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ルナ ~銀の月明かりの下で~  作者: あかつき翔
2章 動き始めた歯車
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高ぶる闘志、ひとかけらの迷い

「よし、順調順調!」


 レンの勝利が決まり、これで三人が勝ち上がった事になる。マジで良い流れだ。残ったオレとルナ、それからカイもこれに乗っからなきゃな。


「だいぶ緊張していたみたいですが……最後は本調子が出ていましたね。良かったです」


「そうだな。見事な槍さばきだった……さて。では行くぞ、ルッカ」


「……え? ええ!?」


 立ち上がったシグルドが、おもむろにルッカの腕を掴む。……ああ、そういや試合前にそんなやり取りしてたな。


「まさか、誤魔化せると考えていた訳ではないな?」


「ま、待っ……す、少し落ち着いて下さいよ。ね? ほら、込み入った話は、大会が終わってから存分に……」


「大人しくついて来るか、ここで死ぬか、どちらが良い?」


「……ツイテイキマス」


 シグルドの声音はマジだった……端から見てても怖え。

 ルッカは抵抗を諦め、外に向かって進む青虎の後ろを歩いていった。途中、一度だけ振り返り……売られていく子牛って、ああいう目をしてるんだろうか……


「いいの、誠司? あなたの役目を任せちゃって」


「彼の説教のほうが、オレのよりも効果がありそうだからな……それより、優樹達から連絡はあったか?」


「会場には着いているらしいぞ。人が多くて、席を探すのに手間取っているようだがな」


 親父達も着いてたのか。兄貴も一緒に来ているはずだよな。母さんは夕方からしか来れないって言ってたけど。ちなみにカイの母さんは大会期間にはどうしても都合が合わず、レンの母さんは明日からだ。


「なら、今のうちに迎えに行きましょうか?」


「そうだな。誠司、お前も来い」


「分かった」


「俺も行こう。初対面の人には挨拶しておきたいからな」


 年長者組が立ち上がり、ガルもそれに合わせる。その姿が見えなくなった頃に、今度は暁兄が立ち上がった。


「俺も、今のうちにジュースでも買って来るかな。カイ、お前も付き合えよ」


「おお、構わねえぜ」


 呼ばれたカイも立ち上がり、二人で一緒にその場を離れていった。あれよあれよとみんないなくなり、残されたのはオレとルナだけ。


「ふう……」


「どうしたの、コウ?」


「いや……正直言って、割と緊張してんだよ、オレも。名前が呼ばれるまで、気が気じゃねえぜ」


「あはは……実は、私も」


 カイの手前、弱みは見せたくなかったけどよ。みんなが勝つのは嬉しい反面、オレだけ負けたらどうしようとかも考えちまうってか。


「カイはそんなに緊張してなさそうだったよね」


「あいつは図太いってか、場の空気に飲まれねえからな」


 そりゃ、あいつだって緊張してない訳じゃねえだろうけど。メンタル面ではオレより強いってのは、認めざるを得ない。

 もちろん、試合で負ける気はさらさらねえけどな。オレは、あいつにだけは絶対に負けらんねえ。


「……ところでよ、ルナ」


「ん、何?」


「実際のとこ……お前とガルって、どんな関係なんだ?」


 せっかく二人きりなので、そんな質問を投げかけてみる。昨日、レンとも色々話したからな。


「どんな、って?」


「いや、何つーか……昨日も二人でどっか出掛けたりしたって聞いたし。お前は、あいつの事をどう思ってんのかなって。もっと仲良くしたいとか、好きとか、色々あんだろ?」


「……そうだね。ガルの事は好きだよ。昨日はだいぶ仲良くなれた気がするし、これからもっと仲良くなっていきたい……だってガルは私にとって、新しいお兄ちゃんみたいなものだからね」


 ……最後の部分に、危うく古典的にずっこけそうになった。

 割とはっきり聞いたつもりなんだけど……好きの意味をそっちで取るかよ、ここで!


「……さ、参考までに聞いとくけど、レンはどうだ?」


「そんなの、今さら確認する必要ないでしょ? レンの事も大好き。昔からの親友だし、これからもずっと友達でいたいよ」


「………………」


 ある意味典型的なトドメの一言じゃねえか……オレは思わず溜め息をついた。どう見ても本気で言ってるのがタチが悪い。

 ……ああ、そうだな、分かってたよ。よく知ってるさ、こいつは昔からこういう奴だって……だからこそ、レンは何年間も悩んでる。


「どうしたのコウ、頭抱えちゃって。大丈夫?」


「お前の将来を心配してんだっつーの!」


「え?」


「……何でもねえ、忘れろよ」


「……?」


 頭が痛くなってきた。自意識過剰もうざいけど、あまりにニブすぎるのも考えもんだ。レンを見てると、もどかしくて仕方ない。……そもそも、何でオレがこいつの色恋沙汰に気を回さなきゃいけねえんだっての。


 と、ちょうどその話が終わったタイミングで、こちらに戻ってくるレンの姿が見えてきた。誰かと楽しげに話している。

 レンはそいつに手を振って別れると、こちらへと向かってきた。


「あれって、お前の対戦相手だよな?」


「ああ。せっかく試合をした事だし、仲良くなりたくてな。アドレス交換とかしてたんだ。」


 へえ。そういうのっていいよな、なんだか。戦いを通して生まれる絆ってやつ?


「一回戦突破おめでとう、レン」


「ああ、ありがとう……みんなは?」


「お前の試合の後、色々とな。すぐ戻ってくると思うぜ」


 レンはオレの隣に座ると、自分の鞄からタオルとスポーツドリンクを取り出した。よく見ると、獣毛が汗でかなり濡れている。


「大丈夫かよ?」


「ん、ああ……少し力を使いすぎたんで、疲れただけだ」


 確かに、さっきはこいつも全力でやってたみたいだからな。……試合に勝つには、全力投球するしかねえか。オレも……


「………………」


「コウ、どうした?」


「……ああ、わりぃ。少しボーっとしちまってな。何でもねえよ」


 ……いけねえな。今は余計な事を考えてる場合じゃねえのに。最近、どうにも情緒不安定だ。その原因は、オレ自身が一番よく分かってる。昔よりマシと言っても、やっぱりオレは……


 最近は、練習では積極的に使うようしてた。本番になって、使えねえなんてことが無いように。だけど……できるなら使いたくねえって、今のオレは思っちまってる。


「さ、試合見てようぜ。ライバルはしっかり観察しとかねえと!」


「ん、そうだね」


 ……どうするかは、試合が始まってから考えよう。





 その後も、みんなはなかなか戻ってこなかった。先生達やシグルド達はともかく、暁兄達はどうしてんだろうか。ま、あの二人は今でも親友だし、話し込んでんのかもな。そして、結局誰も戻ってこないうちに……


『橘 浩輝、松本 啓太は……』


 ……オレの番が、来ちまったようだ。かなりの緊張と、妙な高ぶりが、同時にオレを満たす。


「んじゃ……行ってくるぜ」


 立ち上がったオレに、二人は笑顔を向けてくる。


「負けないでよ? コウなら、絶対に勝てるんだから」


「みんなもどこかで見ているはずだ。しっかりとやってこい!」


「おう!」


 二人のエールは、オレの心をさらに奮い立たせてくれた。……力のことは、どうなるか分からねえけど……負けねえ。負けらんねえ。カイと戦うまで、絶対に!

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