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59話 義妹と年越し



「ルイソンお兄様、グラス空いてますの。お注ぎしますわ」



「ありがとうフランキスカ」



 あと数時間で今年も終わるという年末のオブシディアン家。

オレが半一人暮らしをしている屋敷の離れには、大量のお菓子と飲み物、そしてトランプやリバーシなどのテーブルゲームが運び込まれていた。

家族みんなで年越しの夕食を済ませた後、義妹のフランキスカが色々抱えてオレの部屋にやってきたのだ。



「さあ今夜は寝かせませんわよお兄様! 夜通し遊んで、そのまま教会へ初詣に行きますの!」



「お前、去年もそう言って年越し前に寝落ちしたの忘れたのか? そのまま普通に朝まで爆睡してたじゃねえか」



「こ、今年は大丈夫ですわ。わたくし、もう15才ですもの」



 まあ、今が元気のピークだろう。

最近はカーミラたちと知り合って外出することも増えて、それはまあ良い事なんだけどその分フランキスカと遊ぶ時間が減ってしまったような気もする。

年末くらい、彼女が満足するまで付き合ってやるとしよう。



「お兄様、チャンガやりましょうチャンガ」



「いやそれお前、絶対フランキスカが勝つじゃねえか」



「そんなことありませんわ。お兄様にも十分勝ち目はありますの」



 チャンガというのは、木製ブロックを3本ずつ交互に積み重ねたタワーを使用し、順番で途中のブロックを抜いて上に積んでいき、先にタワーを崩した方が負けというテーブルゲームだ。

しかし、このチャンガというのはオレにとって非常に解決しがたい欠点がある。



「……はい、成功ですの。次はお兄様の番ですわ」



「う……ブ、ブロックが上手く掴めねえ……」



 そう、このチャンガは人間族用に作られたものであり、人狼族のオレにとっては小さくて滑る、掴みにくいブロックはかなり不利なのだ。



「こ、これだっ!」



 ガラガラガラ~!!



「やった~! わたくしの勝利ですわ!」



「こんなん逆忖度だろ……」



 人種で操作性に違いが出るのは公平なゲームにならないって。

チャンガ作ってる所はその辺考えて全人種対応のテーブルゲームを開発して欲しい。



「はいお兄様! 罰ゲームですわ! お酒どうぞ~!」



「しょうがねえ……ごく、ごく、ごく……」



「はい飲~んで飲~んで飲んで! 飲んで!」



「ごく、ごく……」



「いっきっき~の~き! はいはいはい!」



「ごく……ごく……」



「飲んでこ~! 吐いてこ~! 力の限り、ご~ごご~!」



「ぷはあっ!! はあ、はあ……」



「いえ~い! ですの~!」



「お、お前……どこで覚えて来たんだそんな掛け声」



 場末の酒場かここは。

最後のやつとかハチェットでもたまにしかやらんぞ。



「学校のお友達が教えてくれましたの」



「うちのフランキスカになんてもんを教えてくれやがったんだまったく」



 お嬢様学校にも意外とはっちゃけてるやつはいるみたいだ。

というか学生が何をイッキするんだろう。お紅茶?



「お兄様、友情イッキやりましょう友情イッキ」



「そんなんまで知ってんのかよ」



 フランキスカと腕を交差させ、お互いのグラスに入ったドリンクを飲む。



「ごく、ごく……ぷは~! これでわたくしとお兄様は一蓮托生、固い絆で結ばれましたわ!」



「いやそれ義兄弟の契りだから」



 ―― ――



「むにゃむにゃ……お兄様、チャンガ弱すぎですわ~……Zzz」



「やっぱこうなったか」



 予想通り、年越し間際で寝落ちするフランキスカを眺めながら酒を飲む。

なんともまあ幸せそうな寝顔を晒して……



「あと数年したら、恋人でも出来て年越しは彼の家で……とか言うんだろうか」



 うーん、なんか想像つかねえな……というかその前にオレが恋人作るのが先……になると良いんだがなあ。



 ゴーン……ゴーン……



「お、年が明けたか。フランキスカ、ハッピーニューイヤー」



「う、う~ん……おにいさま……あけおめ二鷹、三ナスビですの……Zzz」



「なんだそりゃ」



 ……今年もよろしくな。




————  ――――


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