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6話 初デート反省会



「という感じで、敵国の幹部と普通に食事をして、お酒まで飲んでしまった……」



「まあ、楽しそうで良いじゃないの~」



「良くない。あの『鮮血のカーミラ』だったんだぞ」



 マッチング魔道具で知り合ったミラさんとの初デートを終えた翌日。

オレはサンブレイヴ聖国のとある喫茶店で昨日の反省会をしていた。



「エビルムーン帝国軍で幹部をしていても、女の子は女の子なんだよ~? ルイソンくんと同じで恋愛にうつつを抜かしたいものなんですよ~」



「うつつを抜かすはバカにしてるだろ、オレごと」



 〝喫茶ハロゥ〟



 サンブレイヴ聖国にあるスラム街のとある路地裏でひっそりと営業する知る人ぞ知る感じの喫茶店。

昼はハーブティーと手作りのケーキが美味しい小洒落た空間を演出しているが、夜になるとスラムを牛耳る裏稼業の人たち御用達の酒場になるという、中々にクセが強い個人経営の喫茶店だ。



「バカにしてるだなんて心外だな~。私はいつでもルイソンくんのことを応援しているよ?」



「さいですか」



 さっきからオレをいじって楽しんでいるこの女性店員はリトルフット族のハチェット。

喫茶ハロゥを経営するマスターの娘で、夜の酒場を担当しているマスターに対して、昼の喫茶店は彼女が主に対応している。

スラムの孤児だった頃、数日飯が食えていなかったオレにタダで食事をさせてくれたことをきっかけにこの店に通うようになり、地下の闇武闘大会で優勝した時なんかは盛大に優勝記念パーティーを開いてくれたりもした。



 ハチェットはその頃からの幼なじみ……いや、そんな良いもんじゃないか。

腐れ縁というか、悪友みたいな感じかな。

リトルフット族はその名の通り小柄な体躯をしている亜人族で、身長は大人でも1.2メートルくらいしかない。

ハチェットは年齢的にはオレの一つ上で、初めて出会ったときはオレと同じくらいの身長だったんだけど、気づいたら倍近い身長差になってしまった。



「それにしても、あの†瞬撃の鎧騎士†が拳を交えた敵国の女幹部と仲良くデートかあ……激アツ展開だね~」



「今絶対馬鹿にした言い方だったぞ」



「え~? カッコいいじゃん、†瞬撃の鎧騎士†~」



「ダガー付けるのやめろ」



 聖国軍の部下やオレを養子に迎えてくれたオブシディアン家の人たちにも言えないようなこんな話も、こいつにだけは愚痴ることが出来る。

逆にハチェットからもオレが去ってからのスラムの様子を聞いたり、店が裏稼業の人間たちに利用されているということで国の警備隊に潰されそうになった時に、オレが口利きしてこっそり聖国軍公認で営業出来るようにしたりで、今でもお互いに持ちつ持たれつな関係を続けているのだ。



「それで、どうするの~? そのミラさんとはもう会わないつもり?」



「うーん、そうした方が立場上良いんだろうけど」



「戦争中っていっても、最近はたま~に小競り合いがあるだけなんでしょ~? そのうち停戦して、堂々と付き合えるようになるんじゃない?」



「まあ、そういう可能性が無いとも言い切れんが……」



 長年戦争状態にあったサンブレイヴ聖国とエビルムーン帝国だが、最近は大規模な戦闘は起きておらず、ほぼ冷戦状態。

軍の中にも和平を推し進めるべきという意見も出てきている……とはいえ、今の立場はお互いの国の軍属、しかも幹部なわけで。



「今のところは飲み友達って感じで、これ以上の進展はしないようにだな……」



「え~? それってキープってことじゃん。ルイソンくんのろくでなし~」



「人聞きが悪いなおい」



 ミラさんとマッチングしてからは他の人からの反応は貰わないように魔道具を設定していたけど、もう少し別の方面でも交流を広げていった方が良いかもな……



「まあ、さすがにミラさんが例外だっただけでそうそう帝国の連中とマッチングすることはないだろ」



「あ~あ、フラグ建てちゃった~」



「うるさい」



 オレはハチェットが淹れてくれた美味しいハーブティーで心を落ち着かせながら、一旦仕切り直して新たな相手を探してみようと考えたのであった。




————  ――――


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