64話 極秘会合
「……よし」
『マッチング承認のスタンプを送信しました』
「さあ、鬼が出るか蛇が出るか」
トキシロイドとかいう謎の種族の被検体を自称する†蠱毒姫☠ニーヨン†。
明らか黒歴史製造系の電波女という感じのプロフィールだったのが、インロック義父さんの謎の狼狽ぶりで若干の真実味を帯びてきてしまったので、少し話を聞いてみることにした。
ピロンッ♪
「お、早速メッセージが来たぞ」
オレが残した足跡に反応して即座にマッチング申請を送ってきたので、向こうもデスティニーを絶賛使用中ということだろう。
『承認いただきありがとうございマス。ワタクシはトキシロイド被検体No.0024。ニーヨンとお呼びくだサイ』
「なんか帝国軍のゴーレム機兵が書いたみたいなメッセージだな」
こちらも自己紹介をして、ブラックスポット研究所の事や彼女の出自に興味があってやりとりをすることにしたと正直に話す。
本当は女性的な魅力とか、プロフィールを確認して好みに合いそうだからお近づきに~みたいなほうが健全だとは思うが、向こうもそういうことを望んでいるような雰囲気じゃないしな。
『ルイ、アナタは正直で誠実な人デス。今すぐにでもアナタに真実を伝えタイ。しかし、この通信もいつ聖国に傍受されるか分かりまセン。そしたらワタクシだけでなく、ワタクシから真実を聞いたルイも消される可能性がありマス』
「いや消されるレベルのヤバい事なのかよ。めちゃめちゃ巻き込まれ事故じゃんそんなの」
女の子と遊ぶためにマッチング魔道具使ってたら自国の裏側を知ってしまい、命を狙われる……さすがにそこまでは予想できないぞ。
『ルイ、エビルムーン帝国に来ることは出来ますカ? 帝国ならサンブレイヴ聖国は手を出せまセン。通信傍受の及ばないお店も知っていマス』
なるほど、たしかにサンブレイヴ聖国の闇的な事を語るならエビルムーン帝国に行っちまえば良いんだもんな。
とはいえオレはサンブレイヴ聖国の軍属なので、何かあったら逃げも隠れも出来ないのだが。
「まあいいや。自称トキシロイドとかいうのも気になるし、会ってみるか」
こうしてオレはニーヨンと会うことを約束し、彼女から指定されたエビルムーン帝国のとある店までのアクセスを調べておくことにした。
―― ――
「ここか……」
〝ポイズン&バー・ヴェノムラボ〟
エビルムーン帝国の研究都市『アンダーソウ』のとある地下街にある深夜営業の酒場。
ここがニーヨンとの極秘の待ち合わせ場所だ。
「てかなんだよポイズン&バーって……毒も提供してんの? アングラな自殺スポットとかじゃないよな?」
相手はもう到着しているらしいので、恐る恐る店の中へと入っていく。
「す、すごいなこれは」
店の中には店員の指紋認証、網膜認証、声帯認証の3重構造を突破しないと入れないエリアが。
更にニーヨンがいる個室は店の中でもVIP的な扱いのプレミアルームらしく、かなり厳重な情報漏洩対策がされているとのこと。
まだまだ都市伝説的なところを疑っていたが、ここまで厳重だとマジで本物感が出てきたな……
「ルイだ。ニーヨン、中に入れてくれ」
「合言葉をお願いしマス」
「……『毒を以て毒を制す、それってあなたの感想ですよね』」
「解錠しまシタ。どうぞ中へ」
「なんなんだよこの合言葉」
事前にニーヨンから教えられていた合言葉を唱えて彼女がいる室内へ。
中に入ると、そこには一人の華奢な少女が席に座ってフラスコ瓶のような謎の容器で謎の真っ赤なドリンクを飲んでいた。
髪も肌も雪のように白く、血の気が感じられない。
しかし、不思議と彼女からは儚い生命力のようなものを感じた。
「ルイ、よく来ましたネ。ワタクシはトキシロイドのニーヨン。さあ、今宵はサンブレイヴ聖国の闇、ブラックスポット研究所についてお話ししまショウ」
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