは、形式上は研修だ。つまり、全部終わった時には、また学校に戻る。その時のために、私たちも最低限の勉強はしておかないといけない。

 そんなこんなで、上村先生とガルが、私たちの勉強を見てくれている。こうやって課題を出したり、時間があれば授業してくれたりね。


 だけど、勉強嫌いのコウにとっては、そんなものは当然二の次になるわけで……。


「ま、いいや。今日ぐらいはごまかせるだろ!」


「浩輝、お前な……」


 呆れ顔のガルが、そのまま逃げようとしたコウを引き留めた。普段は友達感覚でみんなと接しているガルだけど、勉強が絡むと教師の顔に戻るんだよね。


「お前はそれだから成績が落ちていくんだ。この前のテスト、何点だったか忘れたのか?」


「頼む、見逃してくれよガル。課題は帰って来てからやるからさ!」


「いや、しかしだな……」


「お願いだって! 上村先生にバレなきゃ良いんだから!」


「そういう問題では……あ」


「それなら、どちらにしても失敗だ」


「どちらにしても……って、あがぁッ!?」


 コウが気付いた時には時既に遅し、彼の頭に鉄槌が下っていた。それを叩き付けたのが誰かは、言うまでもない。


「い、痛ってえぇ……せ、先生、いつの間に!?」


「たった今、部屋から出てきた」


 コウの後ろでは、上村先生がものすごく不機嫌な顔で仁王立ちしていた。


「い、いきなり拳骨は酷くないっすか……?」


「なに。優樹から『勉強しなければ8割殺しまでやっていい』と言われているから、拳骨など優しいものだ」


「それ瀕死じゃないすか!? あんのクソ親父いいいぃ!!」


 ……とりあえず、自分が勉強すれば問題ないって発想は無いらしい。


「それよりも、橘。オレにバレなきゃいい、か」


「あ、それは、あの……え~っと……」


 先程の問題発言を追及され、コウはあからさまに視線を泳がせてる。


「舐められたものだな。これも、オレが最近丸くなりすぎたせいか?」


「いや、十分とんがってるかと……」


「やかましい」


「……すんませんでした」


 コウ。ツッコミは入れる相手と状況を考えようね……。


「よし。ならば、今日は特別にマンツーマンで勉強を教えてやろう。今からオレの部屋に来い」


「は!? どうしてそんなことに……」


「……8割殺しで止めるつもりだが、手元が狂えば10割になる可能性も」


「いやあ特別授業楽しみだなあ!」


 先生が言い終わるより早く、コウは全力ダッシュで二階に上がって行った。


「ふう。お前たちも、あいつの勉強、暇な時にでも世話してやってくれ」


「あはは……はい」


「ったく、あの馬鹿は」


 ギルドでの4ヶ月、色々と勉強してきたつもりだけど……私たちのやり取りは、本当に変わらないなあ、なんて。


 まあ、そういう寸劇はともかく。一騒動終わったので、私とガルはそのまま部屋に戻っていった。






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