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53話 ツリータワー



「それでは今日の良き一日に、乾杯」



「か、乾杯」



 ラヴリュス先輩とエルフ街で一日中遊び回り、最後にツリータワーの最上階にあるレストランでディナーをいただくことに。

ツリータワーというのは、エルフ街の中心に根を張る木がいくつも絡み合って成長した古代樹を使用した施設で、高さが数十階建ての高層ビルくらいあるエルフ街のシンボル的なレジャースポットだ。



「すごいですねこの建物。まるでジャングルの中というか、木の中に棲んでるみたいだ」



「実際にはいくつもの細長い木が複雑に絡み合い、巨大な束となっているのです。ツリータワーはその束の隙間を埋めるように作られた、いわゆるツリーハウスの集合施設ようなものですね」



「ツリーハウスにしては豪奢ですけどね……」



 オレたちが普段働いている聖国軍の施設が見下ろせるくらい高い。

ここに軍が常駐してれば便利な警備塔になるだろうに。



「ここのレストラン、昔はもっと低い位置にあったんですよ。でもツリーが年々成長していくにつれてどんどん地上から離れていきまして」



「数百年後には王城より高くなってそうですね」



 こういった古代樹はエルフ街の中にいくつか残っており、今でもすくすくと成長し続けているんだとか。

いずれは今いるツリータワーくらいの高さのものが他にも出来上がるのだろうか。



「この古代樹って、エルフ街以外の場所では見ないですよね」



「木から採れた種子を植えたり挿し木をしてもエルフ街周辺以外では根付かないようです。土壌や大気中の魔力濃度など、何か理由があるのでしょう」



 窓と木々の隙間から見える街並みを眺めながら、美味しい料理をいただく。

エルフ族は肉や魚よりも野菜や果物を好むので、肉食中心の人狼族としては少し物足りないが、さすがに良い素材を使っているだけあって満足のいく食事だった。



「さてルイソンさん。本日のデートはどうでしたか? 満足いただけたら嬉しいのですが」



「は、はい。めちゃめちゃ楽しかったです。オレは種族のこともあって、サンブレイヴ聖国内で遊ぶことって地元以外ではあまり無いんですが、こんな色々と楽しめる場所があったんですね」



「聖国に住む亜人族にとっては、エルフ街は中々穴場の観光地なんですよ。ルイソンさんも他の女の子と遊ぶときには是非またいらしてくださいね」



「そうですね……だいぶ参考になりました」



 なんというか、今日一日ラヴリュス先輩と遊んでみた結果、女の子とデートというよりは『女の子と遊ぶ際の作法とオススメデートプラン』を上司から教えてもらった……みたいな感じだった。

亀の甲より年の劫、マッチング魔道具の先輩からのありがたいコーチングということだろうか。



「ラヴリュス先輩は、今までにパートナーがいたことはあるんですか?」



「もちろんありますよ。拙者も若い頃は……あ、エルフ族的にはまだまだ若いですけどね? とにかく、100才、200才の頃は男性をとっかえひっかえですよ」



「そうなんですね」



「一度ダークエルフ族の男性とお付き合いしていた時期がありまして、あの時は大変でした……エルフ族とダークエルフ族はあまり仲がよろしくないですからね。もう家族含めロミータとジュリエッティ状態で」



「ロミータとジュリエッタ……?」



「あ、知りません? 昔からある有名なミュージカルなんですけど」



「オレそういうの見ないんですよね」



 子供の頃、スラム街の広場でやってた朗読劇みたいなやつにハチェットに誘われて観に行ったことがあるけど、普通に途中で寝落ちしたからな。

ちなみにハチェットも寝落ちしたらしい。なんだアイツ。



「それで結局、そのダークエルフの彼氏とはどうなったんですか?」



「色々あってお互い遠距離になったあと、向こうが浮気して終わりました。なんでもナーガ族の女性との出産プレイにハマったとかで」



「いや結局浮気が原因じゃないですか。ってかなにそのプレイ……いや、説明しなくていいです。聞きたくないです」



 さすがエルフ族。500年も生きてると色んなことがあるんだな……





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