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ルナ ~銀の月明かりの下で~  作者: あかつき翔
4章 暁の銃声、心の旋律
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全面衝突

 その後に集まったオレ達は、あの青い石を売っていた奴らの資料を配られた。中には写真まである奴もいる。柱とか新聞社が全力でかき集めたそうだ。夜中のうちにほんと頑張ってくれたんだな。


 みんなの考えだと、石で命令を出すには、ある程度近くにいる必要がありそう……つまり、何をするにも、奴らは街にまだいるっぽいって話だ。だとすりゃ、街を見張ってりゃ、そいつらを捕まえるチャンスだって生まれてくる。

 心配は、オレ達が石に気付いてることがバレてないかってことだけど、ここまで来たら考えても始まらねえ。



 赤牙は、いちばん何か起きそうな中央首都を担当する。首都から離れた他の街にも、空さんが連携して他のギルドとかが向かってるらしい。もちろん、三柱の部下も協力してくれてる。


 三柱とマスター達は、名目上は会議の続きとその護衛だ。ホントに話し合うべきだったことはほぼ解決してるんだけど、カムフラージュってやつだ。

 国には『会議は滞りなく進行中』とだけ報道されている。事件を知るやつが見たら、いかにも隠し事したそうに見えるだろう。


 ……襲撃事件を起こした人たちは、裏で逮捕されてる……ってことになってる。

 実際は、本人たちも納得の上で、逮捕されたフリをしてもらっている。ザックって人とかは、自分たちで何とかしたそうだったけど……今回は、オレ達に託してくれた。

 あの人たちだって、ホントは悪くねえんだ。オレ達がその分もちゃんと頑張らねえとな。



 そんなこんなで、オレ達は……。


「……ふう」


 見回りを始めてから、だいたい5時間は過ぎただろうか。時間はもう真っ昼間だ。


「いつにも増して小競り合いが多いね……」


「ただでさえ、会議のことでピリピリしているんだと思う。内容がはっきりしないから、不安とか苛立ちが高まっちゃってるみたい」


「ま、仕方ないわよね。全部言っちゃったら、色々と台無しになっちゃうもの」


 オレと一緒にいるのは、飛鳥と瑠奈。……それから、新聞社の二人だ。今日はこっちの映像を撮っていきたいそうで、適当なチームに同行することになったんだ。


「敵を動かさないと、見付けるのも難しい……か。結局、レイルさんのやってた事と同じような感じだね」


「だな。ま、あの人が考えてたような犠牲なんかは出させやしないけどよ。そのためにオレ達がいる。そうだろ?」


「浩輝くん……うん、そうだね」


 口で言うほど簡単じゃないのは分かってる。それでも、絶対に犠牲は出しちゃいけねえんだ。本当の意味で元通りにするためにも。


「うんうん、若いって良いわねー。そういう真っ直ぐさ、いつまでも持ってて欲しいわ」


「はは……誉め言葉と思っとくっす。けど、アイシャさんだって真っ直ぐじゃないっすか?」


「先輩は真っ直ぐと言うか、猪突猛進なだけかな……」


「ちょっと、コリンズ君!」


 アイシャさんの抗議に耳を塞ぐコリンズさん。振り回されてると、ちょくちょく反撃したくなるんだろうな……。


「ところでルナ、他のグループはどうだ? まだ何も無いのかよ?」


「うん。うちと一緒で、小競り合いの仲裁とかはしてるみたいだけど、本格的な動きはまだ無いって」


「でも、動くならそろそろだと思うわ。多くの人が街中に溢れるお昼時……騒ぎにするならベストな時間じゃない?」


「そうですね。気を引き締めないと」


 そんな話をしながら、オレは携帯食料を口に放り込む。のんびり飯食ってる時間はねえが、腹が減っては何とやらってやつだ。栄養バランスを考えつつ、腹が膨らむように作られたもんらしいけど……正直、味気ない。


「……あら?」


 ふと、アイシャさんが足を止める。どうやら、電話がかかってきたようだ。少し話すと、アイシャさんの表情が険しくなっていく。これは、もしかして……。


 アイシャさんは二、三言ほど相手に指示を出すと、電話を切った。そして、真剣な表情のままに口を開いた。


「始まったわ。中心街の時計塔付近で、大規模な獣人と人間のグループが抗争を開始したみたい」


 ……大規模な衝突。ついに来やがったか……!


「現状、まだ戦闘沙汰にはなっていないけど、一触即発だって。正確な人数は不明だけど、どんどん増えていってるらしいわ。どうやら、反獣人・人間活動の中心グループがぶつかったみたいね」


「それなら、早く行かねえと!」


「落ち着きなさい。新聞社のメンバーに、この地点まで車を回させてるわ。慌てて走り出すより、よっぽど早く着くわよ?」


 走り出そうとしたオレを引き止め、軽く咎めるような口調で、アイシャさんはそう言った。……そうだ、こういう時は落ち着かねえと。慌てたって事態は解決しねえ。

 それに、誰かが焦ったら、不安がみんなに伝わる。横を見ると、飛鳥がすげえ辛そうな顔で手を握り締めていた。


「大丈夫だ。絶対に、何とかなる……いや、オレ達が何とかするんだ」


「……うん」


「僕たちは、位置的にかなり早く現場に着くはずだ。黒幕捜しも必要だが、まずは衝突を止める事に専念しよう」


 コリンズさんの意見に頷く。そんだけの人数がぶつかりゃ、死人がどれだけ出てもおかしくねえ。それは絶対に止めねえと。


「だけど、どうしよう? そんな大勢の人たち、どうやって止めたら……」


「柱たちも動き出す筈だから、何とかそれまで時間を稼げれば御の字だね。ただ、その手段となると……先輩、何か案はありますか?」


「そうね。私の力を使って、時計塔の上で演説でもしてみようかしら?」


「演説?」


 ルナが聞き返すと、アイシャさんは頷いた。


「私の力は、簡単に言えば音波系なんだけどね。ちょっと応用すれば、声を大きくするってのも可能なの。それを使えば注目ぐらい集められないかな、って」


「……だけど、皆さん、ちゃんと聞いてくれるでしょうか? きっと興奮しているでしょうし……」


「ま、よほど興味深い内容じゃなきゃ、一瞬でそっぽ向かれるでしょうね。最初のつかみさえ上手くいけば何とかなるだろうけどさ」


 オレは聞いてて良いと思ったけど、飛鳥の言うように、頭に血が昇った連中の意識をどうやって集めるかが大変か。一瞬でも気を引けるなら、試す価値はあるんだろうけど……。



 ……待てよ。音波系PSを使った声の拡大?


「アイシャさん。そのPSって、声以外の音でも広げることは出来るんすか?」


「もちろん、朝飯前よ。何か思い付いたの?」


「はい。もしかしたら、普通に喋るよりもみんなの気を引けるかもしんないっす」


「それは……おっと、車が来たみたいね。ひとまず、中で話しましょう」


 ……失敗はできねえ。けど、上手くいくかなんて考えてる場合でもねえ。後は、やってやるしかねえんだ。






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