東柱シューラ・ピステール
「では、あちらの部屋へ。シューラ様がお待ちしています」
「分かりました。丁寧な案内、感謝します」
ぱっと見からしてデカかったけど、中はやっぱり複雑で、少し気を抜くと迷っちまいそうだ。案内されているとき、ずいぶんといかつい男たちがそこら中に立っているのが気になった。カイのネットサーフィン結果によると、ここの警備にはシューラが拾った元傭兵が多いそうだ。今は状況的にかなり警戒が厳しいようで、視線が少し怖い。
で、案内された先には、一枚の扉。そのそばには警備員が一人。……うう、オレが話すわけじゃねえけど、何かドキドキしてきやがった。
オレ達はとりあえず、扉のそばに控えている犬人の男に挨拶した。向こうも軽く頭だけ下げる……言葉はねえけど、たぶん入っていいんだろう。
「失礼致します、ピステール東柱。ギルドよりの使者として、伺いました」
先生が、ノックと共にそう中に呼びかける。と。
「待っていたぞ。遠慮せず、入ってくるがいい」
低音で少し威圧的な、いかにもって感じの声が返ってくる。いよいよ、だな。オレ達は、その声に従って、部屋の中に入っていった。
部屋の中は、何てっか無骨な感じだった。物があまり置かれていないせいで、部屋の中が無駄に広く見える。いや、素で広いんだけど、余計にな。
そんな中、壁に立てかけてある重火器類がいやに目についた。傭兵時代に使ってたもん、ってとこか? エラい人の部屋に見えねえなこりゃ……。
そして、奥にある執務用の机に、そいつが座ってた。
金色の毛並みを持つ狐人の男。歳は、先生より少し上くらいかな。写真だと分かりづらかったけど、めっちゃ逞しい身体してんな。戦いが仕事だったんなら当然かもしれねえけど、ランドさんと同じくらいデカい。
狐人のそばには、二人の男がいた。そいつらも同じく筋骨隆々としている。側近ってとこか。
狐人は、オレ達の姿を見ると、軽く笑って立ち上がった。……立つと余計に威圧的だ。
「遠路はるばるご苦労だったな、バストールからの客人よ。俺が、このクリザローの柱、シューラ・ピステールだ」
狐人、シューラの声に、オレ達はひとまず頭を下げる。その喋り方は、本人の低い声のせいもあって、やっぱり高圧的に聞こえた。
……けど、口調はともかく、思ったより友好的じゃねえか? 空さんの言い種だと、もっと嫌なやつだと思ってたんだけど。てか、バストールからの客人、って言ったよな。
「お初にお目にかかります、ピステール東柱。私はギルドよりマスター代理として遣わされた、上村 誠司と申します。私たちの素性についても、すでにご存知のようですね」
「ああ。今朝方、義兄から連絡があったのでな」
「義兄?」
「うむ。……何だ、聞いていないのか? 大鷲のマスターは俺の義兄だが」
「…………!」
「……は!?」
「何ぃ!?」
「な!?」
「ええっ!?」
先生以外、オレ達は思わず大声を上げてしまう……もちろん、先生も驚いてはいるみたいだ。いや、ちょっと待てって……空さんが義兄? のっけから何てサプライズだよ、コレ!
「(ぎ、義兄って……空さんの妹がこの人の奥さんか、空さんの奥さんがこの人の姉さん……って、ことだよな?)」
「(……たぶん、後の方が正解ね。空さんの奥さん、狐人だもの)」
「(てか、空さんって結婚してんのかよ、美久?)」
「(ええ。あんた達と同い年の子供もいるわ。……そう言えば、確かにちょっと似てるかも、毛の色とか)」
「(そういう情報は、先に教えてくれよ!)」
「(私だって、まさかこんな展開があるなんて思わなかったわよ!)」
「……その様子だと、義兄貴は何も話していなかったようだな」
ぼそぼそと話し合うオレ達を見て、シューラはそう呟き、苦笑する。先生が小さく咳払いをした。
「騒がしくして、申し訳ありません。少し、予想外の話でしたので」
「気にするな。……義兄とは少し、今回の件で揉めていてな。色々と、俺に対する憤りがあるのだろうな」
なるほど。空さんのこいつへの評価が何か辛口だったのは、そのせいか。全くの他人じゃなくて身内、それも義弟ってんなら、そりゃかしこまりゃしねえよな……。
「いきなり話を逸らしてしまって悪かったな。では、早速だが、本題について話すとするか。内密に済ませたいので、ここでの立ち話にはなるが」
そうだ。こう言ったら何だが、空さんとこの男の関係は、今はどうでもいい。
「お前たちが何故ここに来たのか、大筋は理解している。が、詳しくは使者に直接聞け、と言われているのでな。順を追って聞かせてもらおう」
「分かりました。そちらのお二人は……」
「こいつらと外の見張りは俺の側近、昔から気心の知れた仲だ。信頼していい」
「承知しました。では、あなた方も、今は他言無用でお願いします」
そばの二人、鳥人と猫人は軽く頭を下げてきた。昔ってことは、傭兵時代からか。ま、信頼してなきゃ側近なんかにしねえだろうけど。
「マスターから、貴方に伝えるように言われた話は、大まかに分けて三つあります。まず一つ目は……今回の真相についての話です。無論、現状では推論も含まれてはいますが……」
そう断ってから、先生は、昨日話し合った内容……真の黒幕が存在するかもしれない、と言う説をシューラに語り始める。
狐人はたまに相槌を打ちながら、先生の話に静かに耳を傾けている。先生が全てを伝え終わるまで、何も言わずにいたけど……。
「……気に食わんな」
その直後、シューラの第一声はそれだった。その低い声音に一瞬どきっとする……いや、話の流れ的に、オレらが言われてる訳じゃねえのは分かるんだけどよ。
「黒幕がいるかもしれんとは聞いていたが、こうして詳しく聞いてみれば、実に面白くない」
「先ほども申し上げましたが、まだ推論の域を出ない話ではあります。情報も不足していますので」
「分かっている。だが、机上の空論とするには揃いすぎているのも間違いない。ふん、俺の街で工作を行い内乱を起こすなど……舐められたものだ」
シューラは牙を剥き出し、唸った。その獰猛な表情は、政治家ってイメージと遠すぎる。いや怒った顔マジで怖えなこの人!
「では、シューラ殿。彼らを見つけだすことに、協力していただけますか?」
「当然だ。どこの誰かは知らんが、良い度胸だ。必ずあぶり出し、血祭りに上げてやろう……!」
お、おっかねえな……血祭りなんて言葉、国のトップが使うかよ。……でも、これってつまり、協力を約束してくれたってことだよな。
「我々でも、調査部隊を編成する。その上で、ギルドへの情報共有も惜しまん。代わりに、そちらで得た情報も報告してもらうが、構わんな?」
「はい、元より、こちらから申し出るつもりでした。本日もマスターから調査書を受け取っていますので、お渡しします。そして、こちらの必要な情報について纏めたリストを……」
先生が荷物から何枚か紙を取り出して、シューラに渡す。狐人はそれに目を通し、側近の二人に何か指示を出してる。
少しして、側近たちは部屋を出て行った。こっちが頼んだ資料を探しに行ったみてえだ。
……思ったよりトントン話が進んだな。シューラが想像してたよりずっと協力的だし。よくよく考えりゃ、こいつからしてもオレらの提案は助かるもんなのか。空さんの身内ならギルドについてもよく知ってるだろうしな。
「さて、この件については、ひとまずこの辺りで良いでしょうか?」
「うむ。後は互いに調査を進めていくしかあるまい」
「ええ。……それでは、次の話、もうひとつの本題に移らせてください」
ん? なに言ってんだ、先生。今の話が本題なんじゃねえのか? 犯人を捜すの手伝ってくれってのと同じくらいに大事な話って……。
「西首都への武力行使も厭わないと言う宣言。それを取り消していただきたい」
『!』
「………………」
シューラの目つきが、少しだけ険しくなった。
……そうか。真犯人をどうするって話と、それは別なのか。犯人捜しを手伝ってくれても、その間に西首都を攻められちまうなら……。
「義兄貴の事だ、その話もされるだろうと思っていた。連絡するたびに止めようとしてくるからな」
シューラの声音は低い。だけど、先生はそれでビビるような人じゃねえ。
「今回、西首都で獣人迫害の動きが広まったのは、何者かの陰謀。確証はまだ無くとも、それが正しければ、その責任を負うべきなのは西首都ではないはずです」
「そんなことは、分かっている。だが……返事をする前に、お前たちの感想を聞かせてもらう」
「感想?」
「そうだ。お前たちは、この街を見てどう思った? そうだな……そこの白虎の小僧」
「……へ? お、オレっすか!?」
いきなりの指名に、オレは思わず飛び上がりそうになった。けど、どう考えても白虎はオレしかいねえ。
ま、マジかよ。何も言わねえつもりだったのに。もし怒らせたりしたら、先生の大目玉どころじゃ済まねえぞ……!
「難しいことは考えずとも良い。素直に、思ったことを言ってもらえれば構わんし、それを咎めはせんことを約束しよう」
「え、えっと……」
先生の方を見ると、小さく頷かれた。……腹くくるしかねえらしい、畜生。
「その、何てっか……窮屈、だと思いました」
「ほう、窮屈だと?」
「は、はい。獣人も人間も、みんな気を張り詰めてて……息苦しいってか、そんな感じで」
緊張で、口の中はカラカラだ。くそ、エラい人と話すなんて、オレが一番向かねえのに。
「そうだ。今、街の中は、極度の緊張状態にある。昨日までの隣人が、今は互いにいがみ合う毎日……種族が違う、ただそれだけの理由で」
「………………」
「今月に入り、暴行事件が何件起きたと思う? いつもは平和な、俺の治めるこの街で。被害に遭った者たちには、何の罪も無かった。襲われた理由はただ一つ。人間であっただけだ」
オレは、周囲を警戒しながら街中を歩いていた人間の姿を思い出す。オレらでもイヤな気分になったのに、この街に住んでる人は……そして、この街のリーダーなこいつは?
「そして、西首都では逆だ。獣人であるだけで襲われた者が多数……中央でも、いつ大規模な衝突が起こるか分からん状態だ。まだ死者が出ていないのが、奇跡的だと言っても良い」
シューラの声が、少しずつ大きくなっていく。それが良くない流れなのは分かっても、オレ達にはどうにもできねえ。
「俺とて、全ての人間を恨むほど、馬鹿になったつもりはない。憎むべきは、この状況を生み出した連中、そして、真創教だ」
狐人は牙を噛み締める。我慢できなくなったって感じで、はっきりとキレた目をしていた。
「それにも関わらず、あの男は……レイルは、あの馬鹿げた宗教を取り締まろうとすらしない! 国が内側から崩れようとしているのに、何故それを防ごうとしないのだ!!」
「ッ……」
シューラの怒号が部屋中に響く。くそ、これは……本当にマズいんじゃねえか?
「確かに、裁かれるべきは黒幕だろうさ。だが、レイルが早期に対策を練っていれば、ここまで悪化はしなかった。それでもお前たちは、本当に西首都に全く責任がないと言えると思うか?」
「だから、武力による制裁を加えると?」
「その通りだ。当然、そんなことは俺も望んでいない。だが、荒療治であろうとも、これ以上の放置はできん。迅速に鎮めなければ、いつどのような惨事が起こっても不思議ではないのだ!」
「だ、だけどそんなこと……話し合いでどうにかできないんですか?」
「それを試していないと思うのか? 俺とて、西首都には何度となく勧告を行った。だが、レイルの回答は全て、全く要領を得ないものだった」
そう言ったシューラは、どこか疲れてるようにも見えた。
「け、けど、力づくで真創教をねじ伏せたりしたら、もっとお互いを憎むようになるんじゃないっすか?」
「ふん……そうかもしれんな。が、ならば放置すればそうはならないと? 放っておいても、憎しみはどんどん増していくのだ」
「それは……」
「それでも、あなたが西首都を攻めるのは、黒幕の狙いなんですよ!」
「だからこそ、おびき寄せる餌になる。来ることが分かっているならば、対策は立てられるからな。西首都を落とした後、そいつらを迎え撃てば良い話だ」
くそ。こいつ、本気で言ってるのかよ? 相手がどんな奴らかも分かってねえってのに。
「何と言われようと、俺にレイルを許すことはできん。この期に及んで、ロクな対策すら立てないあいつを。何人も、罪の無い民が被害を受けていると言うのに……! 無論、この状況を生み出した連中は、さらに許せん!」
「………………」
「レイルが途中で俺の要求を呑むならそれでよし。そうでないなら、西首都を攻め落とし、その管理を俺が行ってでも、あの異教を排除する」
その表情を見て、感じた。この男はこの男なりに、本気で国のことを考えてるんだ。
けど……冷静なように見えて、やっぱり頭に血が上ってる。相手をどうするか、ってのが先に来ちまってるんだ。空さんが言ってたのは、こういうところかよ。
「俺は、全てを理解した上で、あの宣言を出したのだ。今さら、それを曲げるつもりはない」
「だけど、その時には黒幕とかの話は無かったんですよね? 私たちと協力して、黒幕さえ捕まえてしまえば、そんなことやらなくても済むはずでしょう?」
「確かに、捕まえてさえしまえば、上手く鎮める事も不可能ではないだろう。だが、捕まるまでに時間がどれだけかかるか分からない……その間に、犠牲が出ないとは限らないのだぞ?」
「それは……そうですけど」
「では、西首都の制圧において、全く犠牲を出さないことが可能だと思いますか?」
「! …………」
先生が挟んだ、シューラが黙った。……そんなの、オレだって分かる。よっぽどじゃない限り無理だ。傭兵だったシューラに、それが分からないってことはないだろ。
つまり、犠牲は覚悟でこうするしかないって思ってたはずだ。それなのに、犠牲が出るからって他の考えをダメって言うのは、矛盾してっからな。
「それに、黒幕は相当な規模の組織であると予測されています。西首都を制圧した直後、衰えた国力で未知の黒幕を相手にするとなれば、それが大きな犠牲を生む危険は高い」
「む……」
「シューラ殿が仰られた通り、課題はあります。ですが、もしもこれが上手くいけば、犠牲の無い結末を迎えることができるでしょう。そのために……力を貸してはいただけないですか?」
ここぞとばかりにたたみかけていく先生。よし……さすが! 小さく唸るシューラの様子からして、あと一押しって感じだ。
「……俺とて、何も犠牲が出ないならばそれが一番だ。だが、その案も賭けであることは間違いなかろう。義兄貴の能力は信頼しているが……今すぐに頷けるほど、軽い問いではない」
「……そうですね。では、宣言の取り消しまでは、この場では求めません」
「え? せ、先生?」
「ひとまず延期してもらえれば良い。私たちの三つ目の話を聞き入れてもらえるならば、ですが」
いきなり提案のランクを下げた先生に、シューラもちょっと目を細めた。
「何だ、その三つ目の話とは?」
「今月の三柱会議、行われていないそうですね」
……三柱会議?
「(そのまんま、柱の三人が集まる会議らしいぜ。普段は月に一度行われてるみてえだな)」
「(あー……)」
オレの疑問には、小声でカイが答えてくれた。聞く前から教えてくれるのは有り難い……ちょっとバカにされてる気もするけど、実際分かってなかったから文句は言えない。
「状況が状況だからな。ダリス殿は召集をかけたが、レイルも応じなかった。……では?」
「ええ。――今から一週間後に開かれる、臨時の三柱会議に参加していただきたい」
シューラとの話が終わり、オレ達は白い犬人の側近に案内され、来た道を引き返してく。
「二時間後に、またお越し下さい。希望された資料を整理しておりますので」
「ええ、了解しました。お見送りいただきありがとうございます」
「いえ。主の命ですので」
……正直、堅苦しい側近の人が側にいるのはだいぶやりづれえ。めっちゃ淡々としてて、必要なことしか喋らねえ感じだし。まあ、外に出るまでのガマンだな。
外に出ると、爽やかな春の風がオレの獣毛を揺らす。……空気がやたらと気持ちいいぜ。ずっと息苦しかったからな……などと思っていると。
「ふーう。皆さん、お疲れさんっす。大変だったでしょ、あの人と話すの」
「……へ?」
「けど、あれでシューラさんも、いろいろ悩んでんですよ。荒っぽい人だけど、そこは誤解しないであげて下さいね?」
外に出た瞬間、急に雰囲気を180度変えた見送りの犬人。さっきまでの堅さが嘘みたい、気持ち良さげに大きく背伸びしてる。……え、えっと?
「あ、喋り方っすか? いやぁ、さすがに軽すぎるって、シューラさんに勤務中は真面目にやるよう言われてるんで。でも、あんな感じでやるの、めっちゃ肩が凝るんすよねぇ」
「……今も勤務中なんじゃ?」
「まあ、外に出た時ぐらい勘弁っす。バレなきゃ良いんだし。あ、告げ口とかは勘弁っすよ?」
茶目っ気を見せて笑う犬人。……ひょっとして、口数が少なかったのは、ボロが出るからだったり……?
……改めて見ると、ピアスだの、青い石の首飾りだの、色々アクセサリーつけてんな。アトラほどじゃないけど、チャラさが見える。
「けど、オレも外で話は聞いてましたが、臨時三柱会議……ギルドも、この状況下でなかなか思い切ったもん思い付きますね」
「……コホン。この状況だからこそ、トップがまとまる必要がありますから。そう思ったからこそ、シューラ殿も受け入れてくれたのでしょう」
「ま、あの人もさすがに面食らってたみたいっすけど」
シューラは、結局のところ、先生から出された提案を全て受け入れた。武力行使宣言の取り消しは、三柱会議とやらが終わるまでの一時的なもん、ってことになってるけど。
当事者の問題は、当事者が話し合うしかない。それが、空さんの出した結論だった。と言っても、対立の真っ最中で話し合いなんて、そう簡単じゃない。だから……今回は、ギルドが間に入って話させるってことだ。
「けど、正直言っちゃうと、オレは微妙な気分っすね」
「微妙?」
「ええ。……オレは、西首都の人間がどうにも許せないんで。怪しげな宗教なんぞに騙されて、多くの人を傷付けて。オレの知り合いにも、大怪我で入院してる奴だっているんすよね」
「あ……」
口調はそのままだったけど、すげえ怖い目をした。そう、だよな。この国に生きてるなら、被害は身近なもんだ。周りの誰かが傷付いたりしたら、怒るのは当たり前だよな。
「っと、すみません、水を差すようなこと言っちゃって」
「いえ。あなたのように憤りを感じているのが当然なのでしょう。部外者の私たちですら、良い気持ちはしませんから」
「はは……そう言ってもらえると有り難いっす。オレだって、平和になるならそれが一番とは思ってますからね」
誤魔化すように犬人は苦笑する。……たぶんこの人は気のいい人なんだろう。それでも、さっきみてえな目をするぐらい、みんなが怒ってる。
「長々と引き止めて申し訳ないっす。とにかく、皆さんの考えが上手くいくよう、応援してるっすよ!」
最後に大きく手を振ってから、犬人は柱宮の中に戻ってった。……何歳なんだろう、あの人。