白羽、舞い散る
「駄目だ、ハーメリア! 突出しちゃ……!!」
「お、大きな声を出さないで……怖いなあ、ほんとに……!」
ごめんなさい、ヘリオスさん。でも、私の力が及ばなかったとしても、こんな相手を放っておくなんてできない。
私は距離を詰めながら、能力を乗せたボウガンを放った。たとえ命を奪うことになったとしても……こいつを逃したらどこかで誰かが殺される。そんなこと、させない!
ロディは取り出したで矢を叩き落としていく。見た目より、ずっと戦い慣れている……なら、避けられないくらいまで近付く!
「お、襲ってくるなら……やり返さなきゃ……!」
「どの口で……!!」
自分から襲ってきたこととか、先ほどの言葉を忘れたみたいな勝手な理論。本気で言っていそうなところに、毛が逆立ちそうだ。
走る。ロディがこちらに向かって棘を飛ばしてくるけど、来ると分かっていれば私だって……! ギリギリのところではあるけれど、それを避けながら距離を詰め、一気に勝負を……。
「……うっ!?」
だけど、突然襲ってきた衝撃に、私は地面を転がった。
……獅子のUDBが、私に突っ込んできたみたいだ。ロディを倒すことに集中しすぎていた私は、反応が間に合わずにそれを喰らってしまった。
当たり方は浅くて、大した傷じゃない。だけど、顔を上げた時には……倒れた私に向かって、ロディの棘が、照準を合わせていた。
「痛いと思うけど……ご、ごめんね? 」
「っ!!」
まずい。間に合わない。……死ぬ。そう思った瞬間、恐怖が一気に湧き上がってきた。
頭の中に、色んなものが浮かんでは消える。お父さんとお母さんのこと、ウィンダリアにいる友達のこと、まだ戦っている仲間のこと……走馬灯のように浮かぶ中で、ロディが殺した人の顔が浮かび、私は急に現実に引き戻された。
……いいや、まだだ。駄目だ!
棘を喰らって、私がここで死んだとしても……刺し違えてでも、せめてロディは止める! そうすれば、私が戦った意味がある!
この国のために命を賭けて戦う、私はそう覚悟したんだ。だからそれを今――。
――何かが、目の前に、突然割り込んできた。
覚悟した痛みは、私には来なかった。……え?
「く、あああああぁっ……!!」
上げられた悲鳴は、私のものではない。
棘は、私には届かなかった。剣や盾で止められなくても……あの棘は、何かに刺されば、止まる。そして、それが刺さるのは……生きている、相手で。
「な……なん、で……」
私と、ロディの間に……白い、鳥人、が。
……ヘリオス、さん。私をかばって、ヘリオスさん、が?
ヘリオスさんの周囲に……UDBが群がる。ヘリオスさんは歯を食いしばって、それを迎撃しようとするけど……動きが、明らかに鈍っていて。そんな状態なのに、私の方に来ようとする相手から斬って……。
急いで起き上がろうとした。でも、それよりも早く……虎のUDBの爪が、ヘリオスさんのお腹を、斬り裂いて……。
「……あ、ああああぁぁあああぁ!!」
訳も分からず叫んだ。ヘリオスさんを斬ったUDBを撃ち抜く。ヘリオスさんは、そのままゆっくりと、倒れていく。その嘴が、微かに動いた。「逃げるんだ」って、掠れた声が聞こえた。自分が死にそうな、この状況で。
急いで駆け寄る。……息はある。けど、傷が深くて……血が……!
どうしよう。どうすればいいの? 早く治療を……でも敵がまだいる。私、私は……!!
「――そんまま伏せときな!!」
「え……」
「う、うわぁっ……!?」
声に反応できたわけじゃない。でも、私が動けないうちに、目の前で勢いよく炎が上がった。そして、浴びせられた銃弾が私たちの周りにいたUDBをなぎ倒していく。
私たちと敵を分断するように広がった爆炎。この、炎は……。
「ちぃと、遅かったか……!!」
ロウさん。アレックさんとエミリーさん……それから、アッシュさんとオリバーさんも。
倒れたヘリオスさんには、みんながすぐに気付いた。
「あ、ああ! ヘリオス! しっかりして、ヘリオスっ!!」
「アッシュ、早く安全な場所まで運びますよ! まだ間に合う……いや、間に合わせる!!」
「呆けてんじゃねぇハーメリア! アレック、エミリー、そのひよっ子を連れてとっとと下がりなぁ!!」
「了解ですよ、っと……! 頼みましたぜ、マスター!」
「ハーメリアちゃん、こっちに!」
ロウさんの声……いつもと全然違うその言葉も、何か遠い。目まぐるしく変わる状況も、まるで頭に入ってこない。早く、何とかしないと……いけないのに。
「ぎ、ギルドマスター……!? さすがに、荷が重いよ……!」
「こんだけ荒らしといて、すぐ帰るとは言わねぇよな? ちぃと付き合えや、おら。お仕置き程度で済むと思ってんじゃねえぞ!!」
「ひぃ、声が大きい……こういう人、いちばん嫌だ……!」
アレックさんが私を背負う。声が遠くなっていく。ロウさんの戦う音も……全て。
どうして。どうして、こうなったの。どうして……ヘリオスさんが。
私が……私が。
……私の……せい、で……?