表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルナ ~銀の月明かりの下で~  作者: あかつき翔
7章 凍てついた時、動き出す悪意 ~後編~
368/429

竜虎天翔!

「ち、いっ……!」


「暁斗!」


 ロディと戦いを続けていた俺だったが、少しずつ流れは悪くなってきていた。PSの棘は、何とか避け続けている。だけど、こちらも相手に攻撃を加えられていない。

 ロディは、自分の体術に加えて、巧みにUDBたちに援護をさせて、俺たちの攻撃をいなしてくる。速さでは大きく上回ってるはずなのに、全然アドバンテージが取れない。


 そうしているうちに、幻影神速の消耗が無視できないところに来ていた。この速度を保てるのは、あと何分かが限界だと思う。

 瑠奈とイリア、3人がかりでも押されるなんて……こいつ、こんな見た目しといて、下手すりゃあのクリードくらいに強い。せめて、あいつ一人に集中できれば……!


「ほ、本当に、しつこいなあ……!」


「攻めてきてるのは、お前、だろうが! 嫌なら、とっとと帰れよ!」


「そんなことしたら、兄さんに怒られちゃうじゃないか……!」


「知らないよ、そんなこと! そんな勝手な理由で、こんなことをして!」


 今まで戦ってきた相手の中でも、ここまで言葉が通じなかったことはない。本気で言っているんだとしたら……狂っているとしか表現できない。何でこいつは、ここまでしておいて、自分が被害者みたいな顔をできるんだ?

 いや、落ち着け。今は戦いに集中しないと……!


「無理しないで、お兄ちゃん!」


「暁斗、一度下がって! あたしの力の中に!」


「く……すまない!」


 瑠奈の支援を受けてイリアのところまで跳び退くと、彼女が俺の前に結界を張ってくれる。そこに飛んできたロディの棘は、光の壁が受け止めた……けど、イリアが少し苦い顔をしたのは俺も気付いた。

 彼女の〈神託の城壁〉は、大抵の攻撃を防ぐことができる。だけど、無敵ってわけじゃないらしい。前に説明してもらったことがある。


(あたしの力は、()()()()()()()()()()()を形にしたもの……だから、そこに攻撃が来る、ってあたしが認識できないようなものには、効果が落ちてしまうの。それから、PSの特殊な攻撃とかもね。意識を集中させないと、うまく防げないことがあるんだ)


 攻撃だと分かっていれば、空間に作用するクリードの離法千里みたいな能力でも阻める。あれは、斬るって物理的な攻撃だからな。だけれど、例えば無色透明なガスを撒かれてたりしたら、それを防ぐのは難しいらしい。

 あの棘は明確に攻撃として形を持っている。だけど、普通の物質でもない。彼女の反応からして、防ぎづらい部類なんだろう。

 それに、結界の強度を上回るような攻撃も防ぎきれない。防げば防ぐほどイリアが消耗する……いつまでも閉じこもっているわけにもいかない。


 せめて少しでも息を整えながら、状況を確認する。軍人たちも、UDBとの戦いで一進一退って感じだ。……空間転移のせいで敵が減った気配はない、どころか、増えているかもしれない。一方、こちらは明らかに怪我人が増えてきている。

 時間を稼ぐにも、守り続けるには限界がある。少なくともロディだけは、どうにかして俺たちで止めないと。だけど、このままじゃ……。


「困ったなあ……その壁、すごく邪魔だ」


 本当に、子供がするような仕草でそう呟いたロディは、何かを取り出して投げた。――直後、大きな爆発が起こる。


「くぅ……!」


「イリア!」


「……大丈夫! この程度……!」


 俺たちには爆風も届かないけど、受け止めるイリアには衝撃のフィードバックがある。そして、ロディはそれをいくつか放り投げてきた。イリアは足を止めて、結界の出力を上げることで何とかそれを防ぐ。

 爆炎で目くらましされている間に、ロディは俺たちの背後に回り込もうとしてきた。そうはさせるかよ……! 俺は深く息を吸い込み、再び能力を発動させて突撃する。


「せ、せっかく高いの使ったのに……思ったより、しぶとい……」


「この野郎……! イリアと瑠奈に怪我でもさせてみろ、死んでも許さねえからな!」


「っ……しつこくて怖い人は、本当に大嫌いだ……!」


 だけど、向こうにはまだ余力があったらしい。

 ロディが手を上げると、光の棘が一気に10発近く、宙に浮かんで展開する。……まずい、これを全部避けるのは……!


 ロディの口元が、確かに上がったのを俺は見た。この、野郎は。


「串刺しに――」


「――その前にお前が丸焼きになりな!!」


 ――突然、炎の嵐が吹き荒れた。

 それは俺を一切狙うことなく、ロディへと襲いかかる。


「わ、わぁっ!?」


 ロディにとってもそれは不意打ちだったらしく、あいつは棘を飛ばすこともできず、叫んで後退した。そんなあいつを狙って、続けて銃弾がばら撒かれる。


「ひぃ……!?」


 情けない悲鳴を上げつつも、的確に回避と防御しながら、ロディは大きく後ろに下がる。助かった、らしい。だけど……今の炎。それに、銃撃。何よりも……あの、声は……。


「……ふう。ナイス連携だぜ、兄貴!」


「間一髪、ってやつだったがな。平気かよ、暁斗!」


「……あ……!!」



 そこには……俺の親友が。俺の弟分が。いつも通りの姿で、揃って不敵な笑みを浮かべていた。













 オレ達を見て、暁兄もルナも、イリアも目を丸くした。

 ま、オレが立ってんのも……横に立っているカイのことも、そりゃビックリすんよな。


 身体はさすがにちょっと重い……けど、何日か寝たきりだったらしいこと考えりゃ、動けすぎてるくらいだ。どうも、オレが寝てる間も、コニィとかガル、マスターが色々してくれてたらしい。ほんと、感謝しなきゃな。


 そして、オレの隣に立ってるカイの身体は……完全に元に戻ってた。オレがこの砦で時間を吸う前、だけじゃなくて……その前に吸ってた一年間も含めて。

 だから、オレの中で話した時と同じで、身体が明らかにでかくなってる。今なら分かるんだけど、こいつは一年若返ってたわけじゃなくて、一年かっとばしてた状態だったんだ。成長期の一年が返ってきたぶん、そのまんまでかくなったって感じみてえだな。


「浩輝君と、海翔君……! 二人とも、大丈夫なの!?」


「わりぃ、心配かけて! けど、もうピンピンしてる!」


「見ての通り、二人揃って完全復活だぜ! ヒーローは遅れて来るもん、だろ?」


「……バカ野郎! 心配させたくせにかっこつけてんじゃねえよ!」


「そうだよ……! でも、二人とも、良かった……!」


 泣き笑いみたいな暁兄とルナの言葉。安心したようなイリアの表情。オレとカイ兄は、顔を見合わせて笑う。ああ、後で色々と返さなきゃな、みんなには。


 あの後……心の世界から戻ってきた時点で、カイは戻っていた。飛鳥たちに聞くと、オレの身体から急に光が巻き起こってカイを包み、終わった時にはこうなってたらしい。

 そして、後のことを引き続き3人に任せて、オレらは早々にこうして復帰したってとこだ。オレらを守るために戦ってた友達、その助けになりたかったから。


 ともかく、話すのは後だな。敵のリーダーっぽいやつも、UDBに自分を守らせながら、構え直してる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ