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ルナ ~銀の月明かりの下で~  作者: あかつき翔
4章 暁の銃声、心の旋律
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ヒーロー? 見参!

「良いだろう。なら、若人たちの青い覚悟とやらがどの程度のものか……見せてもらおうじゃねえか?」


 そう言うと、ハヴェストは大袈裟な動作で、右拳を前に向かって突き出すポーズをとった。


「相棒はメンテに出したままこの国に来ちまったが、お仕置きは愛情溢れるゲンコツってのが伝統! おにーさんが一人ずつぶってやるから、おいたが過ぎた事を反省するんだな!」


「ほんと、どこまでも舐めた奴だな。だったら、大人だから何でも許される訳じゃねえってのを教えてやるよ!」


「はっはっは、威勢の良い奴は嫌いじゃないぜ! じゃ、まずはトカゲの少年とガチンコファイトと行こうか!」


「誰がトカゲだ、どいつもこいつも!」


 一度休止状態にしていたPSを再起動、俺の鱗が一瞬にして赤に染まる。


「よし、それじゃお前らは周りの奴らに全軍突撃だ! こっちには手出し無用だぜ!」


『了解シタ……!』


 UDB達も、人格はともかく指示には素直に従うようだ。こちらとしては合わせてやる理由はねえが……戦力的には、乗るのがベストだと判断する。


「って訳で、俺はあいつとやる。みんな、トカゲとライオンは任せたぜ」


「油断するなよ、カイ!」


「へっ、分かってる……よ!」


 先手必勝。俺は、一気にハヴェストに向かって踏み込んだ。戦いの始まりに、ゴングは必要ねえ。

 燃え盛る拳を、勢いを乗せてフック気味に振るう。出来れば開幕早々で仕留めちまいたい……とこだったが、その初撃はハヴェストのバックステップにより空を切る。そう簡単にはいかねえか!


「おおっと! 全く、戦闘開始の口上をまだ言っていないぞ!」


「んなもん必要ねえよ! それより、捨て台詞でも考えとくんだな!」


 そのまま一気に攻め込む。焦りは禁物だが、手の内を出される前に仕留めるに越した事はない。

 俺の放った回し蹴りが外れるが、それも計算のうちと、さらに身体をひねって反対の脚でもう一発。しかし、相手は絶妙に間合いを調整し、それを綺麗に避けてしまう。余波の炎がちょっと掠めたぐらいだ。


「おー、あっちい。火遊びとは本当にイケナイ奴だな!」


「モロに喰らっても遊びで済ませられるか、てめえの身体で試してみろよ!」


「悪いが、その提案はノーセンキューだ! ついでに、俺はエスコートされるよりする方が好きなのさ!」


 さらに踏み込んでアッパー……を振りかぶったところで、ハヴェストは巧妙に俺の左サイドに回り込み、そのままカウンターの拳を突き出してきた。俺は反射的に右に跳ねる。


「っと……!」


「そーらそら、打つべし打つべし!」


 当たりはしなかったが、攻守は入れ替わっちまった。勢いに乗って襲い掛かる拳を、何とか回避かガードしていく。PS開放してる状態だから捌けてるが、素の殴りあいだったら……何発かもらってそうだな。アホみたいなポーズ取ってたりするのとは裏腹に、モーションそのものは堅実で、身のこなしも軽い。

 ……認めたくねえが、ただの馬鹿じゃねえか。ふざけた野郎だが、強え。マジでやらねえと、足下すくわれちまいそうだな……!


「獲物を見付けた猛禽の如く! 鋭く、的確に、舞うように!」


「調子に……乗ってんなよ!」


 相手の動きを見極め、ハイキックに合わせて俺も蹴りを見舞う。双方の脚が交差する。互いに勢いが乗ってた事もあり、かなりの衝撃が俺の脚にも襲い掛かった。根性で、そのまま押し返すように距離を開き、一旦仕切り直す。

 我ながら無茶な割り込みの代償に、脚が激しく痛む。けど、戦うのに支障はねえ。向こうは向こうでダメージはあるだろうし、何よりあっちの場合は俺のキックが纏った炎も喰らっている。


「いって……てか、あつ!? こ、こんにゃろ、ズボンが焦げただろーが!」


「お望みなら全部燃やしてやるぜ?」


「馬鹿者、上半身の服はどれだけ傷付いても、腰から下は無事というのは御約束だろ! 対象年齢が跳ね上がったら貴様のせいだぞ!」


「何のだよ!? ……ったく、どこまでもふざけやがって。こっちは真剣にやってんだよ! 遊び気分ならとっとと帰りやがれってんだ!」


「ふはは。俺だってマジでやってるとも! いつ死ぬか分からん、骨も拾ってもらえん世知辛いお仕事だからこそ、俺は誰もの記憶に残る世紀のヒーローとして名を上げてやるのさ!」


「……どっちかってと世紀の馬鹿として記憶に残りそうだがな。ま、馬鹿としては名前が広まるだけで嬉しいもんか? 何てったって馬鹿だからな」


「バカバカって、言葉のナイフは牙帝狼の牙より鋭いんだぞ!? このっ、メンタルから攻めに来るのは卑怯だぞ!」


「だったら、お望み通りぶっ潰してやるぜ、物理的にな!」


 馬鹿の相手をしてやりながら、ちらりと周囲の様子を伺い、みんながUDBをどちらかと言えば押している事を確認する。あれなら大丈夫そうだと判断してから、俺はハヴェストに向かって飛び掛かった。


「おっとぉ! ホントに手の早い奴だな! 近頃のすぐキレる若者は恐ろしいもんだぜ!」


「近頃のって言葉を使い始めるのは、年取った何よりの証拠だぜ、オッサン!」


「俺の心にクリティカルヒット!? そ、そんなに言葉責めが趣味か! 俺の柔らかい心から凌辱していくつもりだな、この鬼畜!」


「誤解招く言い方するんじゃねえ!!」


「ぎゃひっ!?」


 怒りの鉄拳、顔面にヒット。マジでショックを受けてたらしく、動きが鈍ってた馬鹿に、今度こそちゃんと攻撃が当たる。とは言え、芯は外しちまったのが手応えで分かった。決定打には遠いだろう。


「よ、よくもぶったな!? 親からも拳骨なんて喰らってなかったのに! 週一でしか!」


「多いわ!」


 涙目になりながら殴りかかってくるハヴェスト。動きを見るに、やっぱ大したダメージは与えられなかったらしい。タフな野郎だ!


「復讐法ってやつだ! ぶたれたら、無限倍でぶち返してやる!」


「悪いが、そんなのに付き合ってやるほど殊勝な性格でもねえんでな!」


 タイミングを見て攻守交替。奴の動きにもだいぶ慣れてきた。つっても、相手もそれは同じだろうがな。

 お互いに、攻撃が当たる回数が増えていく。俺の蹴りが浅く相手を捉えたかと思うと、反撃の右ストレートを右胸の辺りに喰らってしまう。……野郎、良いパンチ持ってやがる。痛え。

 紅の炎爪は炎を操り熱を吸収するが、実は体温そのものが上がってるわけじゃねえので、殴られたら火傷させる、なんて機能はなかったりする。やろうと思えば擬似的に炎のカウンターは出せるけど、常時展開は消耗が激しいし……やりすぎると、とある問題が発生する危険が高まるのもある。


 今のとこ接戦。だけど、そうなってくると問題は、野郎が使っているかどうか、だ。身体強化とかそこら辺でもう展開済みってパターンを願いたいとこだが、そうじゃねえなら……。


「ぐぬぬ……やるな、少年! 正直驚いたぜ!」


「これでも喧嘩慣れしてるんでな。ついでに、馬鹿の相手にも慣れてんだよ!」


「はっはっは、ツンデレってやつか! いいねえ、こっからライバルとして認め合う展開だな!」


「だれがてめえのライバルだ馬鹿! 同レベルにすんな馬鹿! 馬鹿は馬鹿らしく馬鹿だけで集まってろ迷惑だ!」


「おにーさんにも真剣に心が砕けるラインは存在するんだぞ!? 大体、馬鹿馬鹿って何も知らないくせに! 爪に火を灯しつつ夜闇の中で勉学に励んでいた、苦しくも真面目な青春時代がだなあ……」


「ほぉう? じゃあ、エネルギー保存則とPS使用の関係を示した人物の名前は?」


「ラモン・グラス。人の精神もエネルギーの一種として扱う事で、精神的エネルギー保存則を作り出した奴だな。未だに是非の分かれる理論だが、その仮定の元にゼロニウムやらグランニウムを用いた加工技術が進んだり、今の文明には大きく貢献していて……」


「…………やべえ何か超ムカつく」


「理不尽!?」


 実際、内心で実力は認めてたが、それを口に出したら何だか負けな気がした。特に学力の方は……。


「ま、まあいい……ともかく、お前は強いぜ少年! ならばこちらも、奥義を解禁せざるを得ないな!」


「……奥義、だと?」


 不敵に笑うハヴェストの顔はブラフには見えない。……楽観視するつもりは無かったが、やっぱ来るか。くそ、どんな力だ? 状況によってはみんなが片付けるまで耐えるように動くべきか……。


「行くぞぉ! 必殺……!」


 ハヴェストの高らかな宣言に、俺は全ての意識を集中させる。せめて、対処の楽なタイプであってくれよ。見えない攻撃だの不意打ちだのは勘弁だぜ……!


「スピニング!」


 文字通り、その場で猛烈な勢いのスピンを開始するハヴェスト。何だ……あれはPSを発動するための予備動作か何かか? だとしたら、そこから何が……。


「ライトニング!」


 回転は止まらない。それはまさしく独楽のように、猛烈な勢いでグルグルグルグルと…………。



 ちょっと、回りすぎじゃねえか……?


「ブラックホークゥ!」


 かと思うと、回転がいきなりぴたりと止まり、最初にやったように両腕を大きく広げ、足をぴたりと合わせた奇妙なポーズをとる。……待て。さっきのスピンは何のためだったんだ? ライトニングはどこに行ったんだ? そしてホークって何だ、その謎ポーズは鷹のイメージなのか? 細かいとこ言えば、お前はホワイトじゃねえか……?


「シューティングスタアァっ!」


 そうして、それまでの動作がどこに役立ってるか分からないまま、見事なまでの跳躍力で、一気に数メートルほど上空に跳び上がる犬人の姿……おい。まさか、まさかとは思うが、奥義って……。


「キイィィック!!」



 ……ただの跳び蹴りじゃねえか!?



 そう内心で突っ込むが、さすがに声に出してるヒマはなかった。オーラだの電流だの纏ってたりしてる様子は微塵もないにせよ、当たれば普通に強烈な一撃であることに違いはねえ。


 ……うん。まあ、当たればな。

 こう冷静に考察出来ていることから何となく伝わるとは思うが……その、何だ。ぶっちゃけ……。


「……でええぇっ!?」


 余裕で……回避できた。それも、ちょっと横に動くだけで。

 それだけで、軌道を制御できなかったハヴェストは、勢いよく地面に衝突し、けっこう派手に地面を転がっていった。


「お、おおぉっ!? 痛っ、鼻打った! 血ぃ出てる!?」


「……あー。何だ、その……」


 何だろう。何となく、凄く悪いことをした気になってくる。いや、でも……仕方ねえだろ。避けるだろ普通。


「こ、このお……必殺技ってのはなあ、絶対に外れない、もんであって……てか、うえ……気分、わる……回り、すぎた……」


「…………」


 もう何か、色んな意味で可哀想になってきた。特撮かプロレスの理論だろそれ……。

 何かどうしても脱力しそうになっちまうが、遊んでいる場合じゃねえ。この隙に周りを見ると、みんなもそろそろ終わりそうだった。だったら、俺も自分のノルマに集中するとするか。


「くそ……この俺にここまでダメージを与えるとは。恐るべき、不良少年……!」


「お前が勝手に自爆しただけだろ、ってか誰が不良だ!」


「よく分かったぜ。お前を更正するには、ゲンコ一発じゃ足りねえってな。なら……!」


 大仰に手を叩いてみせてから、ゆっくり両腕を広げるハヴェスト。次は何をするんだ、と思って奴の動きを観察していると――()()()()()


「……んな……?」


 目の錯角かと思ったが、そういう訳ではないようだ。二本、三本、四本……どんどん増えていく、ハヴェストの腕。いや……正確には、右腕。

 左半分は微動だにしていないが、右肩の辺りから増殖していく腕。十本はある……これが、こいつの……。


「目ん玉かっぽじって刮目しろ! これこそが俺の、俺だけの能力(ちから)……〈幾百の右腕(ライトアームズ)〉だ!」


 全ての腕が、一斉に決めポーズらしきものを取る。何故らしきかと言うと、内容が全てバラバラで全然決まってないからだ。


「ふっふっふ、まさかこの奥の手まで使わせるとはな。だが、ヒーローは勝利がお約束! 少年の快進撃もこれまでってやつだ!」


「………………」


「声も出ねえか? ふふん、今さら恐れをなしても……」


「……超ダセぇ! 左右でバランスが取れてなさすぎて不格好にも程がある! もし俺がその力だったらって考えると軽く死にたくなる!」


「全否定に俺のハートがブレイク!?」


 いや、だって……だってよ。右腕が増えるって、何だよその力。両腕ならまだいいさ。けど、何事にもバランスって大事だろ。


「良いもん良いもん、見た目と性能に因果関係はないんだよチクショウが!」


 自分でも見た目ダサいの認めてるじゃねえか、ってのは言わないでおいてやる。

 ……まあ、あいつの言う通りだ。ビジュアル的には非常にダサいが、これは面倒なことになったかもしれねえ。いくら何でも、あの数の腕の動きを全て見切るのはかなり厳しいもんがある。


「さあ、ダンスの時間だぜ!」


 先手を打ってきたのはハヴェストだった。不格好な右腕は動きの妨げにはなっていないようで、スピードは先ほどと変わらない。一気に距離が詰まったかと思うと、無数の右ストレートが飛んできた。


「ちっ……!」


 防御しきるのは無理なので、反対側に回り込む。向こうもその動きは想定済みだったのか、すぐさま振り向き、そのついでにフックが飛んでくる。攻めたいところだったが、一度後ろに下がっておく。


「ふ、腰が引けてるぞ少年よ! さっきまでの威勢はどこに行ったんだ?」


「安い挑発に乗るほど馬鹿じゃねえよ!」


 向こうは俺を逃がすまいとするかのように、すぐさま追撃を放ってきた。とにかく、右側にいるのは危険だ。可能な限り、左から攻める。難しそうなら、情けねえが、みんなが片付けるまで耐えねえと……。


「セオリー通りだな。だが、セオリーってのは……対策されやすくもあるんだぜ!」


「おわっ!?」


 ……だが、右腕に気をとられ過ぎた。気が付くと、足元を何かに掠め取られ、俺は一気にバランスを崩してしまった。足払いを喰らったのに気付いた時には、左腕が俺を掴んで引き寄せてきていた。その先には、幾多の拳。


「やべっ……!」


「さあ、おねんねしな!」


 防御も間に合わず、迫りくるハヴェストの拳。回避する術もなく、まともにそれを喰らった俺の全身を、激しい衝撃が襲わなかった。



 ………………。



 …………あれ?


「…………んあ?」


 俺のリアクションが薄かった事に、ハヴェストも首を傾げている。とりあえず、と言った様子でまた右腕が何本か殴りかかってくる。ヒットする。そんなに痛くない。

 こちらもとりあえず、力の抜けていた左腕を振り払う。向こうはすぐさま右腕で掴みかかってきた。掴まれる。が、特に意識せずともあっという間に振りほどけた。


「…………」


「……えーっ、と……」


 これ……まさか、こいつのPSって。いや、いくらなんでもそれは……。


「腕を増やした分だけ、一本辺りの力が弱くなってる……?」


「な! ななな何を言っててているんだだだ! そんな訳がなななな……」


「………………」


 分かりやすい。ひじょーに分かりやすい。


「……聞きてえんだが、何でそんな欠点があるのに自信満々だったんだ……?」


「……普段は銃を使っているから、引き金を引ければ十分だからな。有り体に言えば、殴るために使ったのは始めてだったから、ここまで効果が薄いとは思っていなかった」


 素のテンションになってやがる。けど、ま……そうだと分かりゃ……。


「海翔!」


 そのタイミングで、俺を呼ぶ美久の声。どうやら、周りは片付いたようだ。俺の横に、仲間たちが並ぶ。

 ハヴェストは完全に詰みである事を悟ったらしく、一歩だけ後ろに下がる。俺はそんな姿に、思わず口元が歪むのを感じながら、合わせて一歩だけ前に出た。


「お、おい、少年? 何故、そんな羅刹のような目をしているんだ……?」


「そりゃそうだろ。だって敵だしなあ、あんた?」


 後ずさる男。近付く俺。多分、こいつの言う通りに俺は今、ものすごい悪人面をしてると思う。


「ま、待て、話し合おう。短気は損気、三文の損だと言うじゃないか?」


「おう、分かった。語り合おうぜ、こいつで」


 拳をパキパキと鳴らしつつ、また一歩。俺は前に、奴は後ろに。


「お、落ち着け! ほら、こういう時に許すのは、新しい仲間のフラグじゃないか!」


「残念だが、仲間入りを拒否するって選択肢もあるんだぜ?」


 合わせて動きながらも、少しずつ距離が詰まるように早さを調整して動く。そして、間が1メートル程になったタイミングを見計らって――


「……あ、電波受信した! 故郷のおっかさんが、チチキトクって言ってきてる! 今すぐ帰らなきゃ! ほら、ここは俺の両親に免じて――」


「――聞こえねえなあぁッ!!」


 踏み込み。渾身のアッパーカット、直撃。


「ふぐおおおおぉっ!?」


 実に大袈裟な悲鳴を上げながら、地面を転がっていくサモエド。一回、二回、三回と、俺でも驚くほどに、派手にバウンドしながら後方へ……数メートル程のところでようやく停止したハヴェストは、そのまま大の字に倒れ伏した。ぴくりとも動かない。

 ……一応、当てたらマズイとこは外したつもりだけど、もしかしてやりすぎたか? ……あ、よく見たら左手が動いてやがる。震えながら懐に手を突っ込むと、そこから何かを取り出している。


「む……無念……ここは、戦略的撤退……だ……ガクっ」


 そう言い残すと同時に完全に身体を投げ出すと、ハヴェストの身体はぼんやりと透け始め、対して間を置かずに消え去ってしまった。あれが個人用の転移装置ってやつだったみてえだ……。


 ……そして、何だか良く分からない沈黙が訪れる。


「……ガクっ、って口で言ったよな、今……」


「ええ……言ったわね……」


「止めとこう……深く考えたら負けな気がする……」


「そ、そうね……考えてもたぶん分からないわ……」


 そう、アレに意識を割く余裕は俺たちにはないはずなんだ。早く行こう、アレはきっと敵の罠だ。俺たちの気を逸らすための仕掛けだ。それに嵌まってたまるか、うん、レンの言う通り考えたら負けなんだ。


 ……逃げた以上、またいつか来るんだろうか。出来れば二度とエンカウントがない事を心から祈りながら、俺たちは先生の後を追った。




 ……フラグが立ったのは気のせいだ、うん!






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