悪夢の中で
真夜中、ギルドの一室。
「……う、うう……」
もう嫌だ……もう、止めてくれ。
(お前が奴らを呼んだに違いない! お前のせいで!)
「……ち、違う。俺は……」
俺のせいじゃない。俺は、何もしていないのに。
(消えろ。もうここには来るな、気味が悪い!)
(怖いよ……こっちに来ないで!)
「止めて、くれ……どうして……!」
何でだよ……? 何で、みんな、俺を避けるんだ……俺はただ……みんなを……。
(あっちに行け、バケモノ!)
(殺してやる。お前なんか、死んでしまえ!)
石を投げられた。殴られた。蹴られた。何度も、何度も、何度も。
嫌だ……もう許してくれ。俺は……俺は……。
(止めろ……来るな! みんなに近寄るな……この、悪魔がああぁ!!)
ちがう。ちがう、んだ。しんじて、くれ。
おれは、おれは、ただ――
「……はッ!!」
俺は悲鳴のように叫ぶと、ベッドから飛び起きる。……ベッド?
「はあッ、はあッ……はあっ……?」
呼吸が酷く荒れていた。全身が汗だくで気持ち悪い。俺はしばらく、呼吸を整えるしかできなかった。
辺りを見渡してみる。見慣れた部屋。見慣れた家具。どう見ても、俺の部屋だ。そこまで経って、ようやく思考が回ってきた。
「……夢、か……」
思わず、長い溜め息をついた。窓から入ってくる風が、汗に濡れた身体を冷ます。
時間を確認すると、午前2時。少し、声が出ちまった気がするが……みんなに聞かれてはいないだろうか?
少し不安になったが、誰も部屋に来たりはしないし、大丈夫みたいだ。
――ふと、自分が泣いていたことに気付く。
「悪魔、か……」
そんなこと……今さら言われなくたって、分かってるよ。
何も違わない。あの時、俺が何もかも、壊したんだから。あれは全部、俺のせい。当然の報いだったんだ。
……それなのに、なんで涙が出るんだろうな。
「……はは」
俺は自分への嘲笑を漏らすと、風にあたるために、こっそり外へと抜け出していった。