62話 敵国幹部、泥酔
「それでぇ、メリーのライブで警備を手伝ってもらったときに、帰りのお見送りで暴走したお客さんからルイさんが守ってくれてえ……あの時のルイさん、かっこ良かったなあ」
「そう、ルイはやるときはやるんだ。我もな、前に悪質なストーカー行為を続けていたヴァンパイアのドラ息子をな……」
「も、もういいから。恥ずかしくなってきたからもうやめてくれ」
「いえ~いルイさ~ん。飲んでますか~?」
「おい全然減ってないじゃないか。新年なんだからもっと飲め。飲んで初代魔王様に杯を捧げろ」
「いやオレエビルムーン帝国民じゃないから」
カーミラたちとの飲み会が始まってはや数時間。
そろそろ宴もたけなわからの締めにいきたい所なのだが、まったくもってそんな雰囲気になっていない。
「あっラージャお前、お酒ちょい残しじゃないか?」
「……え? な、なんですかあ?」
「ちょい残し~は倍返し~♪ はいどうぞっ!」
「ええ……なにそれぇ……」
ラァ子が飲んでいたグラスになみなみと追加される酒。
さすが帝国軍十三邪将、身内にも容赦のないアルハラっぷりである。
「ラァ子、結構飲んでる割にはあまり酔ってなさそうだな」
「……ナ、ナーガ族ってお酒には結構強いんですう。蟒蛇とも言いますしねえ」
「うわばみねえ」
蟒蛇ってのは大蛇のことで、俗語では大酒飲みのことをそう例えたりする。
ナーガ族はスレンダーな体躯をしているが、大食いだったり大酒飲みだったりする人が多いらしい。
「一体その細い身体のどこに入ってってるんだか」
「……ふふふ。ルイさん、触ってみますぅ?」
「あ? 何を……っておい!?」
「ここにたくさん入ってますよお」
唐突にオレの手を取って服の下に引き込むラァ子。
少しひんやりとした弾力のある感触が手に伝わってくる。
「す、すごいなこれ。パンパンじゃねえか」
「ナーガ族は胃袋がすっごい伸びるんですよお。肋骨もお腹の具合によって横に広がってぇ」
「ん~? あ~っ! カーミラ様! ラージャがルイさんと乳繰り合ってますっ!」
「おい何やってるんだそこの二人!」
「い、いやこれはっ」
向かいの席で飲んでいた二人がこちらの異変に気付いて詰め寄ってくる。
二人とも相当酔ってる感じだな……ていうか今までメリアスの年齢を知らなかったけど、最低でも酒が飲める年齢だったんだな。
アルラウネ族はよく分からんから普通にオレより年上ってこともあるかもしれない。
「ナーガ族の生態調査をしているだけだ。大量の飲酒による腹部の膨満状態を触診してだな」
「ふぎゅっ!? ル、ルイさぁん……そんなにお腹を押されると、わ、わたし……」
「あっ悪い、つい力が入って」
「興奮してきちゃいますぅ……!」
「こいつも酔ってんなだいぶ」
あと相変わらず下半身の蛇尾がオレの足に巻き付いてきていて全然抜けられそうにない。
ちょっとトイレ行きたいんだけど、離してくれないか?
「ルイ! そんなに腹が触りたいなら我のを触らせてやるぞ!」
「カーミラ様が触らせるならあたしのお腹も見ていいですよっ! アイドルのスベスベくびれボディですっ!」
「やめろ! 本格的にお前のファンから命を狙われちまうから!」
服を捲りながらこちらに迫りくる敵国の酔っ払い幹部どもを押さえつけ、大きなため息を吐く。
酒癖の悪い酔っ払いに辟易するのはどこの国も同じようだ。
サンブレイヴ聖国のハチェットさん、あなたのことですよ。
「……フランキスカと過ごした大晦日が1番平和だったな」
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