再会と、別れと
俺たちは、マリクが去った後、慎吾たちと合流して、まずは傷の簡単な手当てを済ませた。優樹がいてくれたおかげで応急とは言えかなり楽になったが、やはり出血による衰弱はある。それでも俺は、ふらつく足を早めた。
上で転がっていた連中の中にも、死者はいなかった。激動の中、あいつらを守るように戦っていたらしい。マリクの命令で狙いが慎吾たちに集中していたのもあるようだが。
「俺たちはまず、この連中を縛り上げる。ガルフレア、君は先に、子供たちの元に行ってやってくれ」
……疑問は山ほどある。しかし、俺のことなど、今この瞬間はどうでも良かった。
この時、俺の心を占めていた想いは、一つだけ。早く、みんなに……君に――
「みんな!」
会場の前は、大騒ぎになっていた。大勢の人で溢れているにも関わらず、俺の目はすぐにみんなの姿を捉えた。
「……ガルフレア!!」
瑠奈が、こちらに駆けてくる。俺が俺である事を教えてくれた少女が。
彼女は、立ち止まる事なく、俺の胸に飛び込んできた。俺は体勢を崩さないように注意しながら、彼女を受け止める。
「無事で……無事で良かった、瑠奈」
「うん……ガルも」
瑠奈の瞳からは、とめどなく涙がこぼれ落ち、俺の胸元を濡らす。……こんなにも、泣いてくれるのか。
「大丈夫、だって、思おうと……してたけど。もう、会えなくなるかもって、不安で……」
「……怖かったな。でも、もう大丈夫だ。俺は、ここにいるから。慎吾たちだって、みんな無事だ」
俺と瑠奈は、存在を確かめあうように、互いを強く抱きしめる。彼女の暖かさが……俺の心を癒してくれる。
「……ただいま、瑠奈」
「……うん。おかえりなさい、ガルフレア……!」
そのまま、少しだけそうしていた。どれだけ経ったか、瑠奈が顔を上げ、涙をぬぐう。そうして、笑顔を見せてくれた。
「ごめんね、ガル。濡れちゃった」
「構わないさ。心配をかけて、すまなかった」
そうしている間に、他のみんなもやって来た。
「へへ、無事だって信じてたぜ、ガル。……ただ、いつまでもそうされてると、お兄ちゃんは非常に複雑な気分なんだが……」
「え? ……あ」
暁斗に指摘を受け、俺と瑠奈はあわてて離れた。恐らく、俺の顔も赤くなっているのだろう……体毛があるから、人間ほど目立たないのが幸いだ。
「ガル、親父たちは?」
「中で連中を縛り上げている。心配しなくても、全員が無事だ」
「そう、か……みんな無事、なんだな……」
「ああ……おれ達、全員が生きて帰ってこれたんだ……」
浩輝も、海翔も、蓮も、心から嬉しそうにしてくれた。……だが、海翔以外は、目が赤い。
「やべ……オレ、また泣きそう……」
「泣きたい時には泣いちまえよ。我慢する必要なんてねえだろ?」
「だから、何でお前はそんな平然としてるんだよ、カイ……」
……先ほどまで泣いていたようだな。当然か……あれほどの恐怖を味わったんだ。こうやって、落ち着いて会話出来るだけでも大したものだ。いや、努めて普段通りに振る舞おうとしているのかもしれない。
その後ろを見ると、さらにルッカと慧、修もこちらに向かってきていた。
「ありがとう、ルッカ。みんなが無事だったのは、お前のおかげだ。そして、お前も無事で良かった」
「僕にとっても、みんなは大事な友達ですからね。礼には及びませんよ。先生……いえ、今さらごまかすことでもありませんね。ガルフレアさんも、無事で何よりです」
「……ルッカ、俺は」
「野暮なことを言うのはもう少し後ですよ。今は僕にも、みんなが無事なことを喜ばせてください」
そう言って微笑んだルッカが、どこか寂しそうに見えたのは気のせいではないのだろう。ただ、彼が瑠奈たちを、そして俺を案じてくれていたのはきっと本当だ。だから俺は、静かに頷く。
他のふたりは、俺の前に立つと、揃って頭を下げてきた。慎吾たちによると、ふたりは観客の避難を優先していたそうだが、弟たちが傷ついたことに傷付いているだろう。
「ガルフレアさん、ありがとう。浩輝達を助けてくれて」
「蓮に聞いた。みんな、ガルさんがいなかったら、どうなっていたか分からなかったって」
「いや……それこそ礼には及ばない」
あの時の事を思い出すと、ぞくりとする。あと一歩遅ければ……そんな嫌な想像を断ち切るため、別の話題を持ちかける。
「そう言えば、瑠奈が助けた彼はどうした?」
「瑞輝さんなら、弟さんを探しにいきましたよ。無事を確認したいって」
「怪我の治療があるんで、終わったら合流するように言ってます」
「そうか。死者は出なかったんだな。良かった……」
あれほどの騒動で、みんなが生き延びれた事は……奇跡に近い。
もしもティグルが、最初からみんなに止めを刺そうとしていれば。もしもシグルド達がいなければ。もしも慎吾達が……少しでも状況が違っていたら、この中の誰かが死んでいたかもしれない。
「集まっているか」
「……お父さん、お母さん……!」
「…………っ!」
そこで、慎吾たちとシグルドが姿を見せた。子供達の視線も、そちらに向く。瑠奈と暁斗が両親に飛び付いたのを皮切りに、それぞれの親子が抱擁を交わしていく。……邪魔をするわけにはいかないな。
「ガルフレア、傷は問題ないか」
「ああ、心配するな。さすがに、血が足りないが……命に関わるほどではないさ」
正直に言えば、立っていると目眩がしてくる。その程度で済んでいるだけ、ましだとは思うが。とは言え、ゆっくりと休養する前に、確認すべきことはいくつも残っている。
「シグルド……ティグルは、結局どうなったんだ? 俺には、よく分かっていないんだが」
「俺もまだ連絡は受けていないが、大方の予想はつく。あいつが仕損じることなど、あり得ないだろう」
黒影、と呼んでいたな。そして、彼は蒼天、ルッカは金剛……俺は、銀月。つまり、同等の使い手だとは思うが――そんな思考をしていた時だった。
「それは買いかぶりと言うものだ。……おれにも、手元が狂うことはある」
突然、何も無い中空から声が聞こえてくる。かと思うと、その場所に一人の男が文字通りに現れた。
「それは知らなかったな。仕留め損なったのか?」
「心配するな、あの男は消した。同情の余地すらないからな」
そこに現れたのは、漆黒の豹人だ。……彼は……!
「フェリオさん! あなたもここに……」
「フェル!?」
ルッカの言葉を遮って、俺は思わず叫ぶ。間違いない。彼は、クロスフィール孤児院の、あのフェリオだ……!
「……ガルフレア」
豹人は無表情に俺を見据える。ルッカも驚愕の視線をこちらに向けた。
「ガルフレアさん……まさか、記憶が!?」
彼もフェリオも、俺が裏切ったものの一員なのだろう、ということは分かっている。だが、下手な嘘をつくよりは、素直に答えた方がいいと察した。
「全ては戻っていない。証明をすることはできないが……フェルを覚えているのは、孤児院の記憶があるからだ」
「………………」
「だが……俺が何らかの組織の一員で、それを裏切ったことは、思い出した」
「…………っ!」
ルッカが顔をしかめた。それを望んでいなかったかのように。
俺に残された最後の瞬間の記憶……俺はなぜ、シグ達を裏切ったのか。そして、俺が裏切ったものは何なのか。そこまでは分からなかった。
家族の中で話しているみんなから、少し距離を置く。俺には、ここではっきりとさせておかなければならないことがある。
「シグ、聞かせてくれ。俺はあの時、お前に救われ、空間転移で記憶を失った。間違いないか?」
「……ああ」
月光を手にした時に戻った記憶は、それだけだ。肝心な所が抜けている。
「俺が裏切ったもの……それは何なんだ? そして、俺はなぜ裏切ったんだ?」
「ガルフレアさん、それは……」
「それを知ってどうするつもりだ、ガルフレア」
「どうするべきかなど、知らずに判断できるものか。だが、このまま何も分からないままでは……俺は」
「分からないままで、何の問題がある」
俺の言葉を遮ったシグルドに、一同の視線が向いた。
「ガル、詮索するのは止めにしろ。お前はもう、自由になったんだ」
「……自由?」
「そうだ。お前は、優しすぎたんだ。……きっと、最初から向いていなかった。望まぬ使命に、縛られる意味はない」
「……シグルド、お前」
……俺は言った。もう殺したくない、と。俺は、何らかの使命のために、きっと多くの命を奪ってきた。それでは駄目だと思ったから、俺は逃げ出した。
「今日、出逢った時のお前の表情は、明るかった。孤児院にいた時と同じくらいに……ここ数年、見たことがない顔だった」
「………………」
「お前にとっては、忘れていたほうが幸せなんだ、ガル。いや、俺にとっても……みんなにとっても」
記憶が戻れば、俺は幸せではいられない……か。
「そうなのかもしれないな。だけど、それでは駄目なんだ」
俺ははっきりと首を横に振ってみせた。
「俺は、記憶を取り戻さなければならない。確かに、今は幸せだ。だが、俺が記憶を無くしても……俺の過去は消えないだろう?」
俺が覚えていないだけ。俺がしてきた行動は、消えない。その事が、未来の俺を……みんなを苦しめないと、誰が言い切れる?
「俺はこのひと月、記憶が戻るのが怖かった。だけど、今日はっきりと分かったんだ。俺の記憶があろうがなかろうが、俺の過去は俺を逃がしてはくれないと」
過去から逃げるなど、誰にもできない。だからこそ。
「目を背けたら駄目なんだよ。それだと俺は、いつまでも真の自由を手にすることはできない」
無くした過去に怯える毎日。それのどこが幸せだ。自由だ。
「マリクの言っていた意味は、俺には分からない。だから……今、手がかりはお前達しかいないんだ。裏切った身分は百も承知だ。それでも、頼む……!」
それがみんなを傷付ける可能性があるのならば、なおさらだ。俺は、この記憶に、過去に、決着をつけなければならない。そうして始めて……俺は未来へと歩めるのだから。
しはし、沈黙が続いた。それを破るように、フェリオが溜め息をついた。
「記憶を無くしても、お前はお前だな、ガル」
先ほどまでの冷たい声音と違い、それは俺のよく知っている、冷静で面倒見の良いフェルの口調で……状況も忘れて、懐かしいと思った。
「そうだな。俺は、俺だ。当たり前のことだが、みんなに気付かされたよ」
転移されてきたのが、みんなのもとでなければ、俺は野垂れ死にしていたかもしれない。
「良い出会いが、あったんだな」
「ああ。みんな、俺にとって大切な存在だ。そして、みんなのためならば、俺は過酷な道だろうと歩いてみせる」
そして……我ながら甘いが、いつか全員で幸せな道を掴むことだってできる、そんな気がするんだ。
「本当に、あなたという人は。平穏を願っているくせに、自分から苦しい方を選んでしまうんですから」
「そうしなければ、真の平穏を得られないのならな」
「そう、ですか。あなたらしい言葉だ……。どうしますか、シグルドさん? 記憶を奪ったのは、あなただ。後の決定は、あなたに委ねます」
シグルドに、視線が集まる。青虎の表情は険しく、良い流れではないことは察したが、まずは彼の言葉を待った。そして。
「……俺達は、お前に答えをやる事はできない」
「シグ……!」
「あの時は逃がしたが、次はそうもいかないんだよ、ガル。俺は理想を捨てる訳にはいかない。お前が障害となるならば、俺はお前を消さなければならない。そして、記憶が戻れば、お前はいつか、俺たちの前に立ちはだかるだろう」
「………………」
「もう一度だけ言う。お前は過去を捨てろ。それが、お前の最善の道だ」
そう言い捨てたシグルドに、辺りが再び沈黙に包まれ……俺がさらに食い下がろうと反論を考えていた時。ぽつりと、シグルドが呟いた。
「それでも分からない大馬鹿だと言うならば……英雄たちの事を調べてみるといい。それはいずれ、俺たちに行き着くだろう」
「!」
「今のお前になら、意味が分かるはずだ」
英雄たち。それが、俺とどう関わってくるのかは分からないが……。
「済まない、シグ。そして、ありがとう」
「……礼を言われる、ことではない。そして、忘れるな。その道を選べば、お前はいつか……俺達の、敵になる」
「そうなのかもしれないな。だがな、シグ……フェル、ルッカ。俺は決して、お前たちを諦めない。道はまだ、自分の意思で選べるのだからな」
あの記憶の中で俺は言った。シグもフェルも、いつか俺の意志を分からせてみせると。そう、あの時の俺は、大切なものを裏切りはしたが、友であることを諦めてはいなかった。ならば俺は、その願いを忘れるつもりはない。
「…………。どこまでも、甘い男だ。ならば、勝手にしろ」
そうシグルドが吐き捨てた辺りで、他のみんながこちらに向かってきた。
「……慎吾さん」
「改めて、今回は借りを作ってしまったな、シグルド。君がいてくれたからこそ、誰もが無事に帰ってくることができた」
「礼には、及ばない。あなたも分かっているはずだ。俺は、今回の襲撃者との関わりがあると」
「それでも、だ。無論、問わないわけにもいかないがな。……君たちは、何者だ? あの連中と、どのような関わりがある」
「……彼らは、味方でもあり、敵でもある。お互いに、騙しあっていることを理解した上での同盟関係ではあるがな。彼らがこうして派手に動いたならば、俺たちもその時が来たということだ」
「なに?」
「……フェリオ、ルッカ」
シグルドは、慎吾の問いにはっきり答えるでもなく、二人を呼んだ。
「ここまで本格的な動きを奴らが見せ始めた以上、悠長にはしていられない。戻るぞ」
彼の言葉を聞いた瞬間、フェリオはともかく、ルッカの表情が明らかに険しくなった。
「……今すぐに、ですか?」
「ああ。悪いが……お前にも、本来の役目を果たしてもらう時が来た」
そう宣言されると、ルッカは大きな溜め息をついた。それを境に、少年の雰囲気がはっきりと変化したことを感じた。
「了解しました。できれば、この大会を最後の良い思い出にしたかったんですけどね」
「ルッカ、何を……」
怪訝な表情で蓮が尋ねると、ルッカは何のことはないような表情で、あっさりと言い放った。
「皆さん。僕は、今日で学校を辞めます」
「…………!?」
みんなが凍りつく。特に蓮と修は、明らかに表情を変えた。
「どういうことだ、ルッカ!?」
「突然、何を言い出してんだよ!」
「突然も何も。みんなだって、分かっているでしょう? 僕は……普通じゃないと。隠していた何かがあったんだと。それを表に出す、それだけです」
「何を言っているの!? 確かに、何かあるってのは分かったけど、それと学校に何が……」
「単純な話です。僕はもう、エルリアにはいられない。やるべきことがありますからね」
「ルッカ。親である俺に一言も言わずに、そんな事を……!」
「親? おかしなことを言いますね、父さん。……僕の親はとっくに死んでいますよ。あなたじゃない」
「!!」
あっさりとした口調で、少年はあまりにも残酷な言葉を口にする。遼太郎は言葉を失うと、よろよろと数歩だけ後退り、倒れそうなところを上村先生に支えられた。
「ルッカ……! 今の言葉、訂正しろ!」
「勘違いしないでくださいよ、蓮。父さんには感謝していますし、尊敬もしています。……でも、血の繋がりは否定できない。父と呼んでみたところで、僕は決して、父さんの子供にはなれません。そんな人に指図をされる謂れもありませんね」
「て、てめえ、馬鹿野郎……!」
「ふざけるな!! お前は……お前は今まで、そんなことを考えて……!」
「……どちらにせよ、ファルクラム。オレはお前の担任として、そんな事は認めない」
蓮を一旦制し、上村先生が前に出る。
「お前の事情、オレはそれほど詳しく知らない。だが、お前……いや、お前たちは、何かを知っているのは明らかだ」
「………………」
「このまま、黙って行かせるわけにはいかない。せめて、事情を話せ」
「……先生」
ルッカの口から、再び溜め息が漏れた。
「どうしても行かせてくれませんか? その場合、力づくで行くことになりますが」
「……何だと?」
「言っておきますが、授業で僕がどれだけ手を抜いていたと? それに、シグルドさんとフェリオさんもいる。なまったあなた達に、そう簡単に止められはしませんよ?」
「ファルクラム、貴様は……!」
「……この国のみんなが好きなのは本当なんです。僕を、あなた達と戦わせないでください」
それは懇願であり、脅迫でもあった。先生の言葉にも劣らない程の威圧感を持った。
「綾瀬 慎吾」
フェリオは、ただ黙して話を聞いていた慎吾を呼ぶ。
「今回、このような事態になったのは、阻止出来なかった我々の責任でもある。だが、我々は、決してこの国に仇なそうとは思っていない。だから……行かせてはもらえないか?」
こういう時、最も状況を冷静に判断し、最も的確な答えを出すのは慎吾だ。一同も、彼の言葉を見守る。彼は暫く思案した後、言った。
「俺達の子供を救ってくれた礼だ。今回は、行くがいい」
「慎吾……!」
「それが最善だとは思っていない。可能であれば、捕らえてでも話を聞くべきだろう。だが、今の俺たちではそれも難しい。それにこれ以上、この場で争いを起こすわけにはいかないだろう」
皆はその決定に対して、何も言わなかった。慎吾の決定は皆の意志、と言う事か。遼太郎は俯いたままだが。
「だが、もしも先ほどの言葉に嘘があれば……その時、俺は君達の障害になるだろう」
「了解した……感謝する」
フェリオは小さく頭を下げる。そして、シグルドとルッカ、フェリオの三人は、少しだけ前に俺達と距離を置いてから、振り返った。俺達と、対峙するような形だ。
「ルッカ、どうして……おれ、何が何だか分からないよ……」
蓮は、絞り出すような声で、そう尋ねた。
「僕の生きる世界は、あなた達とは違うんです。僕は、日の当たる世界の住民じゃない」
「ルッカ、お前……」
「今までありがとうございました。みんなには、本当に感謝してます……こんな僕と、友達でいてくれて」
「ルッカ君……」
「蓮、修兄さん、それに父さん。母さんの事、よろしくお願いしますね……サヨナラ」
「…………っ」
その宣言には、あまりにも強い意志が込められていて……蓮はもはや、何も言い返せなくなってしまった。
「ガル。裏切り者とは言え、お前は友だった。だから、これから先に何もしないならば、おれはお前をどうこうするつもりはない」
「フェル……」
「だが、もしも敵になるならば、その時は容赦しない。覚えておくんだな」
「…………」
彼は昔から目標には一途な男だった。俺が障害になるなら、彼は俺を排除してのけるだろう。
「こうして、お前達が傷付いた事、何もせずに去っていく事は済まないと思う。だが、俺達にはやる事がある」
「シグ……ルド」
「お別れだ、ガルフレア。もう、出逢う事が無いように祈っておく」
次に出逢う時が来るとすれば。その時に、俺達はどのような関係なのだろうか。……そしてきっと、その時はいずれ。
「願わくば、お前達が幸せに過ごせる事を」
その言葉を最後に、去っていく彼ら。俺達はただ、その背中を見送る事しか出来なかった。