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ルナ ~銀の月明かりの下で~  作者: あかつき翔
6章 凍てついた時、動き出す悪意 ~前編~
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出逢いと再会の異郷 2

「いやほんと、窮屈でごめんね? とりあえず、もう少ししたら、君たちの拠点になるホテルに移動するからさ」


「あ、ここで寝泊まりするわけじゃねえのな……安心したぜ」


 アトラが安堵の息を吐く。失礼ながら、内心では俺も同意だ。この環境ではコンディションを崩してしまいかねないからな。


「みんなには、色々と頑張ってもらわないといけないからね。できるだけ不自由ない環境を整えさせてもらったよ。バストールと比べたら全然だろうけどさ」


「いや、有難いことだ。……今後については、その拠点に移動してからになるのだろうか?」


「そうだね。君たちと軍からの派遣メンバーとうちのみんな、全員を交えて打ち合わせをしたい。軍の人もそろそろ来る予定だよ」


「派遣メンバー?」


「共同戦線とは言っても、こっちのが圧倒的に人数が少ないからね。優秀なメンバーを、俺の指揮下に何人か回してくれることになったのさ」


 話によると、この国のギルド全てをかき集めても、人数は50人にも満たないらしい。一方のテルム国軍は、戦闘要員として勘定できるのは10000人強……軍としてはかなり小規模な方だが、それでもギルドとの人数比は考えるまでもない。

 とはいえ、少人数だからこそできる動き方というものがあり、それこそが俺たちの持ち味だ。軍の側も、それを期待しているのだろう。

 ただし、先ほど軽く聞いた話によると、軍の中にはその協力に懐疑的な者もいるようだ。


「というわけで、そろそろ軍の人の出迎えに出ておこうと思うんだ。そっちからも何人か来てくれるかい?」


「了解した。相手方への失礼にならないためにも、マスターである俺は行くべきだろう。後は……誠司、ジン、ガルフレア、海翔。お前たちも頼む」


「ああ、分かった」


「俺もですか?」


「何か喋れとは言わんさ。ただ、お前には駆け引きの場での経験を積ませておきたいからな」


 海翔の賢さは、育てばジンのような逸材になる貴重な素養だ。軍から派遣される者に、最初から悪印象を与えない駆け引きの場……見せておくのは確かにありだな。

 ロウと共に、ギルドの外に出る。日が落ちたので、空港から出た直後よりは大分暑さも落ち着いている。


「うーん、外のが涼しいぐらいだねえ」


「それでもやはり俺たちからすれば暑い……5年前にも難儀したがな」


「グハハ、そりゃ当然だろうさ。にしても……ウェアルド、君と仕事をするのはいつ以来かな。ランドからは、さらに剣が冴えたと聞いているよ。それに、若いメンバーもすごく活きが良さそうだ」


「おいおい……あいつはまた人を持ち上げて。っと、仕事はちょうど6年ぶりだ。会うのもそれ以来だな」


「期待してもらっても構いませんよ、ロウさん。空やシオンはいなくなりましたが、赤牙は衰えていません。マスターと同等の誠司さんのみならず、若いメンバーも折り紙つきです。ガルフレアはもちろんですが、海翔たちも年齢を考えれば破格の逸材ですからね」


「……やれやれ。ハードルを上げられてしまったな、ガル、如月?」


「……さすがにそこの面子に並べられるとちょっと恐縮って感じです。けど、やれることはもちろんやります。俺たちも、もう本気であいつらと戦うことは決めていますしね」


「そうだな。ウェアには及ばないかもしれないが……それでも並のUDBに負けるつもりなどない」


 月の守護者がその性能をほぼ取り戻してから、しっかりと戦うのは初めてだ。ならば、期待を上回る働きでもしてやらねばならないな。 


「うーん、若いメンバーが育っていってるのは羨ましいねえ。どうだい、何人かこっちに移籍させるってのは?」


「はは。悪いが、こいつらは共にいてこそ真価を発揮するタイプだ。将来は国に戻す奴らもいるからな、その手の相談はランドにしてくれ」


「グハハ、残念だけどしょうがないか! さて、待ちがてらに聞きたいことがあるなら答えるよ。と言っても、難しくない話でね?」


 難しくない話……本格的な話は揃ってからになるだろうからな。ならば、彼の人となりを知る雑談程度、だろう。


「じゃあ……ロウさんは、どうしてこの国に落ち着こうって思ったんですか? ギルドの力は昔から弱かったんでしょう?」


「うーん、それは色々とあるんだけどね。俺って色んな国を巡るフリーランスだったわけだけど、どうせなら俺を必要としてる環境に行きたいなあって思ったわけ。自分の力が少しでも多く役立つところでやりたかったのさ」


「なるほど、あなたらしいな。確かフリーランスになった理由も、どこにいる人の助けにもなれるように、だったか」


「グハハ、そういや君には話してたね。若気の至りもあったから気恥ずかしいんだけどさ! ……ま、そんなこんなで、ギルドの力が弱くて困ってる環境を本部に尋ねて、そっから選んだって感じかな。大変なことも多いけど、やりがいはあるし良かったって思ってるよ?」


 まだ出会ってそこまで経っていないが、ウェア達が尊敬できると言っていたのもよく分かるな。剛胆で、苦難をもいとわず、他者のために全力を尽くせる男、か。彼のことは、信頼できそうだ。


「そう言い切れるのもすごいですね……ギルドメンバーは、何人ぐらいいるんですか?」


「今は俺を含めて四人だね。ただ、ひとりは新米だ。……この子がちょっと、アクの強い子なんだけどね」


「何か、素行に問題でも?」


「いや、問題はない……んだけど、むしろ無さすぎると言うかね? まあ、悪い子ではないんだ。仲良くしてやると同時に、経験を積ませてあげてほしい」


 苦笑するロウからは、どうにも難儀している様子が見てとれる。先入観を持つのは良くないが、彼でも困るような人材か……。


「豪胆なあなたにも困ることはあるのですね?」


「いやあ、恥ずかしい限りだけど、俺は早くに独立してずっとひとりでやってたわけじゃん? 若手の指導とかそういう経験ってほとんどなかったの。そういう点では、ウェアにはほんと今回のうちにご指導賜りたいって感じだよ」


「そういう点では、俺よりも誠司かもしれんな。何しろ本職の教師だ」


「へえ? 教師が何だってまたギルドに? しかもウェアと同等って言ってたよね!」


「まあ、オレにも色々とあったのさ。それより指導に関しての話だな。その人物がどういうタイプかにもよるが、いったい……」


 誠司が続きを尋ねようとしたところで、ギルドの前に車が止まった。空気を察して、雑談も止まる。……来たか。

 車からは、三人の人物が降りてきた。全員が軍服で、先頭に鷹人、後ろに蜥蜴人と人間、という組み合わせだ。俺たちが並ぶと、鷹人が口を開いた。


「貴殿達は、ギルド〈砂海〉のギルドメンバーとお見受けする」


「そうだよー。君たちは、話にあった軍の人かい?」


「そうだ。私はテルム国軍所属、ヘリオス・アング曹長。この度、ギルドの作戦下での活動を行うため、参上した」


 そう名乗ったのは、白鷹の男だった。どうやら彼が、この三人でのトップのようだな。

 まだ歳は若そうだ。俺より下かもしれない。だが、その立ち振舞いに若さは見えず、顔にも声にも感情が見えない。体格は俺と同じく細身の長身で、鋭い眼光からは厳しい人物であることが見てとれる。いかにも軍人、という出で立ちだ。体毛と同じく白い髪は長めに整えてあり、静かに揺れている。


「やあ、ようこそいらっしゃい! ギルド〈砂海〉マスターのロウ・ワーナーだよ。よろしくね!」


「バストールより増援として派遣された、ギルド〈赤牙〉のギルドマスター、ウェアルド・アクティアスと申します。アング曹長、よくいらっしゃいました」


 まず、マスターの二人が代表して挨拶を返す。ロウの口調は全く飾らないものであり、後ろに控えていたうちの一人、蜥蜴人の女性がすごい表情になっている。……単に口調と他のギャップに驚いているだけのようだが。確かに、一度聞いたら忘れられないミスマッチではあるがな……。

 アング曹長は小さく頭を下げてから、少し横に動く。続いて、控えていた二人が前に出てきた。


「アッシュ・ブレンデン軍曹です! 共に侵略を食い止める立場として、誠心誠意協力させていただきます!」


「オリバー・ロビンソン。階級は同じく軍曹です。しばらくの間、お世話になるかと思いますが、よろしくお願いします」


 ひとりは快活そうな蜥蜴の女性。オレンジ色の鱗に、水色の髪が映えている。女性にしては筋肉質だが、軍人ならば当然か。かなり友好的な雰囲気があるのは有難い。

 もうひとりの男は人間だ。中肉中背に黒髪、これといって外見的特徴はないが、立ち振舞いからは落ちついた人物に見えるな。


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