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あれから2時間ほどたち、入学式は終わった。


会場から出てきた生徒たちは抜け殻のような顔をしている。


なぜそのような状態になったのか、理由は学校お馴染みの校長先生の長話である。


2時間のうち1時間半は喋っていたんじゃなかろうか、無、ひたすらに無である。


せっかく新入生の名前の読み上げがあったので覚えようとしていたのにかき消されてしまった。知っている名前があったような気もしなくもないが今はそれどころではない……あとおしりが痛い。


「クッソ長かったな、校長の話」


「なんだろう、某最強の先生の技をくらった気分だ」


蓮が話しかけてくれたお陰で考えることすら放棄していた脳が動き始める。


その後、教室に戻り今後の流れの説明を受けたあと色々書類をもらい、各自解散という事になった。


蓮と話をしながら帰ろうとしていると


「恵〜写真撮るぞ〜」


狭山のやつが校門の辺りでカメラを構えていた。


「恵のお父さん…じゃないよな?若すぎるし誰だ?」


「あ〜兄貴だよ」


「兄貴!?ほげ〜珍しい〜、てことは恵の両親結婚してんのか?」


親がヤクザであると知られたくないので、狭山との関係は兄弟ということにしている。

この世界において兄弟というのはとても珍しい。

以前も説明したように、この世界の女性は1人産むと子供を相手の男性に預け、別の男性とまた子供を作る。これが一般的な流れである。

だが、ちゃんとこの世界の男女も恋に落ちたり、愛し合ったりするため、結婚という形を取り、その人とだけ子供を作るということも出来る。

しかしこの世界では男女で深い仲になったりすることは珍しい。女性側が割と冷めやすいからである。


そのため、どこの家も基本一人っ子である。

しかしうちの両親は実際に結婚している。母は俺が生まれて直ぐに亡くなってしまったのでこの世界での愛し合う男女という構図をあまり理解していないが、父いわく本当に仲の良い夫婦だったらしい。


「おー恵、もう友達できたのか〜早いな〜」


割と兄貴って設定にノリノリなんだよな狭山…


「よろしくっす、小清水 蓮って言います!」


「おう、よろしく」


2人は握手をする、が


「ん?っていてっ痛いっす!お兄さん!」


「あっごめん、嬉しくてついな」


笑顔なのにグラサン越しに分かるぐらい目が笑ってない


お嬢にまとわりつく害虫共は殺す


とでも思ってんのかな〜

中学の頃にも同じことをしていたので慣れっこである


「ほら写真撮るんだろ?」


「おっそうだったそうだった、ほら蓮くんも並んで並んで」


「ハハッ……恵のお兄さん怖ぇな……」


「馬鹿なだけだ、気にすんな」


何枚か写真を撮り、蓮とは別れて、狭山と帰路に着く。


「お嬢、友達を作るのは結構ですけど気をつけてくださいよ」


「なんで?」


「お嬢は分かってないんですよ、男ってのを」


狭山は真剣な顔で語り出す。


「いいですか?高校生ってのは特に盛りの時期なんですよ、男どもは常に性欲に頭を支配されてる猿どもだと思ってください」


「猿って……」


「お嬢は確かに身体も鍛えてるし、メイクの技術が高いんでかなりの男前に見えますけど、メイクを剥がせば可愛らしいただの女の子なんです!」


「…」


「お嬢はかなりの腕っ節を持ってることも理解してますが、この時期の男はかなり成長して単純な力では敵いません。もしバレた時、襲われでもしたら勝てませんよ?その傷の時だってどれだけ心配したことか」


いくらそういった行為が極刑であるからと言って全く起こらないという訳では無い。


「本当はお嬢には女の子として生活して欲しいんですよ俺、これは組長も同じだと思います。でもみんなあの時のお嬢を知ってるから全力でお嬢の願いを尊重しようとしているんです、くれぐれも危ないことはしないでください」


いつもおちゃらけた狭山からは信じられないほど真面目な顔を見て俺は今まで守られてきたんだなということを自覚する。


「分かってるよ狭山、ありがとうな、お陰でたるんでた考えが引き締まったよ、でもそんなに心配してくれなくても大丈夫、ちゃんと約束は覚えてるから」


父や組員との約束


佐藤 恵が男として生きるのは高校生まで


それまで俺は前世では出来なかった高校生活を男として全うする。

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