表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルナ ~銀の月明かりの下で~  作者: あかつき翔
7章 凍てついた時、動き出す悪意 ~後編~
332/428

白羽、舞い散る

「駄目だ、ハーメリア! 突出しちゃ……!!」


「お、大きな声を出さないで……怖いなあ、ほんとに……!」


 ごめんなさい、ヘリオスさん。でも、私の力が及ばなかったとしても、こんな相手を放っておくなんてできない。


 私は距離を詰めながら、能力を乗せたボウガンを放った。たとえ命を奪うことになったとしても……こいつを逃したらどこかで誰かが殺される。そんなこと、させない!

 ロディは取り出したで矢を叩き落としていく。見た目より、ずっと戦い慣れている……なら、避けられないくらいまで近付く!


「お、襲ってくるなら……やり返さなきゃ……!」


「どの口で……!!」


 自分から襲ってきたこととか、先ほどの言葉を忘れたみたいな勝手な理論。本気で言っていそうなところに、毛が逆立ちそうだ。

 走る。ロディがこちらに向かって棘を飛ばしてくるけど、来ると分かっていれば私だって……! ギリギリのところではあるけれど、それを避けながら距離を詰め、一気に勝負を……。


「……うっ!?」


 だけど、突然襲ってきた衝撃に、私は地面を転がった。


 ……獅子のUDBが、私に突っ込んできたみたいだ。ロディを倒すことに集中しすぎていた私は、反応が間に合わずにそれを喰らってしまった。

 当たり方は浅くて、大した傷じゃない。だけど、顔を上げた時には……倒れた私に向かって、ロディの棘が、照準を合わせていた。


「痛いと思うけど……ご、ごめんね? 」


「っ!!」


 まずい。間に合わない。……死ぬ。そう思った瞬間、恐怖が一気に湧き上がってきた。

 頭の中に、色んなものが浮かんでは消える。お父さんとお母さんのこと、ウィンダリアにいる友達のこと、まだ戦っている仲間のこと……走馬灯のように浮かぶ中で、ロディが殺した人の顔が浮かび、私は急に現実に引き戻された。


 ……いいや、まだだ。駄目だ!

 棘を喰らって、私がここで死んだとしても……刺し違えてでも、せめてロディは止める! そうすれば、私が戦った意味がある!

 この国のために命を賭けて戦う、私はそう覚悟したんだ。だからそれを今――。






 ――何かが、目の前に、突然割り込んできた。




 覚悟した痛みは、私には来なかった。……え?


「く、あああああぁっ……!!」


 上げられた悲鳴は、私のものではない。

 棘は、私には届かなかった。剣や盾で止められなくても……あの棘は、何かに刺されば、止まる。そして、それが刺さるのは……生きている、相手で。


「な……なん、で……」


 私と、ロディの間に……白い、鳥人、が。

 ……ヘリオス、さん。私をかばって、ヘリオスさん、が?




 ヘリオスさんの周囲に……UDBが群がる。ヘリオスさんは歯を食いしばって、それを迎撃しようとするけど……動きが、明らかに鈍っていて。そんな状態なのに、私の方に来ようとする相手から斬って……。

 急いで起き上がろうとした。でも、それよりも早く……虎のUDBの爪が、ヘリオスさんのお腹を、斬り裂いて……。


「……あ、ああああぁぁあああぁ!!」


 訳も分からず叫んだ。ヘリオスさんを斬ったUDBを撃ち抜く。ヘリオスさんは、そのままゆっくりと、倒れていく。その嘴が、微かに動いた。「逃げるんだ」って、掠れた声が聞こえた。自分が死にそうな、この状況で。


 急いで駆け寄る。……息はある。けど、傷が深くて……血が……!

 どうしよう。どうすればいいの? 早く治療を……でも敵がまだいる。私、私は……!!


「――そんまま伏せときな!!」


「え……」


「う、うわぁっ……!?」


 声に反応できたわけじゃない。でも、私が動けないうちに、目の前で勢いよく炎が上がった。そして、浴びせられた銃弾が私たちの周りにいたUDBをなぎ倒していく。

 私たちと敵を分断するように広がった爆炎。この、炎は……。


「ちぃと、遅かったか……!!」


 ロウさん。アレックさんとエミリーさん……それから、アッシュさんとオリバーさんも。

 倒れたヘリオスさんには、みんながすぐに気付いた。


「あ、ああ! ヘリオス! しっかりして、ヘリオスっ!!」


「アッシュ、早く安全な場所まで運びますよ! まだ間に合う……いや、間に合わせる!!」


「呆けてんじゃねぇハーメリア! アレック、エミリー、そのひよっ子を連れてとっとと下がりなぁ!!」


「了解ですよ、っと……! 頼みましたぜ、マスター!」


「ハーメリアちゃん、こっちに!」


 ロウさんの声……いつもと全然違うその言葉も、何か遠い。目まぐるしく変わる状況も、まるで頭に入ってこない。早く、何とかしないと……いけないのに。


「ぎ、ギルドマスター……!? さすがに、荷が重いよ……!」


「こんだけ荒らしといて、すぐ帰るとは言わねぇよな? ちぃと付き合えや、おら。お仕置き程度で済むと思ってんじゃねえぞ!!」


「ひぃ、声が大きい……こういう人、いちばん嫌だ……!」


 アレックさんが私を背負う。声が遠くなっていく。ロウさんの戦う音も……全て。



 どうして。どうして、こうなったの。どうして……ヘリオスさんが。




 私が……私が。

 ……私の……せい、で……?







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ