表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルナ ~銀の月明かりの下で~  作者: あかつき翔
2章 動き始めた歯車
32/428

盗み聞き

「……と?」


「……は……か?」


「……い。……は……だ」




 大人たちは、会場の人混みからも離れた路地で話していた。その表情は真剣そのもので、何かしら重要な話をしているのは間違いないだろう。そして。


「(おい、聞こえるか?)」


「(無理ですよ、ここじゃ遠すぎて……もう止めましょうよ)」


 盗み聞き二人組は、慎吾達から約十メートルほど離れた建物の影にいた。というのも、ここにしか隠れるスポットが無かったからだが。


「(PSでどうにかならねえかな)」


「(俺のだと難しいですね。修さんは……無理ですよね、あの力じゃ)」


「(……だな。近付くしかねえか。あそこに止まってる車のとこまで行けば……)」


「(いやいや無理ですよ、見つかっちゃいますって)」


「(馬鹿! 諦めたらそこで何もかも終わりなんだぞ! 最後まで足掻かずに、どうして諦めるんだ!)」


「(……理論は共感出来るけど、使いどき間違ってます)」


 慧は全力で頭を抱えた。どうしてこの人は、こう無駄にアクティブなんだろうか、と。神様が蓮と性格の割り振りを間違えたに違いない、などという割と失礼なことを考えているうちに、修はいつの間にか突撃準備を始めていた。


「(俺は行く! 成せば成る、成さねば成らぬ何事も!)」


「(ちょっと待って下さいって! そもそも、その理論で女の子にアタックして、修さんは何回も玉砕してるじゃないですか!?)」


「そ、それは関係ねえだろ!?」


「(あ!)」


 慧から受けたツッコミの内容に思わず大声で叫んでしまう修。叫んだ後にマズイと気付いたが、時既に遅し。

 二人はゆっくりと大人たちを伺う。しかし、幸いと言うべきか、向こうには特に動きはなかった。


「(ふう~、気付かれてないな……お前、人の傷口を!)」


「(人並みよりはモテるのに、何故か好きな子にはフラれてますよね、修さんって)」


「(だ、黙れ!)」


 完全に論点がズレ始めた。無論、慧にとってはそれが狙いだが。


「(第一、お前はどうなんだ!)」


「(俺? 彼女いますよ。写真見ます?)」


「(ぐ! ぐ……興味ねえ!)」


「私は興味あるわね」


『うわああぁ!?』


 揃って絶叫する二人。いつの間にか、二人の真後ろに楓が立っていたのだ。気配も何も感じなかった、達人の足取りだ。


「何をしているのかしら?」


「あ、いや、え~っと……」


「す、すみません!」


 頭を下げた慧に対し、修は必死に言い訳を考えるが、今さらどうしようもない。そして、他の大人達も集まってきた。


「慧、何をしているんだお前は……」


「う……」


「ま、良いじゃねえか優樹。若いうちはこのぐらいやんちゃで」


「大方、修が言い出したんだろ? 誰に似たんだか」


「……間違いなくお前にだな」


 どうやら叫んだ時点でバレていたらしい。代表として、慎吾が二人に尋ねる。


「内容は聞こえていないか?」


「は、はい……」


「それならいい。戻るぞ」


 こうして、二人の(と言うよりも修の)盗み聞き作戦は、見事な失敗に終わる事になった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ