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61話 十三邪将飲み会



「それでは、エビルムーン帝国の繁栄を願って……献杯!!」



「「けんぱーい!!」」



「葬式かよ」



 新年あけましておめでとうございます。ルイソンです。

年末年始休暇もあと数日で終了という日に、オレはエビルムーン帝国の帝都ヘルゲイトにある酒場に来ています。

一緒に飲んでいるのはエビルムーン帝国十三邪将と呼ばれる、魔王率いる帝国軍の幹部『鮮血のカーミラ』、『時止めのラージャ』、『偶像のメリアス』の3人の魔人族。



「新年になってしばらくの間はな、エビルムーン帝国を建国された初代魔王様に捧げるために献杯と言うのだ」



「そういうもんなんだな」



「……ル、ルイさんはアニスターの人だから知りませんよねぇ」



 国が違えば文化も違うってか……さすがにオレが敵国の初代魔王に献杯したらおかしいのでここはサンブレイヴ聖国の初代聖王あたりにしておこう。

初代聖王が誰か知らんけど。



「ル、ルルル……ルイさん! あああ、あたしの目の前に晴れ着姿のカーミラ様があっ……!!」



「落ち着けメリアス。あれはお前の職場の先輩だ。というか立場的には同等だろ」



 カーミラと同じく十三邪将の身分でありながら彼女を崇拝しているメリアスが興奮を抑えきれずにオレに対して昂った感情のガス抜きをしてくる。



「それにしても、ルイとメリアスはいつの間にか随分と仲が良くなっているじゃないか」



「……メ、メリアスさん。あまりルイさんにベタべタくっ付かないように」



「え~? なんでラージャさんにそんなこと言われないといけないのかな~」



「……こ、殺すぅ」



「やめなさいめでたい新年に揉めるのは」



 一体、なんでこんなことになっちまったんだろう……



 ―― ――



「あと数日で休みも終わりか……」



 第8師団の新年会も無事に終わったし、後は休暇最終日にある師団長が参加するお堅めの新年会を残すだけ。

それまでは出かける用事も無いし、家でゴロゴロしていよう。



「そういやこの時期限定で喫茶ハロゥで甘酒出してるんだったな。ちょっと飲みに行ってくるかな……」



 ピロンッ♪



「ん?」



 そんな感じでダラダラ過ごしていたところ、マッチング魔道具『デスティニー』に届いたメッセージ。



「えーと、これは……カーミラからか」



 『新年あけましておめでとう。良かったら明日辺り、仕事が始まる前に一緒に飲まないか?』



「カーミラと飲みか……悪くないな」



 ピロンッ♪



「ん? またメッセージか……今度はラァ子から」



 『ルイさんあけましておめでとうございます年末のエビマとっても楽しかったです今年もよろしくお願いしますよかったら明日一緒に遊びませんか』



「相変わらずのノー息継ぎメッセージだな」



 しかしどうすっかな……二人から同じ日にお誘いが来てしまった。

どちらかを断って遊んだら後々バレそうなんだしなあ。



 ピロンッ♪



「またか……今度はメリアス? 何の用だ一体」



 『ルイさんあけおめで~す! この間のライブのお礼がしたいので、明日ちょっと会えませんかっ?』



「…………」



 これもしかして口裏合わせて同時に送ってきてる?

誰の手を取るか予想して遊んでやがるのか?



「いやもう、変にトラブったら嫌だからここは正直に相談しよう」



 というわけで、3人からそれぞれ同日にお誘いがあってどうしたら良いか分からない旨をメッセージで伝えた結果、こうして十三邪将の飲み会に参加するみたいな感じになってしまったという訳だ。



「ルイさんルイさんっ! これ、昨日言ってたお礼です!」



「ああ、ありがとう……なんだこれ?」



「あたしのグラビア写真集です! 結構人気なんですよ~」



「さいですか」



 アルラウネ族のグラビア写真集なんて初めて貰ったわ。

ていうかこれ、冷静に考えて写ってるの敵国の幹部じゃん。こんなのサンブレイヴ聖国に持ち込めるかな……



「……そうかそうか、ルイはそういうのが好きなんだな」



「……しょ、植物系女子が好みだったんですねえ。人狼族なのにぃ」



「いや違う。そういうんじゃない」



「この間も~『一生メリーを守ってやる』とか言われちゃって~ルイさんってばもう~! 好きになっちゃいますよっ」



「ふーん」



「……こ、殺」



「ライブの警備の話だよ!!」



 オレは敵国の幹部3人を相手に新年早々タジタジだった。




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