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52話 エルフ街デート




「ここがエルフ街か……始めて来たな」



 ごきげんよう皆の者、サンブレイヴ聖国軍第8師団長のルイソンだ。

オレは今『エルフ街』という、サンブレイヴ聖国内のエルフ族が多く住むエリアに来ている。

今日はここでラヴリュス先輩と待ち合わせをして一緒に遊ぶ予定だ。



「それにしても、この辺りに来てからガラッと雰囲気が変わったな……まるで森の中の集落だ」



 エルフ族は昔から自然と調和する生活を送っており、元々エルフ街がある辺りも森林だったという。

エルフ街には太古の魔術で加工された特殊な石材と木材を使用した家が立ち並び、家からは植物のツルが伸び、綺麗な花や果実を実らせている。

そんなエルフ街を眺めながらしばらく進むと、大樹のある噴水広場にやってきた。

その噴水の前に、見覚えのあるエルフ族の女性が立っていた。



「ごきげんようルイソンさん。迷わず来れましたか?」



「あ、はい……なんとか。建物と植物が天然の迷路みたいになってて驚きました」



 エルフ族特有のゆとりのあるエスニックな服を着たラヴリュス先輩は、普段の軍服しか見ていないオレには新鮮だった。



「その服、似合ってますね」



「あら、ありがとうございます。ルイソンくんもお似合いですよ。いつも全身鎧なので新鮮です」



「さすがにあの格好で来たりはしませんよ」



 今回なぜエルフ街に来たかというと、人間族から嫌われている人狼族だが、エルフ族は人狼族に対して特に嫌悪の感情を持ち合わせていないため、ここであれば周囲を気にせず過ごすことが出来るとラヴリュス先輩が提案してくれたからだ。

ただ、オレにはエルフ族の知り合いはラヴリュス先輩や第6師団の団員以外にはいないし、ハルバードは逆にダークエルフの血を引いておりエルフ街では歓迎されないため、今まで来たことは無かった。



「それでは行きましょうか。あ、本日は拙者が完璧なデートプランを考えて来ましたので、お姉さんに存分に甘えて良いですよ」



「あはは……」



「なんですかその乾いた笑いは」



 ―― ――



「まずはここですね」



 〝エルフィングラス工房〟



「エルフィングラスはエルフ族が開発した特殊なガラス素材を使った工芸品なんですよ。温度によって色が変わるグラスというものは以前からありますが、こちらは触れた物体の性質によって色が変わります」



「へえ……」



 店員さんがグラスに水を注ぐと、透明だったグラスが空のような澄んだ青色に変化する。



「お酒を入れると……」



「おわ、紫色になった。面白いですねこれ」



「そうでしょうそうでしょう。エルフ族自慢の品です」



 これいいな……ハチェットの土産にでもひとつ買っていくか。



「というわけでルイソンさん。隣の建物でグラス作り体験をやっていますから、ルイソンさんオリジナルのグラス食器を作りましょうか」



「分かりました……えっ、なに? グラス作り体験?」



 このあとめちゃくちゃ職人に教わりながら自分でロックグラスを作った。



 ―― ――



「中々良いグラスが出来ましたね」



「め、めっちゃ肺活量が鍛えられました……」



「ふふ。少しお腹もすいたんじゃないですか? というわけで、続いてはこちらです」



 〝シャイニング果樹園〟



「ここは最高級ブランドフルーツ、シャイニングマスカットが食べられる果樹園です。さあルイソンさん、一緒にマスカット狩りを楽しみましょう」



「は、はあ……」



 シャイニングマスカットか……なんか美味いってよく聞くよな。

種が無くて皮も渋くなくそのまま食べられるらしい。

前にハルバードが期間限定のシャイニングマスカットパフェがどうとか言ってた気がする。



「ここを持って、落とさないようにチョキンと」



「よし、採れた」



「さあさあ、冷めないうちに食べてみてください」



「いや熱々の鍋料理じゃないんで」



 つってもマスカットねえ……確かにオレは甘いものが好きだけど、高級チョコレートとかならともかくフルーツひとつでそんなに変わるもんかね。



「それじゃあいただきます……はぐ」



 …………。



「……うっま。めちゃめちゃ甘くて美味しいです」



「そうでしょうそうでしょう。ちなみにひと房5000エルです」



「たっか」



 このあともいくつか観光スポット的な所をラヴリュス先輩に案内してもらい、オレはエルフ街をめちゃくちゃ楽しんだ。



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