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ルナ ~銀の月明かりの下で~  作者: あかつき翔
2章 動き始めた歯車
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血の繋がり

 みんなの怪我は、浩輝の能力に救われた部分もあり、入院が必要なほどに重くはなかった。そのため、その日のうちに全員の帰宅が許された。


 無論、傷は残されている。身体にも……そして、心にも。実際、帰宅が許されたのは、メンタル面のケアを優先したというのが大きい。みんなの傷が癒えるまでには……どれだけ時間がかかるだろうか?


 今回の出来事は、あまりにも巨大な爪痕を残した。彼らにも、この国そのものにも。



 そんな中、俺達は。






「……俺も行くぜ」


 帰り道の車内でずっと黙っていた暁斗が、家に着いた途端に発した言葉はそれだった。流石に予想外だった為に、俺と瑠奈は揃って慌てる。


「暁斗、何を!?」


「バストールに行くんだろ? なら、俺も行く」


 ……まさか、彼も盗み聞きしていたのか?


「お前達は、全く。誰に似たんだか」


「たぶん父さんだろ。で? 俺を説得するとか言っていたよな? 残れって? 俺だけ? ……冗談じゃない!」


 暁斗は皮肉めいた口調でそう言うと、俺と瑠奈を睨みつける。


「瑠奈が行くのはいいのに、俺には駄目だなんて言うのか? 何でだ? 何か理由があるのか? ……違うだろ? 俺の意志を確かめる前から、置いていく前提で話を進めるのは酷いんじゃないのか?」


 ほとんど脅迫のような勢いで、暁斗は俺へと迫る。瑠奈が絡んでいるからでもあるだろう、普段の明るく気さくな雰囲気がない。


「俺だって戦えるのは知っているだろ? 足手まといにはならない。危険なのも分かっているし、覚悟だってしている。だから連れて行ってくれよ、ガル!」


「お兄ちゃん、落ち着いて……!」


「落ち着いていられるかよ! お前はいつもそうだ、一人で何でも抱え込んで! もしも黙って行かれていたら、後で俺がどんな気持ちになってたと思っているんだ!?」


 暁斗が声を荒くして、瑠奈が少しだけ怯む。妹に怒鳴る姿など初めて見たが、それだけ必死ということだ。……今の言い種は少し気になったが、このような状態では返答もままならない。


「……お前は俺にとって、大事な兄貴分だった。俺だってお前を信じてるし、力になりたいって思っている! 俺だけ安全な場所に残ってお前を送り出すなんてしたら、俺は絶対に後悔する。そんなのは嫌なんだよ! もう、後から悔しがるだけしかできないのは御免なんだよ!!」


「暁斗……お前」


「そこに大事な妹まで行くってなったら、なおさらだ。俺は、護らなきゃいけない。瑠奈を護らなきゃいけないんだ! 俺の命に代えても、妹のために戦いたいんだよ!」


「…………!」


 勢いにまかせてぶちまけた暁斗は、言いたいことを全て吐き出したのか、次はどこか期待するような視線を俺に向けてきた。……確かに、彼の覚悟は本物なのだろう。それは十二分に伝わってきたし、その気持ちが嬉しくもある。途中までは、その意志を尊重すべきかと俺も悩んだ……だが。


「やはり、お前は残るんだ、暁斗」


「……!……なんだよ。何で、俺は駄目なんだ!? 俺だって、力になりたくて!」


「お前が、命に代えてもと言ったからだ」


 え、と呆けたような声を漏らす暁斗。……それは、俺が初めてこの家に来た日に言った言葉に似ている。今ならば、慎吾の気持ちが分かる。


「瑠奈は言った。死ぬつもりなんてない、と。だからこそ俺は認めたんだ。……俺は、お前達を死なせるつもりなどない。死を覚悟する心意気は、戦士としては褒められるものかもしれないが……はっきりと言うぞ。今のお前は瑠奈よりも強いかもしれないが、危うい」


 ましてや、今日まさに死の恐怖を味わったばかりの彼が。……思えば、彼はあの時、瑠奈が叩き潰されそうになった寸前にも、「やるなら俺を」と言った。ミノタウロスに真っ先に突っ込んだのも彼だ。死の恐怖に身体を硬直させる姿を見せておきながら、瑠奈が関われば、それよりも瑠奈を優先した。彼女のためならば、本当に命を捨ててしまう危うさが彼にはあった。


「少なくとも、頭が冷えていない今のお前の覚悟を受け入れるわけにはいかない。お前は少し、瑠奈から離れ、自分という存在を見つめた方がいいのではないか? お前が傷付けば、友人も瑠奈も、両親もどれだけ苦しむか……分かるだろう?」


 暁斗の表情が、ひどく歪んだ。寺島と北村の一件で、暁斗はそれを身をもって体験している。ましてや、両親の目の前で、自分の命に代えてもなどと吐いたこいつを連れて行く気には、どうしてもなれない。



 少しだけ間を置いて、暁斗がぽつりと吐いた。


「だったらなおさらだ。俺が傷付く以上に、瑠奈が傷付けば父さん達は苦しむ。……だって俺は、瑠奈とは違うから。俺がどうなっても、瑠奈が生きていられるなら、俺は何だってする」


「え……?」


「そうだろう? だって、本当の意味で綾瀬の血を引いているのは、お前だけなんだからな、瑠奈」


「…………!」


 瑠奈がまるで刺されたような表情をする。楓と慎吾の瞳も、僅かに揺らいだ。だが、何よりも痛々しいのは、言葉を発した本人の表情だった。


「暁斗、どういう事だ?」


「そういや、お前にはちゃんと説明してなかったな。俺とみんなの種族が違う理由」


 暁斗は自嘲気味に笑った。どこか自暴自棄になっているような空気を感じながらも、まずは彼の話を聞いた方がよさそうだ。


「俺は父さんの血を引いていない。俺の本当の父さんは……死んじまったんだよ」


「何……?」


 確かに、狼人種である以上、連れ子でもないと説明はつかないのは分かっていたが。別れたのではなく、亡くした、のか。


「母さんは、最初は俺の本当の父さんと結婚した。父さんは、俺と同じ……黒い毛並みに金髪の狼人種だったらしいぜ」


「………………」


「そして、母さんは俺を身ごもった。けど……俺が生まれる前に、本当の父さんは事故に遭っちまって、そのまま、らしい」


 そんな事が……ならば彼も、実の父親の顔すら知らないのか。


「母さんは、一人で俺を育てる羽目になった。そんな時、母さんを支えてたのが、二人の友人だった、父さんだ」


 そして、二人はいつしか一緒になった。それは、自然な事だろう。


「ああ、勘違いするな。俺は父さんに対して、愛情に偽りを感じた事は無い。……だけど、さ。だからこそ、種族が違う事が、辛かったし、苦しかった。何度となく、自分のこの身体を、みんなと似ても似つかない獣人の身体を憎く思った」


 その言葉が、どれだけ周りを……自分を傷付けるか理解した上で、暁斗は言葉を紡ぐのを止めない。少しずつ、声に熱と震えがこもる。


「瑠奈があの時、暴走した理由もな……知ってた」


 暁斗の悪口を言っていた、と言うことをか。だから、先ほどはあんな言い方を。


「実際、俺がそういう事を言われた事は、何回もあるよ。その度に、種族の違いの大きさを自覚するしかなかった」


「それでも、あなたは私のお兄ちゃんだよ! 私達には、きちんとした血の繋がりがあるじゃない!」


「……そうかもしれない。でも、人は外見を見るんだよ。俺とお前の種族は違う、それは変えようもない。俺は、人間にはなれないんだ」


「そんなの……!」


「人間だったなら、もう少し楽だったんだろうな。俺は鏡を見る度に、自分は人間じゃないんだって、違う生き物なんだって……そう実感するしかなかった。自分の血の繋がりが中途半端なんだって……意識しないといけなかった!」


 暁斗の声は、いよいよ泣き出しそうなものになっていた。

 ……きっと、彼はずっと抱え込んで来たのだ、この思いを。瑠奈を兄として愛しているからこそ、慎吾や楓を両親として慕っているからこそ、自分の姿が違うと言う事実が、常に彼を苦しめていたんだ。


「だから、俺がどうなってでも、お前を護りたいんだ、瑠奈。俺の大好きな二人にとって、本当に大切な子供の、お前を……」


「お兄ちゃんの、バカ……! そんな……そんなこと、誰が……」


「ごめんな、瑠奈。だけど俺には……それしか、価値がない。だから……」


「暁斗」


 暁斗の言葉を遮って、慎吾が静かに立ち上がり、彼の前へと近付いていく。その表情は、ただひたすらに険しかった。


「と、父さ……ん」


 暁斗も慎吾のただならぬ雰囲気を感じたようだ。怯えたように、尻尾が丸くなる。


「今まで、ずっとそんな事を考えていたのか。俺と血が繋がっていないから……そうやって、お前と俺の繋がりが偽りかのように考えていたのか」


「お、俺は……」


「価値がない? 瑠奈を護る兄としての自分にしか、か? 誰がいつ、そのようなことを言った。俺と楓の息子としてのお前に価値がないなどと……お前自身が、そのように考えていたのか?」


「……だって。俺は、ずっと……」


「俺と楓にとって、本当に大切な子供の瑠奈のため、か。ならば、お前を大切に思っていないと、そう思われていたのか? 自分は下に見られていると……そのようなことを、お前は」


「………………」


 暁斗が言葉を紡げずにいると、静かに慎吾の手が動いた。


「…………!」


 殴られると思ったのか、暁斗は目を閉じて衝撃に備える。俺も止めに入ろうとしたが、楓に視線で止められた。


 ……大丈夫だ、と。






「……すまなかった」




 慎吾の腕は……暁斗を、優しく抱き締めていた。




「……と……う、さ……ん?」


 慎吾は片手で、言葉を失った暁斗の髪を静かに撫でる。


「俺は、お前をずっと苦しめていたんだな。お前が息子であることが当たり前すぎて……お前の悩みに、気付けなかった」


「…………!!」


「俺は、血の繋がりなど大した問題ではないと考えてしまっていたんだ。俺のお前に対する気持ちに、そんなものは一切の関係がないと。……だから、何も言わなかった。面と向かって言うことでもないと考えていたからな」


 ……俺は今日まで、慎吾のことを完璧な人だと思っていた。だが、彼はただ、人よりも賢いだけで、全知全能などではない。彼だってきっと、手探りで子供達と接していた部分はあるはずだ。

 その証拠に、こうして自分の失敗を悟った慎吾の表情は、ひたすらに悲しそうで、悔しそうで……優しくて。


「分かっていたはずなのにな。言葉にしなければ、通じないこともあると。俺は、お前に甘えてしまっていた。息子だから通じるだろうという、根拠のない理由でな。……許してくれ、暁斗。俺は、最低の父だった」


「あ……うあ……」


 抱擁する腕に、力がこもる。


「お前は俺の子供だよ、暁斗。誰が何と言おうと……絶対に」


「そうよ、暁斗。……ごめんなさい。私こそ、あなたの気持ちを考えてあげるべきだったのに。あなたは強いお兄ちゃんだものね。ずっと……我慢していたのね」


「……うぅっ……!」


 暁斗が堪えきれず、嗚咽を漏らした。彼が今まで押さえ込んできたものが、瞳から溢れている。


「お前の居場所はこの家だ。ここがお前の……綾瀬の家なんだからな」


「あなたも瑠奈も……私達の、かけがえのない子供よ」


「……うっ、うあぁ……!」


 流れ出る雫は、勢いを増していく。慎吾と楓の言葉……その一つ一つが、彼の心の堰を砕いていく。


「胸を張って言っていいんだ。俺の息子である事をな」


「……あぁっ、……うわああああぁ!!」


 暁斗はただ、慎吾の腕の中で泣き叫ぶ。楓も瑠奈も集まり、家族みんなが彼を包み込む。これまでの悲しみを吐き出すように……彼の涙は、いつまでも止まらなかった。












「………………」


 しばらくして、落ち着きを取り戻した暁斗は、静かに慎吾から離れた。


「もう大丈夫か?」


「うん。ごめん、父さん、母さん……」


 その一言に込められた思い。その深さは計り知れない。


「瑠奈も……これじゃ兄貴失格だな」


「そんな事ない。暁斗は、私の自慢のお兄ちゃんだよ」


 瑠奈が微笑むと、暁斗はバツが悪そうに視線を逸らした。彼女も少し泣いていたため、お互いに目が赤い。


「今そういう事言うなって……情緒不安定なんだから、また泣きそうになる」


「いいじゃない。泣きたい時には泣いちゃって」


「……カイみたいな事言うなよ」


 暁斗は苦笑いしつつ、視線を俺へと移した。


「ガル……その、俺は」


「……今はここに残れ。繰り返すが、お前は少し、お前自身を見つめ直したほうがいい。そうして、お前が本当の意味で覚悟できたのならば、その時に来てくれればいいさ。それまでは……俺が必ず、お前の妹を護り抜いてみせる」


「……ははっ」


 暁斗は一度顔を伏せると、明るい笑みを作ってみせた。


「俺の大切な妹なんだ……傷付けたら承知しないぞ? もちろん、大切な兄貴のお前が傷付く事も許さないけどな。なーに、そんなに待たせないって。頼れるお兄ちゃんが行くまで、怪我がないように注意しろよ!」


 まるで近所に遊びに行く子供に向けたような言い種に、俺は小さな笑いを漏らした。


「ああ、約束するよ。二人とも元気な状態で、お前が来るのを待っておこう」


「……それと、健全な付き合いをする事も約束しとけ」


「!?」


 その指摘に、顔が一瞬で熱くなった。……昨日から数えて何回目だろうか。


「け、健全な付き合いって……」


「いくら激鈍なお前でも、意味は分かるだろ?」


「もう……暁斗のバカ。私達はそんな関係じゃないって! ねえ、ガル?」


「……あ、ああ」


 何だろう。少しだけ寂しいと言うか、残念と言うか……いや、何を考えているんだ、俺は。そんな俺の気持ちに気付いてはいるのか、暁斗は苦笑している。


「ま、俺はお前らを信じているけどな。約束通り、二人とも無事にいてくれるってさ」


「……そうか」


 この約束は、絶対に破る訳にはいかないな。何しろ、俺の大切な……弟の願いなんだから。


「暁斗、ありがとう」


「はは、信じてっから裏切るんじゃないぞ? ……いつ出発なんだ?」


「来週の飛行機の予約をしておいた」


 慎吾がそう答える。……しておいた、か。いつの間に。


「なら、今のうちから準備を始めといたらどうだ?」


「ああ、そのつもりだ」


 暁斗の説得を終わらせてから、早速準備を始める予定だった。俺はともかく、瑠奈は時間がかかるだろうからな。


「その前に、大事な事を忘れてない?」


 その時、楓が静かにそう言った。大事な事……だって?


「いったい何だよ、母さ……」



 ……その言葉の途中で、狙いすましたように暁斗の腹の虫が鳴った。



「晩御飯、まだでしょう?」


「う……そういや、そうだったな」


 恥ずかしさに明後日の方向を向く暁斗に、明るい笑いが一同に広がった。


 ……彼らは、本当に強い。昼間、あんな目に遭ったにもかかわらず……こうして笑いあえるのだから。きっとそれは、互いが互いを支えているからなのだろう。


「今日は期待していいわよ? 修君と慧君が奮発して、色々と高いものも買ってきてくれてるからね」


「お、マジで? 楽しみだな」


「高い食材、か……私もちょっと扱ってみたいかも」


「お前達の為に買ってくれたんだ。まだ怪我もあるんだから、今回はゆっくりしておけ」


「そう? うーん……ちょっと残念かも」


 何気ない平凡な会話は……傷付き疲れた俺達の心を、何よりも癒してくれた。





 ――みんな、済まない。



 俺はやはり、みんなの日常を、別のものに変えてしまった。俺という存在が、みんなの進む道を変えてしまった。いくら詫びても、その事はもう変えられはしない。


 だから……今、新たに誓おう。


 この道を、不幸な道にはしない……俺の全てを賭けて、彼女を護り抜く。必ず、生きて帰ってくる。


 いつかまた、こうやってみんなで笑いあう為に……。












「良かったの、暁斗?」


 ガルと瑠奈が準備のため部屋に戻った後。居間には俺と父さん、母さんが残っている。


「……本音言えば、良くはないかな」


 俺は溜め息混じりに答える。本当はやっぱりついて行きたい……けど。


「けど……ガルの言った通り、しばらく自分について考えたほうがいいかなって思ったんだ」


 俺は、自分の存在に自信が持てていない。ガルに言われた通り、それを今という機会に考えてみたほうがいいのかもしれないって、そう思った。


「それに……さっきも言ったけど、俺はガルと瑠奈を信じているからさ。あの二人なら、ちょっと俺が目を離したって大丈夫さ」


「……そうか」


 父さんも母さんも、ただ優しく笑ってくれる。……俺は、この二人が大好きだ。いつか、俺の中のわだかまりを全て捨て、心から二人の事を親だと呼びたい。


「まあ、二人きりなのは、心配じゃないって言ったら嘘になるけどさ……」


「二人きり? よく言う」


「…………え?」


 父さんの言葉に、俺はどきりとする。


「あの二人は本当に幸せよね。支え合える仲間が、沢山いるんですもの」


 ……まさか。


「最初っから……気付いてたのか?」


「ああ、あの二人以外、全員な。だから、お前が素直に諦めてくれたのは意外だったぞ。元々俺は、お前に行くと言われたら手伝ってやるつもりだったからな。くく、ガルフレアの方が試験が厳しかったな?」


 お、おいおい……。


「全く、それにしても悪知恵が働くものだ。お前達という奴らは」


「本当にね。昔の私達に似ちゃったみたいね、残念ながら」


「……あはは、筒抜けだったのかよ」


 俺は誤魔化すように笑ってみせる。全てバレているなら、隠しても無駄か。


「心配しなくても、俺は本当に残るよ。他は……知らないけどな」


「まあ、大方の予想はつくだろう。むしろ、予想通りでないと困るのさ。それも含め、全部準備してあるんだから」


「……我が親ながら、マジで恐ろしいわ、あんたら」


「あら、何で私も入ってるの? 私はごく普通の主婦じゃない」


「この人の行動を理解出来るってだけで、十分に超人的だっての……」


 そんな、当事者の二人にだけ秘密の会話と共に、俺達の運命を急激に動かしたその一日は終わった。









 ――次の日から、当然ながら国中が大騒ぎになった。


 テレビをつければあの事件の話。平和な国に起こった事件だけに、国民の混乱は凄まじいものだった。


 学校もしばらく休校だ。実は父さんの差し金でもある。おかげで、瑠奈達は準備に専念出来たようだけど。

 父さんも混乱を鎮めるために動いたらしいけど、流石に忙しそうだった……英雄、か。あんま実感湧かないのが本音だ。


 当事者である俺達は、自由に外を出歩けない事を除けば、何ら変わりない毎日を送った。……さすがに、数日間はよく眠れなかったけど。優樹おじさんがそれを見越して薬をくれていたので、少しずつだけど何とか立ち直っていけた。たぶん、他のみんなも同じなんだろうな。




 そして……長くて短い一週間が終わる。





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