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65話 ブラックスポット研究所



「ブラックスポット研究所……一体それはなんなんだ?」



「その前に、まずはワタクシの存在証明をしなければなりまセン」



 ニーヨンはそう言うと、おもむろに手持ちの鞄から小さな瓶を取り出した。

中には水と一緒に数匹の小魚が入っており、元気に泳ぎ回っている。



「少々汚いですが、失礼しマス」



 魚が泳ぐ瓶の蓋を開けたニーヨンは、口を開けて舌を出し、唾液を一滴だけ瓶の中に垂らし、瓶の蓋をした。



 …………。



 ピチピチッ! ピチピチピチピチッ!!



「えっ?」



 しばらく様子を見ていると、瓶の中の魚が苦しむように飛び跳ねだす。

そして徐々に動きが鈍くなり、最終的には水面にプカリと浮いて死んでしまった。



「この魚はスモールエビルバス。エビルムーン帝国内の川や沼、生活水路など、よっぽど水質が汚染された所以外はどこでもいマス。通常、この量の水に唾液が一滴混じったところで死ぬようなことはありまセン」



「いやでも、めちゃめちゃ苦しみながら全滅したんだが」



「そういうことDEATH」



 どういうことだよ。



「ワタクシは、サンブレイヴ聖国のブラックスポット研究所で行なわれたトキシロイド計画により開発された、猛毒の体液を持つ人造人間なのデス」



「な、なんだって……!?」



 ……。



 …………。



「な、なるほど。毒耐性を高め、攻撃に転用可能な猛毒の身体を備えた人造人間の開発計画か……」



「ワタクシはその24番目……トキシロイド計画、最後の被検体でシタ」



 サンブレイヴ聖国にあった『ブラックスポット研究所』という極秘の研究施設で育ったというニーヨン。

そこでは『トキシロイド』という、猛毒を持つ人造人間の開発が行なわれており、ニーヨンより前の被検体たちは実験に耐え切れず死亡。

そして24番目の被検体であった彼女が遂に適合し、世界で初めてのトキシロイドという種族が造り出された。



「トキシロイドとして生を受けたワタクシは、研究所で様々な人体実験を受けまシタ。その中の一つに『ヴェノムポッド』という、毒を持つ魔物を集めたエリアがあり、そこで一定期間生き延びるというものがありまシタ」



「いわゆる蟲毒ってやつか……」



「しかし、実験中にヴェノムポッドが魔物たちによって内部から破壊され、中にいた猛毒の魔物たちが研究所内にあふれ出しまシタ」



「おお、パニックホラー的な展開……」



 ニーヨン以外の研究員は毒耐性が無く、魔物に襲われて一夜のうちに施設は稼働不可能な状態に。

毒消しのポーションを使う事の出来た一部の研究員たちがなんとか対処しようとしていたらしいが、逃げた魔物同士の毒が反応し、既存のポーションでは効果が無い新たな毒が生まれ、結局研究員たちは全滅したという。



「ニーヨンはその後どうなったんだ?」



「研究所にあった食料で生活していたのですガ、ある時研究所が火事になりまシタ」



「火事?」



「サンブレイヴ聖国軍が、研究所に蔓延する毒物と魔物を、施設ごと焼却しようとしたらしいデス」



「……そ、そんなことが」



 オレの師団にはそんなことがあったと聞かされていないし、師団長会議でも聞いたことが無い。

おそらく帝国軍の暗殺部隊のような、表には出てこない国内の問題を処理する奴らがいるのだろう。

将軍を務めるインロック義父さんは知っていたんだろうな……。



「燃える研究所からなんとか逃げ出したワタクシは、情報を消すために軍の人間から狙われることになりまシタ。しかし、聖国内にいたアニスター共和国の関係者などの手を借りテ、国外に脱出。今はサンブレイヴ聖国も手が出せないエビルムーン帝国で暮らしていマス」



「なるほどな……ニーヨンは、今は幸せなのか?」



「とっても幸せデス。帝国ではお仕事もしていマス」



「ほう、それは立派だ。デスティニーのプロフィールには最終兵器がどうとか書いてたよな。実際どんな仕事やってんだ?」



「ワタクシを造り出し、過酷な実験を強制したサンブレイヴ聖国軍のゴミどもを抹殺する仕事DEATH」



 ……んん~?



————  ――――


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